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書籍の紹介 『チャイルド・デス・レビュー』

投稿日:2023年12月1日 更新日:

書籍「チャイルド・デス・レビュー」の表紙です。

『チャイルド・デス・レビュー』
フロントラインプレス取材班 (編著)
旬報社
2022年11月刊
四六判・304ページ
1,870円(税込)
ISBN 9784845117918

チャイルドデスレビューとは、和名を「予防のための子どもの死亡検証」というと、「はじめに」に記されています。略称はCDRです。
交通事故(交通事件)を含むさまざまな事故や虐待、暴力などによる、いわゆる子どもの不慮の死、不審な死の原因を詳細に調査・検証し、再発防止に役立てるというものです。
第4章では、交通事故から子どもを守るには、加害者の処罰や子どもへの安全教育・注意喚起だけではだめで、子どもが死に至った真相・原因を突き止め、再発防止を図るべきであるということを、息子さんの交通死を契機に長年歩車分離信号普及に取り組まれている長谷智喜さんらへの丁寧な取材を通して、伝えています。

本書によると、CDRはアメリカ・カリフォルニア州の団体が40年以上前に、多発する虐待死を契機に取り組みを始めたもので、今では欧米各国で行政主導で実施されているそうです。
子どもは大人の責任で第一に守らなくてはならない存在である、という認識に基づくものだと思います。
日本では2010年度から認識されて取り組みがぼちぼちとはじまり、2020年度に厚生労働省がモデル事業を7府県で実施しています。
まだ始まったばかり、という感がありますが、23年4月に「子ども家庭庁」が発足したので、今後の推進が期待されます。

しかし……、本書を読むと、日本でCDRを推進していくには相当な障壁があることを痛感させられます。
子どもの不慮の事故防止に長年取り組まれている小児科医の山中龍宏さんをはじめCDRの充実を望む多くの専門医が、課題の多さを指摘しています。
警察が捜査情報を事件捜査の為だけにしか提供しないという閉鎖性、明らかな事件性がないと遺体の解剖をせず、早く結論づけて幕引きをしようとする姿勢、など。
解剖は、欧米では原因究明のために重要視され実施率も高いそうですが、日本は実施率が低く、また、法医学の予算も設備も乏しいため、解剖しても検査レベルが低い(検査レベルの高い医療施設は経費も上がるため敬遠される)という問題もあるようです。

米英では死因の究明責任を警察ではなく、「コロナー」という一種の裁判官やメディカルエグザミナーという法医学専門職種の人が担うそうで、そのような役割体制自体からして違いがあるようです。
さらに、日本は死因究明制度がない、解剖率が低い、地域間格差がある、死因究明関連法はできたが予算も人員も制度的手当てもない、等の指摘も。また、省庁の姿勢自体にさまざまな障壁がある(意図的に作られている?)ことも記されています。
「警察には捜査情報は共有を求めない」という項目もあるそうです。

頻発する交通事故を減らすうえでもCDRは重要で、それを契機にすべての交通死傷事件の徹底した原因究明と対策を進めてほしいものです。
それにはなにを変えていく必要があるかを問いかけている本です。
(世話人A)

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