自動車には減税ではなく増税こそ必要
これまで自動車はその利用に不可欠な道路や駐車場の整備・維持管理にかかる費用すら負担しきれていなかった。少なくとも道路の整備・維持管理にかかる費用は全て自動車諸税で賄えるようにすべきだろう。
除雪や災害等の例外はあるものの、通常の道路の損傷は大まかに車両の速度・重量・台数に連動する。走行量に応じた燃油課税や、かつての重量に応じた自動車重量税は、道路の維持管理費用の応分負担に適した税制と言える。
もっとも、電気自動車も登場している昨今、燃油だけの課税では不足もあるだろう。ガソリン等の燃油課税は喘息公害や気候変動等の補償に充てる環境課徴金に切り替えた上で、新たに自動車の走行量に応じた税制を創設することもあって良いのではなかろうか。
自家用車への課税強化はもちろんだが、貨物輸送においてもトラックなどから鉄道などへのモーダルシフトが求められている。
ところが実態としては鉄道利用の負担は過大(整備・維持管理費用を原則運賃で負担する)、道路の利用に関する負担は過少(道路の維持管理費用すら賄えきれない程度の税金しかかかっていない)となっていることから、これまで鉄道貨物輸送をしてきた荷主においても自動車に転換する逆モーダルシフトが起きている[17]のが実情だ。
物流を支えるトラックに対しても応分の負担(ひいては荷主の運賃負担)をしてもらうことで、自動車から鉄道や船舶へのモーダルシフトを適切に進める一助となるだろう。
【脚注・出典】
17. 例えば岐阜県の神岡鉄道は神岡鉱山からの硫酸輸送が2004年にトラックに切り替えられたことによって2006年に廃止された。2023年の豪雨災害より不通が続いているJR美祢線もかつては石灰石輸送で支えられていたが1998年までにトラックに切り替えられた。JR青梅線でも1998年までに石灰石輸送がトラックに切り替えられた。今も石灰石輸送が行われている秩父鉄道でもセメントや石炭などの輸送がトラックに切り替えられたことで減収となっている。
(神奈川県川崎市在住)

のうぜんかずら
(会員K・Tさんの絵)