前田敏章(北海道交通事故被害者の会)
11月16日、北海道フォーラムに、50人を超える市民が参加
11月第3日曜日は、国連が2005年に定めた World Day of Remembrance for Road Traffic Victims(世界道路交通被害者の日)です。
北海道交通事故被害者の会は、今年もこの取り組みに連帯し、11月16日(土)、13:30~16:30 「北海道フォーラム2024」を主催しました。
会場の札幌市中央区「かでる2・7」710会議室には、市民と関係者、被害者の会会員など50人を超える参加者が集い、交通死傷ゼロへの誓いを新たにしました。
主催:北海道交通事故被害者の会 後援:北海道、北海道警察、札幌市
協力:ワールドデイ 東京集会実行委員会クルマ社会を問い直す会
第1部「被害者の訴え」:「突然“被害者遺族”となって〜9歳で生涯を終えた息子と共に歩む道」
第1部の「被害者の訴え」では、札幌市の西田圭さんが、2024年5月16日、小学4年の息子さん(倖さん)を、ずさんな服薬管理で意識障害に陥った加害者に奪われた悲しみの中、再発防止を涙ながらに訴えられました。
倖さんは、登校途中、青信号の横断歩道で轢かれました。加害者は、糖尿病治療のインスリン服薬に必要な食事摂取を怠ったもので、西田さんは、倖さんからの「パパ、どうして僕は死んじゃったの」という「声なき声」を聴き、同じ被害に遭う人を二度と出さないために発信を続けたいと語り、再発防止のための具体的課題として、次の3点を「社会に望むこと」として強調されました。
- 病気の症状や治療薬の影響で、不適切な運 転が起きない社会にする
- 違反・事故発生時の薬物(違法だけではなく、治療薬も含めた)服用のチェック強化
- 免許更新時の運転禁止・注意薬の服用有無 の確認、医師所見提出の義務化
西田さんの訴えは参加者の胸に強く響き、参加者の感想アンケートからも、
「同じ子どもを持つ親として、西田様のお話は胸が締め付けられる思いでした。辛い中でも倖君と共に交通事故ゼロへの想いから立ち上がって下さった講演はしっかりと受け止めさせてもらいました。これからも交通事故ゼロに向けて一緒に頑張っていきたいと思っています」
など、共感の声が多数寄せられています。
第2部「ゼロへの提言」:シンポジウム「生活道路30キロ規制の意義と課題」
第2部は、シンポジウム。警察庁が2024年5月に英断し、政府決定もされた「生活道路30キロ規制」(2026年9月の政令改正)の意義と課題をテーマに、関係機関と主催者からの提言を受けました。
最初に道警察本部交通部の高野管理官が「交通安全について考える」と題し、閣議決定された「生活道路30キロ規制」のポイントと意義、この施策を人命保護に直結させるために、現在取り組み中の諸施策~スクールゾーンから始まるゾーン30(プラス)、可搬式ハンプなど物理的デバイスによる速度抑制策~など、具体的に提起されました。
続いて、北海道くらし安全局道民生活課の二瓶課長が、「歩行者、自転車の安全と生活道路の 30キロ規制について」と題し提言。
道内での生活道路における歩行者・自転車被害の実態などをグラフで示し、地域の「コミュニティ道路」としてあるべき生活道路の安全確保のため、道警とともに、スクールゾーンやゾーン30の取り組みを続けていること、速度と停止距離の関係や高速度の場合の致死率の高さなどからも、30キロ規制の意義周知に努めたい、など、被害根絶への施策が提起されました。
道警と道からの提言に、参加者からも
「道警と北海道庁の説明で、取組の理解が出来ました。今後の具体的推進に期待します」「今日のお話は、自分止まりするのでなく、家族や職場の人にも伝え、交通事故・犯罪を無くしていくために、考えていきたいと思いました」
などの感想が寄せられています。
主催者の提言:「生活道路の30キロ規制を交通死傷“ゼロ”への確かな一歩に」
主催者からは、真島副代表が「生活道路の30キロ規制を 交通死傷“ゼロ”への確かな一歩に」と題して提言。
生活道路の30キロ規制は、当会と本フォーラムが長年求めてきた施策であること、西欧では道路の優先権をクルマに与えないという人命優先の政策が進むが、日本はクルマ優先の考え方が残ること、生活道路の30キロ規制を契機に、西欧に学び、かけがえのない命を守るために、歩行者優先の安全低速走行、通学路を通り抜けさせない具体的な施策を講じることなど、改めて提言しました。
参加者からは、
「(北海道の会が)25年前からこうした活動を続けておられるこ
とに心からの敬意を表したく思います。ご家族、ご自身ともに大変辛い日々を過ごしながら声をあげ続けることが、どれだけ大変なことか…。察するに余りあるものがあります。しかし、そのおかげで生活道路の30キロ規制が実現したのだと思えました。本日は大変勉強になりました。まだまだ課題は山積しており、一朝一夕には社会は変わらないように思いますが、自分がハンドルを握る時は必ず今日のことを想い出したいと思います」
などの声が届いています。
第3部「ゼロへの誓い」
第3部では、会場発言の後、「交通死傷ゼロへの提言」が、提案され採択されました。
私たちは、25年前の発足当初より、支援に関わる機関や団体そして道民の方が被害者を真ん中に置いて集い連携を深める市民参加のフォーラムを継続して開催(2009年からはワールドデイに連帯)していますが、今フォーラムの成功を糧に、犠牲を無にしないための交通死傷ゼロを求める諸活動をさらに前へ進めたいと考えています。
会場には今年も「いのちのパネル」が展示されました。
不適切服薬などによる交通死傷被害根絶の課題を重視していきます
フォーラムでの西田さんの訴えは、多くのメディアが取り上げてくれました。北海道新聞は 11月23日付紙面で訴えの要旨を報じ、朝日新聞は11月25日付の全国紙面で、「不適切服薬 絶えぬ事故」「インスリン注射後、食事せず運転 9歳はね死亡」との記事を掲載し被害ゼロのための体調管理の重要性を報じました。
西田さんが具体的に提起した、道交法66条(「何人も、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」)の徹底のため、医療機関との連携を強め、免許と運転の管理を万全にしなければなりません。
私たちはこれまでも、関係省庁に毎年提出している交通犯罪・事故根絶のための要望書で、
「病気や高齢による身体機能の低下が安全運転に不可欠な認知・判断・操作に影響を及ぼすことが決して無いよう…健康検査の厳格化を進めること」など免許付与条件の厳格化を求めていますが、今フォーラムでの西田さんご家族の訴えを受けて、さらに強く求めていきます。
※ フォーラムの詳細は、「北海道交通事故被害者の会」の会報71号に特集しています。会のサイトからご覧下さい。
(北海道札幌市在住)