還路於民(Vision Zero Taiwan)について
次に、会の理事長、呉宜蒨(ウー・イーチェン)さんから、「還路於民」発足の経緯や活動について英語で説明がありました。
●史上初の大規模歩行者デモが政治を動かす
私たちは2023年8月、「道を人民に取り戻そう」という大規模デモを3日間行い、翌2024年3月 24日、この会を立ち上げました。
メンバーはすべてボランティアで、学生、エンジニア、医師、教師、メディア関係者、デザイナー、学者、都市計画の専門家、持続可能な環境の擁護者、職業ドライバー、外国居住者などです。
このデモは、歩行者の権利を主張する台湾史上初の大規模な行動で、総統選挙の候補者全員が参加した初の社会運動でもあります。
候補者は25,000人の人々が見守る中で、「台湾歩行者宣言」に署名をしました。
デモの準備には3か月かかり、国の交通部と何度も交渉を重ねました。準備資金は、1か月間のクラウドファンディングで約2,500人から321万台湾ドルを超える支援を集めました。
デモの3日前、行政院は「歩行者交通安全政策綱領」とビジョン・ゼロの目標を盛り込んだ「道路交通安全基本法」の草案を承認し、同年12月の議会で成立させました。
写真3・4:歩行者の権利を求めての大規模デモを実施。

写真5:「台湾歩行者宣言」に 総統選挙立候補者全員が署名。
●目指すは交通死傷者ゼロ
デモ行進の5つの主要な要求は、
1.歩行者の環境整備
2.運転教習制度の改革
3.歩道保護の対策強化
4.道路交通法の再構築
5.交通死者をゼロにする(ビジョン・ゼロ)
どれも歩行者の死亡事故を無くすためのものです。私たちは、徒歩、自転車、公共交通機関など持続可能な移動手段の利用を促進し、交通事故による死傷者を減らし、歩行者の福祉を向上させることを目指しています。
[メモ]ビジョン・ゼロは、交通事故による死者・重傷者をゼロにすることを目指す政策で、スウェーデンで 1997年に成立し、その後欧州を中心に多くの国に広がっています。
●政府、議員、市民を巻き込んで活動
取り組みとして、政府関係では交通部の本部、交通部公路局、内政部国土管理署、地方政府等が主催する民間団体の討論会や協議会への参加、議員との連携(支援提供、助言提供、現地調査支援、議題に関する協力など)をしています。
一般市民向けには、「道を人民に返す」パレード、「ビジョン・ゼロウォーキングフェスティバル」、白紙の鶴を手に歩く追悼活動、サイレントサイクリングなどの実施や、出版した『車輛覇權』についての講演会を行っています。
国際面では、IFP(国際歩行者連盟)の会員となり、各国の権利擁護団体(walk21、香港ストリートチェンジ)と交流しています。今後も、政府の活動を継続的に監視し、地方政府と中央政府との連携を強化し、より緊密な協力と情報交換を推進するとともに、スポンサー会員制度を整備し、安定した支援ネットワークを拡大することを目指しています。

写真6:国土管理署で記者会見を開催。

写真7:若者も大勢参加、ビジョン・ゼロウォーキングフェスティバル