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名古屋市都心部の附置義務駐輪場の現状(1)

投稿日:2024年12月9日 更新日:

里見岳男

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はじめに

日本では戦後まもなくは自家用車の生産が禁止されていたそうです。しかしほどなくして生産制限が解除されると、ものすごい勢いで自動車が作られ、売れはじめました。そして日本中の車が200万台を超えたころ、「駐車場法」という法律ができました。この法律には「繁華街に、あるていどの大きさの建物を建てたり既存の建物を改修したりするときには、建物の広さに見合った駐車場を作らないといけません、というような条例を地方自治体は作っていいですよ」と書いてありまして、もちろん他にも大事なことがいろいろと書かれていたのですが、おかげで自動車は都市部においても移動手段として十全の力を発揮してきました。

その23年後、こんどは自転車についてだいたい同じようなことが書かれた「自転車の安全利用の促進及び自転車駐車場の整備に関する法律(通称:旧自転車法)」というものが作られます。私の住む名古屋市も、この法律にしたがって条例を定め、一定規模の各種商業施設に自転車駐車場(以後「駐輪場」)の設置を義務付けています。平成25年の調査※によれば、全国154の自治体でそうした条例が定められているそうです。みなさんがお住まいの市町村にも条例があるかどうか調べてみてください。

駅周辺における放置自転車等の実態調査の集計結果(平成26年3月)- 内閣府 https://www8.cao.go.jp/koutu/chou-ken/h25/kekka.html

このような条例の存在を意識したのは10年以上前、名古屋駅前の大きなビルにパスポートを作りにいくため自転車で出かけたときでした。名古屋駅前は当時からとにかく駐輪場が足りておらず、空きを示す緑ランプが点灯しているのに空いていない駐輪ラックに悩まされつつ、10分だか20分だかさまよってようやく自転車を駐められた覚えがあります。帰宅した私は名古屋市のウェブサイトでさっそく駐輪場情報を調べはじめたのですが、そんなときに見つけたのがこの条例でした。これによれば、平成14年10月1日以降に新築・増改築された施設には駐輪場の設置義務があるとのこと。私が訪れたビルは平成19年開業、ということは駐輪場がどこかにあったんだ…! とふたたび自転車でパスポートを受け取りに意気揚々と出かけていったのですが、敷地をぐるっと回ってもそれらしきものは見当たりません。しかたなく、またしてもさんざん苦労して公設駐輪場に自転車を駐めて用事をすませ、家に帰ると即座にビルの管理事務所の電話番号を調べて、テナントの利用客用駐輪場はどこにあるのかと聞いてみたのですが、返ってきた答えは「そういったものはご用意していないので歩道の有料駐輪場をお使いください」。あれ、ひょっとしてこの条例、無視されてる…?そうした疑念を抱きつつも、その後しばらく名古屋駅を訪れる用事もなく、追求するのも面倒だしなあ、と思っているうちにこの問題のことは忘れてしまっていました。

そして時は流れて令和5年春。名古屋の中心繁華街である栄地区が自転車放置禁止区域に指定され、いままで自転車が置かれていた歩道の端には有料の駐輪ラックが設置されたりされなかったりして駐車可能台数は大幅に減少。
令和4年度には23,390台だった名古屋市の自転車撤去台数は、令和5年度は32,431台と4割近い増加となりました。このように自転車利用者への厳しい対応が目立つ中、私が訪れた名古屋駅のあのビルのように、駐輪場を設置するよう定めた条例に従わないままでも放っておかれている施設があるというのは、施策としていささかバランスを欠いているのではないか? そう思った私は、栄地区に加え、少し前に自転車放置禁止区域が拡大された名駅その他の周辺エリアも含めて、まずは店舗駐輪場がどうなっているのか、現状を調べてみることにしました。

ありがたいことに、附置義務駐輪場の設置届一覧のようなものを見せてもらうわけにはいきませんかと名古屋市にお尋ねしたところ快諾いただけたので、それを見ながらあちこちの施設の駐輪場を巡り、その設置状況をおおむね把握することができました。ここでその概要をご紹介したいと思います。

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