< 前へ || | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 || 次へ >
運賃箱更新に合わせてマルチ決済端末を導入
さらに、独自のICカードやクレカタッチ決済が一般路線バスにも導入されつつある。
例えば福島県会津地方の会津バスは2024年7月に独自のICカード「AIZU NORUCA」を導入した。会津バスではこれまで磁気カードも導入していなかった(現金と紙の回数券しか使えなかった)が、運賃箱の更新に合わせて独自のICカードを導入するとともに、2024年9月にはクレカタッチ決済にも対応し、さらに他の電子マネーやPayアプリにも順次対応を予定していて、一挙にキャッシュレス化が推し進められた。
「AIZU NORUCA」は福島交通が2010年から運用している「NORUCA」をベースにしたもので、会津バスと福島交通(いずれも「みちのりホールディングス」グループ)では一般路線バス車両全500台に新しい運賃箱を一斉導入し、2024年9月から両社でクレカタッチ決済にも対応した。
「みちのりホールディングス」グループでは岩手県北バスがSuica互換の地域連携ICカード「iGUCA」を導入したが、会津バスは独自の「AIZU NORUCA」を導入し、同じグループでも地域によって対応が分かれる格好になった。
この新しい運賃箱はクレカタッチ決済(NFC-A 方式)と電子マネー(FeliCa方式)の両方に対応しており、整理券を投入すると自動で運賃計算する機能が付いていて、さらにコード決済に使うカメラ(コードスキャナ)も付いていて、1つで様々な決済方法に対応している。
この特徴を活かして、これまで現金(と紙の回数券)しか使えなかった会津バスで、一挙に多様なキャッシュレス決済に対応した。これが今後他の事業者に普及するかは未知数だが、会津バスでの成否が注目されそうだ。
QRコード乗車券
大都市圏ではSuica等の交通系ICカードが普及し、地方都市では独自のICカードやクレカタッチ決済で乗車できるようになって、運賃表を見て小銭を出し切符を買う煩わしさから解放された。
しかし訪日旅行者などのICカードを持たない乗客にも配慮し、紙の切符の販売は続いている。この細々と生き残る紙の切符についても、JR東日本など関東の鉄道大手7社[3]は、2026年度末以降順次、磁気式を廃止してQRコードを使う乗車券に変更する。紙の切符の磁気面を廃止することで回収した使用済み切符のリサイクルを円滑化するとともに、自動改札機のコストダウンを図ることができる[4]。
QRコード付きの紙の切符は、広島県のスカイレール(2024年4月末で廃止)で2013年より、沖縄県の「ゆいレール」で2014年より使われており、立山黒部アルペンルートなどの観光地でも使われている。さらに2024年には千葉県の山万ユーカリが丘線でも導入されたが、首都圏の多くの鉄道事業者が採用を決めたことで、2027年以降に本格的に普及しそうだ。
脚注・出典
[3] JR東日本、京成(新京成を含む)、北総、京急、西武、東京モノレール、東武。現時点では8社だが、新京成は京成に吸収合併予定なので7社になる。JR東日本は近距離切符のみが対象。 鉄道事業者 8 社による磁気乗車券から QR コードを使用した乗車券への置き換えについてhttps://www.jreast.co.jp/press/2024/20240529_ho02.pdf
[4] 磁気券の処理には複雑な機械的処理が必要になるが、 Suica等のICカードはタッチ部だけで済む。新たに導入されるQRコード乗車券もQRコードリーダーのみで済み、紙の切符を送る機械的処理を省略できるメリットが大きい。