大八木町交差点の歩車分離信号を視察して

歩者分離信号ルポ

長谷智喜(命と安全を守る歩車分離信号普及全国連絡会会長)

本年9月29日、群馬県高崎市にある大八木町交差点が、歩車分離式信号(以下歩車分離信号)に改善されました。この交差点は、今から10年前、当時中学2年生だった自転車通学の男子生徒が青信号を横断中、同じ青信号で左折してきた大型トラックに巻き込まれ死亡した交差点です。

この交差点が歩車分離信号の改善にいたるまでには、ご遺族の強い申し出や多くの方々の後押しがありました。また、今年は、23年ぶりに歩車分離信号の設置基準が緩和され、警察庁から全国の警察に歩車分離信号の普及促進が通達 されたことも、大きく影響したものと思います。この交差点で息子さんを亡くされた当会のご遺族とともに、歩車分離信号要望の活動に関わらせていただいた一員として、万感の思いがいたしました。

■大八木町交差点の概要

交差点で大きなダンプカーが右折しているところの写真です。
写真1

大八木町交差点は、北高崎駅から2.7kmのところに位置する幅員約9mの県道と、約8mの市道が交差する十字路で、どこにでもある中規模交差点です。この交差点は、大型車の混入率も高く多くの車が行きかいます。一方交差点を利用する横断者は、通勤通学時間帯を除きそれほど多くありません。

主道路の県道両側には、5m幅の自転車も通行可の歩道が整備されていますが、交差する従道路、市道のガソリンスタンド側には歩道が設置されていません。そのため県道から市道に向けて左折する大型貨物車両は、あおりハンドルをしなければ曲がりきれず、右折においては路側帯にはみ出す状況で、人の往来はとても危険です(写真1)。しかし、その先に大八木工業団地があるため、ここで右左折する大型車が多く、巻き込み事故の再発が懸念されていた交差点でした。写真の横断歩道は、10年前に左折事故が発生した現場の横断歩道です。

■交差点視察1日目

大八木町交差点の視察は、2日に分けて実施しました。
1日目の9月29日は、歩車分離信号運用の初日です。秋の交通安全運動期間中に、実質的な安全対策である信号切り替えを実施した群馬県警に好感がもてました。

この日は、改善に伴う歩車分離信号プレートの取り付け工事が一部残っていたため、その様子を見ることが出来ました。通常は目にすることができない有意義な視察でした。

初めて目にしたこの作業は、クレーンで一旦信号機をおろしてから歩車分離式のプレートを装着し、再びクレーンでつり上げ元の信号柱に取り付けていました。工事中は、車線規制をしたため、車が渋滞しましたが、作業の安全性や確実性を重視するためのやむ得ない渋滞です。つり下ろされた信号機の大きさにも驚かされました。
「歩車分体式(押ボタン式)」と標示された信号機を取りつけているところです。
写真2

大八木町交差点のプレート文字は、歩車分離式が大きくその下に押しボタン式が小さめに書かれています(写真2)。

「時差式、押ボタン式・歩車分離」と標示された信号機です。
写真3

私の地元八王子では、歩車分離と押しボタン式の文字が、全体的に小さく書かれています(写真3)。

押しボタン式は、大八木町交差点のプレートデザインを全国統一にしたほうが見やすくて良いのではと感じました。

その後、信号の切り替え試験が開始されました。この試験では、切り替え担当者が信号専用のものと思われるPCで一度全ての信号灯を消し、再び灯火します。確認担当者が、目視で切り替わった信号の灯火色を見て「車アカ!歩行青!」と大きな声で切替え担当者に伝えていました。人の目によるアナログの確認作業になぜか安心感を覚えました。

大八木町交差点の歩車分離信号の切り替えでは、セレモニー的な点灯式は行われず、午後1時30分頃からそのまま歩車分離信号の運用が開始されました。信号柱には「押しボタンを押してから渡ってください」との看板が立てかけてあるものの、それが目に入らず、戸惑っている人や見きり発車の車も一部見受けられました。信号の切り替えにあたっては、事前に充分な告知の重要性を感じさせられました。