富山地方鉄道の存廃問題~県民経済をつなぐ地方鉄道の現状~

地鉄鉄道線の経営状況

地鉄では、図1の実線区間は「経営の範囲」(≒黒字)、破線の範囲は「経営の範囲外」(≒赤字)であるとし[11]、実線区間は同社単独で鉄道施設を維持するが、破線区間は地域が必要と考えるのであれば自治体が鉄道施設の維持費を負担する「みなし上下分離」をするよう求めている。
また、あいの風とやま鉄道(旧北陸本線)と並走する滑川~新魚津間8.4kmは「未定」としている。仮に「みなし上下分離」がされても、この区間は存続したくないという意向の表れだろうか。

「電鉄富山」、「稲荷町」、「立山」、「宇奈月温泉」などの路線を示す略図です。
図1 地鉄が提示した「経営の範囲となる区間」路線略図 富山地方鉄道資料[11]より抜粋引用

 

2025年10月時点で、平日日中の運行頻度は概ね以下のようになっている。

  • 電鉄富山~上市 毎時2本
  • 電鉄富山~五百石~岩峅寺~立山(立山線)毎時1本
  • 上市~新魚津 2時間毎
  • 新魚津~宇奈月温泉 毎時1本
  • 電鉄富山~南富山~岩峅寺(不二越・上滝線)毎時1本

「経営の範囲外」の区間であっても概ね毎時1本は確保している(あいの風とやま鉄道と並行する区間を除く)。「赤字」だからと安易に減便しようものならますます乗客離れを引き起こすだろうから、「赤字」であっても少なくとも毎時1本確保するのは妥当な判断だろう。
新魚津~宇奈月温泉間の区間運転電車は、あいの風とやま鉄道の魚津駅(新魚津駅と隣接)へ乗り換えて富山駅方面へ行くことができるし、新黒部駅で北陸新幹線(黒部宇奈月温泉駅)と連絡しており、魚津・黒部市街から北陸新幹線を利用する地元住民や、県外から宇奈月温泉や黒部峡谷鉄道を訪ねる観光客をつないでいる。
なお、岩峅寺~立山間は立山黒部アルペンルートが冬季休業になる時期には減便される。


【脚注】

11. 富山地方鉄道鉄道線のあり方検討会 第1回本線分科会(令和7年7月1日開催) 資料2-1「鉄道線の維持・存続に関する自治体との協議における考え方」 https://www.pref.toyama.jp/800001/20250701honsenbunnkakai.html