書籍の紹介『移動と階級』

書籍「移動と階級」の表紙です。

伊藤将人 著講談社 2025年5月刊
新書版・272ページ 1010円(税込) ISBN-10:4065397340
ISBN-13:978-4065397343

都市計画や経済学でいうアクセシビリティの不平等を、車のあるなし、高齢、身体障害、ジェンダー、人種、貧困、旅行経験の豊富さからくるスキルなど、さまざまな切り口から事例を上げて解説してあり、体系的な思考に役立つと同時に読者の問題意識を高めてくれる良書だと思う。

表題に「階級」という言葉が使ってありますが、扇動的な書き方ではなく、自分がモビリティの不平等の被害者なのか、無意識のうちに加害者になっているのか、さまざまな立場の人に考えてもらうようなやさしい文体である。

生活保護でお金だけもらっても、幸福になれるかどうかは、どこに快適な環境や物があり、それにどうアクセスできるかのスキルと交通サービスの選択肢があるかどうかに大きく左右される。マスコミやネットの情報は、ある程度作り手に都合のいいように編集されたものを受けざるを得ず、何が本質化を見抜く力をつけ、世の中とつながっている実感をもつためには、モビリティがいかに大切か、そこに不平等があり、社会の仕組みがそれを助長するようになっている時、それはまさに階級分断と言えるのではないだろうか。

(美濃部雄人/会員 富山市副市長)