西村 茂 著
自治体研究社
2020年11月刊
A5判 218ページ
2200円(税込)
ISBN 978-4-88037-717-9
この本は、表紙カバーの絵のように平明でわかりやすい文章で書かれていますが、内容は充実、勉強になります。
まず、なぜ移動政策が必要なのか、の話に始まり、人口減少と高齢化が進む地方において、住民の移動を支えるために、各自治体や住民が工夫し実践している公共交通の形を紹介しています。続いて、公共交通に関する日本の法制度の問題を分析し、多くの課題があることを厳しく指摘しています。さらに、世界で唯一法律に交通権を入れたフランスにおける公共交通政策と現状を紹介し、過疎化が進む長寿社会における公共交通のあり方を問題提起しています。
執筆者の西村茂氏は、日本とフランスのおもに過疎地の交通政策を長年研究している方です。
フランスの交通権や都市での交通税が作られた経緯や理念も丁寧に紹介されています。また、フランスの3/4を占める人口の少ない農村地域などで交通権をどういう形で実現していくか、模索の様子も詳しく記されています。日本の過疎地の状況と重ね合わせて、いろいろ考えさせられます。 (足立礼子)