足立礼子(世話人)
2005年に国連総会で11月第三日曜日と決議された「世界道路交通被害者の日」は、世界中で道路交通被害者について考える「国際デー」です。
日本では道路交通被害者のご遺族らが、毎年各地で集いを行っておられます。
東京では東京タワー前の芝公園で、前夜にキャンドルイブの集いを続けておられ、遅ればせながら昨年初めて参加させていただきました。
当会世話人の佐藤清志さんが主催者代表としてあいさつをされたあと、当会会員の長谷智喜さんご夫妻、生命のメッセージ展を主催されている鈴木共子さんらご遺族をはじめ集まった人々で、看板を立て、キャンドルを並べ、そこに灯(コロナのため、電池の灯)をともしました。
主催者の一人でソフトカーの開発研究者である小栗幸夫さんが作詞作曲された「遠い日の記憶」の温かいメロディーが流れる中、静かに揺れる灯を見つめ、失われた命の叫びとご遺族のみなさんの心に思いをはせました。お子さんを亡くされたばかりのお父さんも参加されていました。
最後に一人ずつ自己紹介がてら思いを述べ、来年につなげていくことを約束しました。初めての参加でもすぐ溶け込める、心温まる時間でした。
日本だけでも毎年5000人近い人が交通死(厚生労働省統計による)している現実を考えると、このイベントに集う人はあまりにも少数です。理由の1つは、この日のことがほとんど知られていないことにあると思います。
国連の定めた国際デーなら、内閣府は政府広報として、世界およびわが国で自動車によって毎年どれくらいの犠牲者が生じ、当事者とご遺族の苦しみはどのようであるかを、報じてほしいと思います。また、マスメディアは、そのような犠牲を生み出し続ける社会への問題提起をしてほしいと思います。
ご遺族の方々が、筆舌に尽くせぬ苦しみ、悲しみを抱えながら、その理不尽な現実を変えていかねばという思いで社会に発信され続けていることに、頭が下がるばかりです。
そのご尽力によって交通犯罪の刑法が見直され、飲酒運転が減り、歩車分離信号が増え……おかげでどれだけ多くの命が失われずにすんでいることでしょうか。そのことに社会はもっと気づかなくてはならないと思います。
(東京都三鷹市在住)