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M:安全装置はつければよいに越したことはないが、装置を義務づけるとコストがかかる。ドライバーの大半は法律を守っているのに、ごく一部の人のために費用負担が増すことになり、それをどう考えるかという問題もある。
完璧な装置のものを作れば100万円のところが200万円になり、そうすると車は普及しない。バランスの問題もある。貴会の主張はその通りだと思うが、順番とか市場の事故実態、効果のほどをふまえて検討したいと思っている。
K:海外では事故を起こした人に対してのみ装置を義務づけているところもある。それでも一歩前進だとは思うが。
K:経費がかかるのは問題ということだが、クルマは一歩間違えば凶器になるものであるにもかかわらず安全装置があまりに少ない。そのため、一瞬のミスで人が死んでいる。歩く人と同じ平面を走る道具としては、本来はもっと安全装置がきちっとついたものでなくては許されないのではないかと思う。それがないことで、多くの死傷者が生まれ続けている現実をふまえ、意識を変えていただきたい。
M:ごもっともと思う。政府としても平成26年の死者が昨年より4人増えた現実を重く受け止めている。クルマだけの対策ではなく、人と同じ平面を走る道具として運転する人の対策・道の対策・クルマの対策「人・道・クルマの対策」を連携してやっていくという方針が、先ごろ策定した第10次交通安全基本計画(平成28~32年度)(以下、第10次計画と略)にも入っているので、他省とも連携してやっていく。
K:価格の話は一方ではもっともな話とは思うが、我々の提案の中にも比較的費用のかかるものだけでなく、安価にできるものがあると思う。
たとえば衝突予防・軽減ブレーキ装置や車線逸脱防止装置などはまだ開発中で費用が高いかもしれないが、先ほど話に出た運転免許のICカードについて言えば、カードリーダー・ライタはe-Taxで使っているようなものは数千円で売っており、仕様さえ作れば実現しやすいのではないか。アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置も開発している人がすでにおり、あまり費用をかけずにできると聞いている。
鉄道では赤字ローカル線などの問題があるにもかかわらず、費用がかかっても人の命を守るためにATS(自動列車停止装置)の導入を国交省が主導しているが、自動車でやらないのはなぜなのか理解できない。軌道を走る列車と違ってクルマの場合は受益者以h外の人が多く被害を受けており、受益者が安全面の負担をするのは当然との気持ちもある。費用面の課題はもちろんあるとは思うが、逆にこれならすぐできるというものを示してもらえると理解しやすい。
M:費用面について言えば、自動車アセスメント事業を通して、同じ装置でもより普及させることによりコストダウンできる面もあると思うので、そういう施策と連携しながらメーカーにとって負担となるところを国から積極的に支援してやる、ということを通して道路交通安全に貢献できると考えている。
K:繰り返しになるが、自動車が凶器性を持ったまま販売されていることに、我々は怒りを持っている。販売の段階からそもそも衝突しない、速度は守る、信号を守る、という仕組みを備えたもの、自動車のハードそのものが事故を起こさないものであるべきであり、そういうものしか売らないようにしてほしい、と願っている。その点を理解してほしい。
M:車体の装備だけでなく、道路からの通信による安全運転新システムの開発も進んでいるので、それも視野に入れながら、1人でも事故死者をなくすようにしたい。
K:昨年末に内閣府と懇談したが、今の交通事故は防止対策が頭打ちになっており、一段と進んだ対策を打たないと事故が減らないという話も出た。我々市民が考えても今回提案のように10項目ほどの案はすぐに出るが、実現がなかなか進まないという思いがある。
もう少し大胆に対策を進めるように願いたいが、そのあたりのスケジュール感はどうか。
M:交通政策審議会の下に自動車安全ワーキンググループがあり、専門家を含めて審議している。貴会の方にも傍聴してもらっているが、今後5~10年を見据えてメーカーの新しい技術の開発動向もみながら、ヒアリングを受けて対策を示したい。引き続いて傍聴してほしい。
K:その審議会の資料を見ると、基本的に車両の安全対策にこだわっているせいか、私たちの要望する信号遵守、速度制限の遵守など重要なことが検討されていないと思う。
M:前出の第10次計画の中に「通信、人、道、車」の連携を記しており、我々はその中で、クルマの安全の側面から考え、どういう安全対策ができるかを踏み込んだ形で専門家を交えて議論していただいている。もちろん道対策の連携も大事だと思う。