クルマ社会の課題と会の見解

公共交通は国が支えるもの

投稿日:2022年8月11日 更新日:

運転できない人

 世の中には車を運転できない人が大勢います。
 まず普通自動車免許が取れるのは18歳からなので、17歳以下の人は運転できません。6歳~17歳の人口は、6歳以上人口の11%を占めます。(2019年。1人で移動できる年齢を6歳以上とみなしました)
 次に、高齢になり運転能力が低下して運転できない人、運転を控える人がいます。6歳以上人口に占める80歳以上人口の割合は9%です。
 このほか、体に障害を抱えて運転できない人がいます。身体障害者、知的障害者、精神障害者は文部科学省の資料によると全人口の7.4%を占めます(14~16年の諸データから)。障害者の中には運転できない人が多いと推測されます。
 経済的に車を所有できない人、車は危険だからと運転を回避する人もいます。
 19年における運転免許保有者数は8216万人で、運転免許を保有しない人は6歳以上人口(12043万人)の32%に相当します。
 公共交通が便利な環境で暮らしているので免許を持っていないという人も、この32%の中には少なくないでしょう。しかしこれらの数字から、車を自分で運転できない人が2割から3割は存在すると推測されます。

バスは高齢者にとっても必需の交通手段になっている

バスは高齢者にとっても必需の交通手段になっている


 

公共交通は必須

 通勤、通学、買い物や病院に行くなど、私たちは移動なしには生活できません。移動手段は徒歩や自転車で足りる場合もありますが、バス・路面電車・鉄道などの公共交通サービスを利用しないと成り立たない場合も多いでしょう。
 公共交通サービスは私たちの生活に必須のものです。

部分廃線となったJR西日本の可部線は、学生たちの足となっていた時代もあった

部分廃線となったJR西日本の可部線は、学生たちの足となっていた時代もあった

 現在、公共交通は基本的に、〝運営事業者による独立採算の下に成り立たせるべき〟という原則で事業化されています。しかし現実には、独立採算が困難で、政府・地方自治体の支援・補助で維持されているケースも少なくないのです。地方では、採算がとれずに廃線となる鉄道やバスが増え続け、移動に困る人が増えています。(図1)
 私たちの会は“公共交通を独立採算で維持するべきだ”という考えに、明確に反対しています。

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図1 地方鉄道の路線延長の推移(国土交通省資料から)

沿線風景で鉄道ファンに人気の高い千葉県の小湊鉄道も、鉄道事業は厳しいと聞く

沿線風景で鉄道ファンに人気の高い千葉県の小湊鉄道も、鉄道事業は厳しいと聞く


 

道路並み投資を

 総務省の統計で、公共交通への国費の投入額と道路・街路への国費の投入額を比べてみました。(図2 公共交通は区分上、鉄道、軌道、地下鉄、自動車運送〈バス事業〉の項目を合算)

図2 交通関連行政投資(2013〜18年)(総務省「行政投資実績報告」)

図2 交通関連行政投資(2013〜18年)
(総務省「行政投資実績報告」)

 13~18年度の6年間で、公共交通への国費の投入額は1.26兆円(年平均0.21兆円)であるのに対し、道路・街路への投入額は16.24兆円(年平均2.71兆円)でした。公共交通への投入額は、道路・街路への投入額の1割以下、8%でした。
 このデータは、道路・街路が優遇され、公共交通が極端に軽視されてきたことを示しています。どういう街づくりにするかでこの比率のあるべき水準は変わると思いますが、今後は公共交通への国費投入を大きく増やすべきでしょう。
 

下部負担は国で

 公共の負担を増やしていくには、まずは国の負担の強化を図るのが不可欠です。
 運輸事業では、車両などの運行(上の部分)を担う主体と、土地や施設の保有・整備・管理(下の部分)を担う主体とを分離して進める方式(「上下分離方式」といいます)が用いられる場合があります。
 この場合、下の部分はもっぱら地方自治体が負担することが想定され、国の負担は想定されていないケースがほとんどと見受けられます。
 しかし、公共交通という国民の生活基盤を確保するには、まず国が責任をもつべきだと思います。
 

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