提言・提案・意見表明

ガソリン補助金の打ち切りを提案しました

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政府は巨額のガソリン補助金を延長し続けています。

この補助金は、エネルギー価格の高騰を背景に2022年1月に始まったものですが、
その恩恵を受けることができる人は偏っており、また、気候変動を加速させ、
交通事故リスクの低減を妨げる恐れがあります。

当会では次のとおり、内閣総理大臣に対し「ガソリン補助金打ち切り」の提案書を送付しました。

                 2024(令和6)年 6月 19 日

内閣総理大臣 岸田文雄 殿

クルマ社会を問い直す会
共同代表 青木 勝 足立礼子
本件担当世話人   林 裕之
https://kuruma-toinaosu.org/
group@kuruma-toinaosu.org

ガソリン補助金の打ち切りを提案します

当会は、クルマ依存社会の弊害(交通事故、移動の格差、環境汚染、気候変動加速等)を問題視し、人の命を最優先にする安全な交通社会の実現をめざして活動している全国市民団体です。
政府は、原油などの価格高騰を受けて2022年1月に始められたガソリン補助金を本年5月以降も続けることを決定されました。この補助金により、ガソリン価格は、全国平均価格が1リットル当たり175円に抑え込まれています。
確かにガソリン補助金は物価高対策として一定の役割を果たしたとも言えるでしょう。しかしこの補助金には次のような大きな問題があるため、ガソリン補助金の打ち切りを提案します。

1 巨額のガソリン補助金は公平性を欠いている
2022年1月にガソリン補助金施策が開始されてからすでに予算額で6兆円以上、執行額で5兆円近くの税金が使われました。しかし自家用車を使わない国民にはその恩恵は限定的なものに過ぎません。不公平であると言えます。

2 ガソリン補助金は気候変動を加速させ、大気汚染を拡大する
産業革命前からの気温上昇を2℃よりも低く抑えることを世界全体の目標としつつ、1.5℃に抑える努力をすることがうたわれたパリ協定が2015年に採択されました。この協定を批准した日本政府は2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルをめざすことを宣言しました。燃焼によって大量の温室効果ガスを排出するガソリンに対する補助金施策を続行することはこうした政府の方針に反するもので、温室効果ガス削減目標の達成を困難にすると考えられます。またこれは、持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」にも反します。さらに、ガソリン補助金は、ガソリン燃焼後に発生する排ガスに含まれている、一酸化炭素(CO)や窒素化合物(NOx)、粒子状物資など多くの汚染物質による被害を拡大させる恐れもあります。

3 ガソリン補助金は交通安全上の問題を深刻化させる恐れがある
日本では交通事故による死傷者がたいへん多くなっています。昨年(2023年)は2678人が亡くなりました。コロナ禍という状況の中で単純な比較はできませんが、前年に比べて68人(2.6%)の増加です。重傷者数は27,636人で、こちらも前年に比べて1609人(6.2%)の増加です。状態別死者数は「歩行中」が最多となっています。ガソリン補助金は、不要不急の自動車の走行を促し、こうした悲惨な事故を増やす恐れがあります。

4 日本のガソリン価格は「高い」とは言えない
ガソリン価格の低下がみられないなかでの補助金の打ち切りには抵抗感を抱く人も少なくないかもしれません。しかし日本のガソリン価格はG7各国のなかでは最も安くなっており、決して「高い」とは言えません。

公平性を欠き、気候変動の主原因である温室効果ガスの排出を促し、交通事故リスクの低減を妨げる恐れのある一律のガソリン補助金を今後も続ける理由はありません。これをすみやかに打ち切ることを提案します。今後の支援は生活困窮者や農機具の利用時に大量のガソリンを使用せざるを得ない農業従事者等に対象を限定し、そのことによって捻出される予算は、公共交通機関の維持・活性化や歩道・自転車道の整備など、より安全で自然・社会環境への負荷が少ない持続可能な未来社会をつくるために必要な事業に振り向けていただくようお願いします。

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