内閣府で面談しました(4)

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[足立]先ほど、欧州と日本は道路事情や背景の歴史などが違うという話をされたが、その違いがあるからこそ歩行者被害が多いという日本の現状をふまえて、さまざまな対策を要望している。
国もその点をもっと理解してもらいたい。今は、被害の多い歩行者のほうが注意を強いられている。
子どもが青信号で横断中にクルマに轢かれる事故が起きると、警察はまず「青信号でも安心できない。横断するときは右を見て左を見てまた右を見て渡ろう」と言い、そのような報道もされる。
あたかも横断中の子どもが注意不足であるかのような言い方だが、それを聞いても誰もおかしいと思わない。そのような意識も変えていかなければならない。

また、交通事故死者数の数も事故後1年以内の死者は5,000人前後にもなることを、多くの人は知らない。交通事故死者が減っているというが、今も毎年5,000人が命を落としている事態は他に例がなく、極めて異常だ。
交通安全運動にもその深刻な事態に対する切迫感が感じられないように思う。

[野崎]死者数の数え方は事故後30日も含めいろいろあるが、どの数字を見ても減ってはいる。
減ったのは皆さんのご努力の賜物で、引き続きしっかりやっていきたいと思う。
我々も減ってきたから良かったと言っているのではなく、一生懸命にやっており、切迫感がないと言われると立つ瀬がない。
確かに飛行機事故で毎年自動車事故と同じだけの方が亡くなったら大騒ぎになると思う。
だから各方面にいろいろ働きかけをし、予算要求もしている。努力をしていることはご理解してほしい。

また、先ほどの青信号横断中の事故について警察の方が言ったことは、歩行者を非難しているのではなく、一人でも命を救いたいという思いからの言葉だと思う。
もちろんドライバーが信号は守るべきだが、やはり歩行者も自らの命を守るために注意してほしいということだ。

[足立]そういう訓話を常に聞かされていると、歩行者が何重にも注意することが当たり前だというように思わされてしまう。
警察は歩行者に「青信号で渡りなさい」と指導しているのだからそういうことを言うべきではないと思う。

[野崎]青信号は「渡っていいですよ」という意味で、車についても歩行者についても「渡りなさい」という意味ではない。それは道交法にも書かれている。お互いに気をつけないといけない。

[足立]しかし、歩行者は青信号に頼って渡るしかない。

[野崎]もちろん青信号で歩行者が安全に渡れるようにしなければいけないと思っており、そのための広報啓発が足りないならもっとする必要があると思っている。
しかし、ドライバーにも不注意はあり、自動車の機械の故障もあり、不測の事態があることは避けられないので、歩行者にも、信号の変わり目に飛び出さないとか、止まれないクルマもあることを理解して、事故にあわないための注意をお願いしている。

[榊原]交通安全運動のポスターを見ると、歩行者や自転車利用者への注意喚起、シートベルト着用促進、飲酒運転撲滅などはあるが、肝心のドライバーへの安全運転義務を啓発する項目が抜けている。
毎年町会で交通安全運動に参加しているが、ドライバーへの啓発がどうも足りていないように感じている。
普段の安全運転の心がけ、それが最も重要なので、今後はぜひポスターに入れてもらいたい。

[佐藤]最近、自動車の予防安全機能技術が進歩しているので、「安全運転義務の緩和」が検討されている、と報じられている。
安全運転義務がどんどん軽視されていくのは問題だ。

また、「交通事故死ゼロを目指す日」が年に2日もあるのだが、交通安全運動に関わる人々にさえあまり知られていない。
交通安全ポスターなどにこの文字を単に記すだけでなく、「なぜこの日があるか」ということも国民に伝え、啓発してもらいたい。
「交通事故死ゼロの日はまだ1日もない」こういう現実こそ第一に伝えるべきではないか。そういう視点からの啓発もぜひ行ってほしい。

[野崎]今後検討させてもらいたい。交通安全運動は我々行政だけでできることではなく、国民の皆さんの理解があって成り立つものなので、広報啓発は重要な位置づけと思っている。
すべてを網羅することはできず、毎回どこかに重点をおく必要があることは理解してほしい。

面談終了


今回の面談は、内閣府という組織の役割と権限に制約があり、直接法の執行、制度の改変にタッチすることが出来ないということで、多分に議論が当方からの一方通行となったきらいが感じられました。
ただ、内閣府は交通安全基本計画のとりまとめ部門であり、かつ交通安全運動の推進母体でもあります。そのことを考えると、今後は内閣府の所掌する分野に絞って要望を出した方が良いのではないかと思いました。
今後とも、内閣府には面談の機会を作って頂けることを期待します。
なお、この面談報告の内容に関する責任は全て当方にある事をお断りしておきます。

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