日本が「マイカー亡国」に至るまで ~『マイカー亡国論』を振り返る

マイカー増大阻止計画

本書は最終章にて、様々な矛盾を抱えて突き走るマイカー増大を阻止する方策を提言している。具体的には、下記7項目を挙げている。(p268-269より要約)
1.公共交通体系の強化
2.自動車産業への民主的介入により、その姿勢を社会全体の利益を守る方向へ転換させる
3.都市政策の転換
4.渋滞対策として道路建設ではなく、都市施設の再配置、自動車増大の抑制、公共交通への転換その他の代案によって、交通空間需要を減少させる対策
5.社会的弱者の移動を妨害しない、高い質の交通安全施設
6. 一般自動車交通の安全を害する低質の道路建設ではなく、量は少なくとも質の高い道路の建設
7.都市公害・社会的消費の貧困・社会的諸価値の破壊などの矛盾そのものをなくすることを要求し、国・自治体の道路偏重政策を打ち破る

そして最後に、「本書は、今後このような市民組織がぞくぞくと誕生し、大きく成長してゆくことに期待を寄せるとともに、この書がそういった人たちの側に立って書かれたものであることを再度確認したい。

また、本書は、この人たちに連帯感を表明するとともに、そのような組織が積みあげてゆく経験と知恵によって、個人に発したこの書のごとき発想が、練り返され、書き直されてゆくことを願うものである。」とまとめている。

日本が「マイカー亡国」に至るまで

本稿では、『マイカー亡国論』を順に辿ることによって、奇しくも日本が「マイカー亡国」に至るまでの道程を辿ってきた。

と言っても、筆者は本稿で新しいことはほとんど述べていない。『マイカー亡国論』を要約し、実際に起きたことを少し書き添え、言い回しを少しばかり現代風に書き換えた程度だ。

まだ日本で「モータリゼーション」が始まったばかりの1960年台に、ここまで見通していた湯川氏の慧眼に敬服するが、湯川氏も米国で起きたことを辿って『マイカー亡国論』を著しているので、つまり日本は愚かしくも米国の失敗を追いかけてしまったということだ。

さらに残念なことに今なお「ガソリン値下げ」を振りかざす勢力が優勢であり[7]、この期に及んでもなお歴史から謙虚に反省する姿勢は見られない。

マイカー族には道路と駐車場を安価に使わせ、燃油補助金と減税の大盤振る舞いを繰り返しながら、鉄道は原則運賃負担で維持する国策が継続しており、減便や路線廃止が全国に拡大。地方鉄道では減便と値上げの嵐が吹きすさび[12]、 2026年3月にはJR東日本も運賃を値上げする。

そして人口減少と税収減が直撃する自治体では、税金を注ぎ込んで整備してきた県道の廃止を検討する自治体も出てきている[13]

かつて源平合戦が繰り広げられた平安時代末期、平清盛の権勢下で隆盛を極めた平家の者が唱えたと伝わる「平家にあらずんば人にあらず」という慣用句はあまりに有名だが、それを伝えた平家物語の冒頭句もまた有名だ。

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」。

矛盾を抱えたまま我が物顔に尽き走ってきたマイカー偏重の交通政策は、いずれ諸々の自己矛盾が露呈して行き詰まるだろう。しかしその時に都市がスプロール化していたり、公共交通が破滅していてはいけない。

今こそ『マイカー亡国論』と、その現代版と言える『マイカー亡国論・再考』から謙虚に学び、私たちの生活がマイカー族の暴走と心中することのないよう、国および自治体の都市・交通政策を問い直さなければならない。


脚注・出典

12.  一例として、本誌122号(2025年12月号)「富山地方鉄道の存廃問題〜県民経済をつなぐ地方鉄道の現状〜」を参照

13.  秋田県道の一部路線、存廃検討へ 老朽化、全て維持は困難(秋田魁新報、2025年2月8日)

 

大地に種をまく人を描いた手書きのイラストです。

(会員K・Tさんの絵)