『子どもまちづくり型録』
木下勇・寺田光成(編著)、
松本暢子・三輪律江・吉永真理(共著)
鹿島出版会
2023年6月刊
A5変型248ページ
2,400円+税
ISBN 978-4-306-07364-7
子どもの外遊びや人々と交わる機会、自然と触れ合う機会が減るばかりの今の時代、子どもたちが生き生きと遊び、多くの人に出会い、自然や社会に触れながら成長できるまちにしていくにはどうしたらよいか――その対策のヒントを〈考え〉〈いえ〉〈みち〉〈まち〉の視点から探り、
108の型録として提起しています。
どの型録(対策のヒント)も、一般の人にもわかりやすく具体的に記されています(個々の話は2ページ単位のため情報量は限られていますが)。
型録の数、つまり課題の多さに驚きますが、今の社会や地域の現状に欠けているもの、求められているものはなにかを考えるきっかけになります。また、どの課題も行政や専門家に任せておくだけでなく、一人一人が地域の一員として能動的に考え、関わる意識が求められていることが伝わってきます。
〈みち〉のパートでは、通過交通を排除する対策、車の速度抑制をする対策、子どもが遊べることを優先させる歩車共存の道空間(ボンエルフ)、曜日や時間による道の遊び場開放、歩行者専用の緑豊かな通学路や散策路など、子どもをクルマの危険から守り、安心して歩き遊べる道・まちの対策を提案しています。また、自然と人、人と人が触れ合える道端、冒険心をくすぐる狭い抜け道〈子どもしか通れないような〉、座れる場所のある道、などの意義も伝えています。
4月に行なった日本女子大学教授・薬袋奈美子さんの講演(会報112号に掲載)とも重なるテーマです。
他のパートでは、庭や玄関先の開放、シェアする暮らしの場、遊び場やたまり場など、子どもも大人も交流できる場づくりの提案がたくさん紹介されています。
読むうちに、子どもが多くの人と触れ合い、のびのびと外で遊べる環境は、大人同士の交流も深め、心豊かに暮らせる社会だということに気づかされます。
これは、本会発行の冊子「子どもにやさしい道がコミュニティを育てる」「交通静穏化の海外の取り組み」「(いずれも会員の今井博之さん執筆)が伝えているメッセージにもつながります。
★この本は、編著者の一人、木下 勇様(大妻女子大学社会情報学部教授、千葉大学名誉教授、こども環境学会副代表)からご寄贈いただきました。
2004~2009年、クルマ社会を問い直す会はこども環境学会に参加し、シンポジウムや分科会などの担当を務めましたが、その際に木下様には企画段階からお世話になり、多くのご教示をいただきました。
2007年のシンポジウム「道草のできるまちづくり―車社会からこどもを守る」で話し合われたこともこの本に織り込まれています。(シンポジウムの内容は『子どもが道草できるまちづくり(通学路の交通問題を考える)』という本になりました(学芸出版社2009年刊 今は絶版)。(足立礼子)