久保田 尚さん講演「市街地の重大交通事故根絶に向けた『通学路Vision Zero』の提案」

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【質疑応答】その1

講演後は参加者のみなさんから多くのご意見・ご質問が寄せられました。

講演会における質疑応答の様子の写真です。

 

Q1.ハンプなどの物理的対策に対する行政(国・自治体)の姿勢は?

A1. 国(国交省・警察庁)はゾーン30プラス、物理デバイスの活用に前向き。技術基準も整備され、導入のハードルは下がっている。しかし、自治体レベルでは温度差がある。先進的に取り組んでいる自治体もあれば、「ハンプはうるさい」といった過去の誤解(円弧ハンプ時代の問題)が根強く残り、導入に消極的な自治体も依然として存在する。

Q2. ①移動が困難な高齢者のためのコミュニティバスを生活道路に走らせることで、一般車の通り抜けをやりにくくするという副次効果が期待できないか?
②道路空間を歩行者優先のボンエルフのように改造することで、防災上の緩衝地帯としても活用できるのではないか?

A2. ①武蔵野市のムーバスの事例を言われているかと思うが、そうした車両が生活道路をゆっくり走行することは、たしかに交通全体の速度抑制にもつながる有効な手段と考えられる。近年、定時定路線のコミュニティバスの運行が難しいケースが増えているが、デマンド型交通(電話などで予約するタイプ)でも低速走行してもらえれば同様の効果が期待できる。
②ボンエルフは、オランダなどでは法律に基づいて人優先が徹底されている。しかし、日本の道路交通法は、歩行者は右端を通りなさい、車道で遊んではいけませんということになっていて公道のボンエルフ化は困難というのが現実。私が40年近く前に導入した事例も団地内の私道であった。

Q3. ハンプなどの対策を設置できた地域では、どのようなきっかけやプロセスがあったのか?また、これから普及させていくにはどうすればよいか?

A3. 重要なのは、やはり地域住民からの「危ない」「なんとかしてほしい」という切実な声、強い要望。それもひとりふたりよりは学校やPTAや自治会といった組織を通じて行政や警察に届けることが重要。個人の声だけではなかなか動いてくれなくても、地域としての総意を示すことで、行政も無視できなくなる。また、一つの地域で成功事例ができると、「あそこの地域でやって効果があったなら、うちも」という形で関心が高まる。まずは、どこかモデルとなる地域で成功事例を作り、それを積極的に情報発信していくことが、今後の普及につながると考えている。

Q4. ①ハンプの効果は設置箇所周辺に限定され、ハンプがない区間では速度が元に戻る問題がある。広大な道路網全体に連続して設置するのは、通学路に限定するにしても困難ではないか。
②先程のコミュニティバスの話題とも重なるが、自動運転またはそれに準じる低速車両をコミュニティ主導で走らせるというのはどうか。

A4. ①おっしゃる通りハンプの効果は局所的であり、50mおきの連続設置が理想的であることが実験結果から判明している。
②道路状況に応じて速度を落とす技術は20世紀から存在しているが、ユーザーもメーカーもそれを求めておらず広がっていない。自動車というのは自分で運転するものだというパラダイムが変わるまでは相当に時間がかかる。明日の安全の達成のためには道路を安全にしていくことが必要。

 

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