会の活動 提言・提案・意見表明

1999年秋の全国交通安全運動への提言

投稿日:1999年9月21日 更新日:

交通安全運動への問題提起行動の報告

要点

  • 私たちは、毎年春と秋に行われる全国交通安全運動について、内容に疑問を持っています。
  • なぜなら、交通事故に対して、本当に効果的な対策を提起していないからです。
  • 最近は特に、被害者であるはずの高齢歩行者への「指導」が目立ちます。
  • 加害者である自動車が、子どもや老人の傍らを思いのままに走るという事実を完全に不問に付しています。
  • 効果的な対策は、物理的対策・交通環境改善です。
  • 私たちは、秋の交通安全運動が行われる機会に合わせ、その主催団体29団体に対して、提言書を提出しました。
  • 今回は特に、被害者である高齢者と、加害者である若者運転者に着目し、交通安全運動の方向性改善を要望しました。
  • 各団体へ、9月20日に郵送しました(本文は、9月21日付け)。
  • 私たちは、今日のクルマ優先社会のもたらす様々な問題点を、根本的に問い直そうとする市民グループです。
  • 私たちは、毎年春と秋のこの機会に、毎回、提言書を提出し続けています。

※提出先として、主催団体のうち、「都道府県」と「市区町村」は除いています。

平成11年秋の全国交通安全運動への提言

平成11年秋の全国交通安全運動への提言

総務庁 交通対策本部 御中
秋の全国交通安全運動 主催各団体 御中

1999年9月21日
クルマ社会を問い直す会

高齢者・歩行者への指導・教育中心ではなく、
安全な道と公共交通の整備を

 「クルマ社会を問い直す会」は、交通人身事故よって膨大な被害がもたらされていること、中でも弱者(歩行者)の一方的被害が小さくないことを、きわめて重大なことと捉えています。最近は、コミュニティゾーンの拡充など、一部に効果的な施策もあります。しかし一方で交通事故は増え続けています。事故の減少を願い、秋の交通安全運動の機会に提言をさせていただきます。

これまでの交通安全運動の効果は疑問です

 交通安全運動は、スクールゾーンの設定などによる学童の事故防止など一定の成果を上げました。しかし近年では、交通事故件数と負傷者数は増加し続けています。また、30日以内死者数は依然1万人を大きく上回っています。このことから、運動と交通事故対策の主眼を転換する必要性に迫られていると、私たちは考えます。

クルマは危険な乗り物であることを直視し、歩車分離を大原則にして下さい

 自動車は一瞬の接触で人命を奪う力があります。にもかかわらず、それが歩行者と同一の空間を走っているのが現状です。この事実の是非が、まず問われるべきです。
 人と自動車の混在を許す現在の政策(歩車混在)から、人と自動車とを基本的に分離する政策(歩車分離)へと、交通政策を緊急に転換させることが必要であると私たちは考えます。

モラルや注意力に頼ることには限界があります

 交通事故の大半が、法令違反と判断されていますが、人間の注意力に頼ることの限界をまず認識する必要があります。信号や横断歩道は重要ですが、人間の注意力だけに頼る以上、それは安全施設としては不十分なものです。
 仮に運転者の慢心や不注意が生じても、歩行者を巻きこむ最悪の事態を避けることができるように、道路と自動車の構造を変える必要があると、私たちは考えます。

実効性の高い事故対策へ転換して下さい

 年間約80万件の事故が起き、毎日、多数の交通事故被害者が出ている状況を鑑みれば、緊急に実効性の高い対策をとっていただきたいと考えます。
 以下、具体的な要望を述べさせていただきます。貴省庁・貴団体だけでは実現の難しい項目もあろうかと存じますが、人命重視の視点で、主催団体の皆様が連携して取り組まれることを要望します。なお、本年春にも提言を提出していますので、合わせて参考にしていただければ幸いです。

重点要望1

高齢者など弱者に合わせ、安全な歩道や公共交通などの環境づくりを早急に推進してください

 高齢者事故への対策として、高齢者自身への教育に重点が置かれています。事故死者数の変化だけを見ると、急激に高齢者の事故死者が増加しているように見えますが、各年齢層人口あたりの交通事故死者数についての推移(資料図1)を見ると、交通事故で死亡する確率は大きくは変化しておらず、高齢者の事故死者は古くから高い水準となってます。このことから、高齢者の体力や知覚力などでは、もともとクルマ社会に対応できるものではないと考えられます。高齢者の増加で、今までの対策の遅れが鮮明になってきたのではないでしょうか。

 夜光反射材など被害者側に対処・注意を無理に求めるのではなく、どんな高齢者も事故に遭わずに済むように、何よりも物理的対策を施し、歩行者が自動車に出会わなくても済むような道を、早急に整備してください。そして、高齢者が歩いて健康を保ち、危険なクルマを自ら運転せずとも快適に過ごせるように、歩行環境や公共交通を充実させてください。その改善は、子どもや障害者など弱者にとっても、もちろんその他の人にとっても望まれるものです。

 交通安全運動を、そのための調査や意見募集の機会にしてください。

重点要望2

若者への免許交付と教習所運転者教育を、実状に合わせた厳しいものにしてください

 年齢層ごとに、死亡者中の交通事故死者(自動車運転中)の割合を見る(図2)と、高齢者ではなく免許とりたての若者が圧倒的に多くなっています。また、事故で死亡する歩行者と、自動車運転中の第一当事者を、それぞれ年齢層別に比較する(図3)と、若者が運転する自動車の事故で、高齢歩行者が多く死亡させられている、という関係が読み取れます。
 ここでは、免許が容易に取得できることの問題が大きく現れていると考えられます。

 若者自身が加害者にならないように、そして事故で自らを傷つけなくて済むように、免許交付の見直しをしてください。また、高校などの教育現場での運転者教育は、若年のクルマ利用者をより増やすことにつながりますので、見直してください。しかも運転者教育は、アメリカでの経験からみても、実効性に疑問があります。 交通安全運動を、自動車の運転には重大な責任が伴うことを強くアピールし、基本的にはできるだけ運転をしないことを呼びかける機会としてください。

具体的要望項目

 以下に要望を述べます。交通安全運動を、これらに関する調査・検討・実施の機会にしてください。

歩車分離

 幅員が小さく交通量の少ない道路は、花壇・樹木・杭・ベンチなどを路上に置いて道を蛇行させるなど、自動車がスピードを出せない構造にし、袋小路化することなどで交通量をさらに減らして下さい。また、そうした道路を面に広げ、面全体を、「時速30キロ」地帯と指定して下さい。
 幅員が小さく交通量の大きな道路については、一方通行化することにより、歩道・自転車道を十分に確保し、子どもやお年寄りが安心して歩けるようにして下さい。
 幅員・交通量ともに大きな道路については、十分に広い歩道・自転車道を設置して、人と自動車が接触する可能性を極力減らして下さい。

横断歩道の安全化

 自動車側から見て横断歩道の手前にハンプを設けて下さい。または、横断歩道をハンプの上に設けて普通の歩道と同じ高さにして下さい。それが困難な場所では、青信号とともに横断歩道の両側(車両の手前)に遮断機が降りるようにして下さい。
 当面それらが難しい横断歩道では、信号を、人と自動車の流れを完全に分ける分離信号にして下さい。

通行規制化

 学校周辺や通学路など、子どもが事故に遭う可能性が高い場所では、登下校時を中心に、自動車の通行規制をして下さい。

速度制限

 自動車の加速性能を、必要充分な程度に引き下げてください。また、道路の最高制限速度を引き下げ、規制を強化してください。また、速度規制に感応し、自動的に違法速度が出せないような機構を、今後搭載・整備することを法律化してください。

危険物アクセサリの規制強化

 ブルバー(カンガルーバー)・ドアミラーなど、衝突時の加害性を大きくする装飾品や構造を規制強化してください。

運転中の携帯電話事故への物理的対策

 携帯電話使用中の事故が頻発しているので、自動車を運転しながらの通話ができないような機構を電話機と自動車に内蔵するなど、システム面で対策をとってください。また、カーナビゲーションシステムなどについては、運転者が走行中には操作できないような対策をとってください。

飲酒運転による事故の予防

 酒気帯び・酒酔い運転による事故が頻発しているので、酒気を感知し動作を制限する機構を、自動車に採用してください。また、飲食店では運転者に対して種類販売をしないように指導してください。

自動車の歩行者保護技術の採用推進

 自動車の構造や付加装置・制御装置など、メーカーが持つ歩行者保護技術を、立法化などで採用を強く推進してください。

免許・法律運用・運転者教育

 教習内容と試験項目を歩行者優先および事故防止の観点で強化・見直ししてください。運転時に使用する道は、子どもや高齢者も日常的に使用する空間であること、したがってクルマを運転することは重大な責任を伴う行動であることを、免許教習・運転者教育の一環として優先的に教授するようにしてください。また、更新手続きを試験制にし、違反者・加害者への行政処分・刑事処分の強化や、交通事故犯の非処罰化方針の見直しを行ってください。さらに、事故の情報公開を、事故被害者とその家族が納得できる程度まで推進してください。

誘導策

 バス専用レーン制定・パークアンドライド・料金方式の変更など、公共交通の利便性を向上させてください。また、可住面積あたりの自動車利用量が充分小さくなるような規制などの抑制策の実施や、交通需要管理など、総合的政策を実施してください。また、保険料や税金などを、加害性の高い車種や遊戯用車などで高額にするなどの誘導策を実施してください。

事故後処理・事故情報収集

 自動車の機械システムと自動車利用の社会システムが持つ基本的な問題に着眼した、事故分析を行ってください。また、事故鑑定専門家の養成と増員、ドライブレコーダー搭載や横断歩道上へのカメラ設置など事故原因や背景分析の強化、事故防止方法を勧告・実施する機構の整備を行ってください。また、事故を起こした車種を発表し、整備の悪い自動車を取り締まるようにしてください。そして、事故統計に主に使用する死亡者数について、24時間死亡者から30日間に変更してください。

広告制限

 テレビコマーシャル・新聞や雑誌の広告などの中での、過剰な速度感・危険軽視や、通常は違法となるような行為を映す場面を、禁止してください。また、自動車の運転は事故面や環境面などで重大な加害性を伴うことを、商品やカタログに警告表示することを立法化してください。

(文章は以上。以降は図集。)

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