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2003/8/26 環境省交渉(記録)

投稿日:2003年8月26日 更新日:

「クルマ社会を問い直す会」では、2003年8月26日に環境省との交渉を行いました。(担当:世話人・清水真哉)
 要望項目は四項目と少なかったのですが、経済よりも環境・安全を重視する社会を作っていく上で環境省の果たす役割は大きいはずなのに、経済界、他省庁、環境問題に理解の薄い世論の間で苦戦し埋没しがちな環境省を叱咤激励するべく、厳しいながらも背中を押す意味での要望をいたしました。
 お忙しい中対応して下さった環境省の方々には改めて御礼申し上げます。

陳情書

陳 情 書

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 当会は会名の通り、自動車社会の諸種の弊害を取り除くべく活動していますが、自動車事故に次ぐ弊として、地球環境・生活環境への負荷を重視しております。
 この夏も欧州大陸の猛暑および森林火災、国内でも九州地域を中心とした水害と、地球の気候の異変は着実に人的被害を生み出しつつあり、我々の危惧は深まるばかりです。
 大気組成の変化に自動車の過度な利用が影響を及ぼしていることはつとに指摘されていながら、自動車交通量の増大に追随する行政のあり方は根本的には変わっていません。
 また日常的な生活環境という点からしても、窓を開ければ自動車騒音に、通りを歩けば排ガスの悪臭に悩まされ、自動車利用者の利便のために人間が健康に生活しうる環境が犠牲にされるという不正がまかり通っています。
 いまや、クルマの使用に対して実効性のある大幅な規制を行うべき時期に来ています。
 貴省には「環境」の視点から、業界や省庁および一般市民の利害を越えて先見性のある政策を発動して頂きたく、以下の点を要望いたします。

1) アイドリングを禁止する法律を制定すること。
 いくつかの自治体でアイドリングを禁止する条例が制定されていますが、国としてアイドリングを禁止する法律を制定することを要請いたします。

2) 環境基準の厳守の要請
 現在の環境行政では自動車は走るだけ走らせておいた上で、大気汚染や騒音・振動などに関する環境基準の未達成部分は数値としては公表するが、対策は後で考えるというのが実情であり、これでは環境基準の意義を軽視していると言わざるを得ません。
 環境基準は住民の生命健康を守るための絶対的な要請であり、これを超過する恐れのある場合は車線の削減や一方通行化、ロードプライシング、速度制限などの手段を用いて自動車の走行量を制限することを要請いたします。

3) 光化学スモッグ注意報・警報発令時の自動車走行制限
 光化学スモッグ注意報・警報が発令された際には、法的強制力をもって自動車の走行を規制することを要請いたします。
(具体案:注意報発令時は予め陸運局などで注意報発令時の走行許可証を入手している車のみ走行可とする。この許可証は一年間有効で十万円位の有料とする。警報発令時はバスや緊急車両を除いて全面走行禁止。)

4) 化石燃料に対する炭素税の早期導入の要請
 新聞報道などに拠りますと、貴省では炭素税の導入を検討しているとのことですが、当会ではこの方針を支持し、早期の導入を要請いたします。
 しかしながら税率についてはガソリン1リットル当たり約2円という低率では、人々の交通行動に変化を起こさせることができるのか疑問であります。無駄な物資輸送、人の移動の少ない都市・国土形成のためにも、経済構造の変革を引き起こすに足るだけの高率での課税を要請いたします。

環境省からの回答および交渉の場でのやり取り

1) アイドリングを禁止する法律を制定すること。

 いくつかの自治体でアイドリングを禁止する条例が制定されていますが、国としてアイドリングを禁止する法律を制定することを要請いたします。

省)

 国の法律にはなじみにくい。法律を守らない人が多いだろう。取り締まりが難しく、取り締まりをするには人員の配置、監視カメラの設置などの投資が必要となってくるが、それも国民の理解を得なければ進められない。罰則という強権によるには公平性が保てないと理解が得られない。自治体の条例でも罰則のあるところは少ない。条例では駐車場管理者に義務を課しているようだ。
 環境省としてはポスター、ステッカーなどの啓発活動には予算をつけている。
 技術による解決の方が可能性があり、経済産業省がアイドリングストップ機能のついた車の開発を支援している。また国交省などとも協力して対策を考えている。

2) 環境基準の厳守の要請

 現在の環境行政では自動車は走るだけ走らせておいた上で、大気汚染や騒音・振動などに関する環境基準の未達成部分は数値としては公表するが、対策は後で考えるというのが実情であり、これでは環境基準の意義を軽視していると言わざるを得ません。
 環境基準は住民の生命健康を守るための絶対的な要請であり、これを超過する恐れのある場合は車線の削減や一方通行化、ロードプライシング、速度制限などの手段を用いて自動車の走行量を制限することを要請いたします。

省)

 環境基準が地域によって守られていないのは頭の痛い問題。
 環境規準について、NOxは一般測定局ではおおよそ達成してきているが、沿道の測定器ではまだ達成できていないところが多い。SPM(浮遊粒子状物質)はまだ達成できていない。
 車線削減・走行制限など交通量のコントロールの必要な道はあるが、手法については議論がある。車線の削減、緑地帯の整備は実際に行ったところもある。
 大型車の流入規制は住民と道路管理者の話し合いにより、公害調停委が間に入って話を進めている。尼崎訴訟の影響もあり、神戸の国道34号線は車線の削減と整備を進める予定。兵庫県のいくつかの市が条例で流入規制を考えている。
 ロードプライシングは東京都が検討しているが、具体化となると石原都知事も結論は出していない。だが最近、ロンドンでの成功例があり、技術的にクリアできる見通しが出てきた。
 公安委員会が規制に動くためには、そこに適した手法が何かということも含めて地元自治体のニーズが必要になる。環境省単独でできることではないが、関係各局と情報・意見交換していくことになる。

3) 光化学スモッグ注意報・警報発令時の自動車走行制限

 光化学スモッグ注意報・警報が発令された際には、法的強制力をもって自動車の走行を規制することを要請いたします。
(具体案:注意報発令時は予め陸運局などで注意報発令時の走行許可証を入手している車のみ走行可とする。この許可証は一年間有効で十万円位の有料とする。警報発令時はバスや緊急車両を除いて全面走行禁止。)

省)

 自動車と固定発生源の両方に対応することが必要。
 時間的にも地域的にもズレがあり、発生メカニズムには、まだ科学的にはっきりしていない部分がある。排ガス総量およびNOxは確実に減らしてきているのに、オキシダント年平均値は北半球全体で上がってきている。不可解な部分だ。夏の猛暑や都心のヒートアイランド現象がオキシダントの生成に寄与している可能性もある。汚染物質の滞留した分もオキシダントの発生に関係しており、走行制限した効果がどう出るかは分からない。
 一酸化炭素は一定基準を越すと自治体から公安委員会に走行規制が要請できるが、これは明らかに緊急異常事態である。NOxなどは慢性疾患と結び付いているので、走行停止と結び付き難い。これは30年くらい前に出来た「大気汚染防止法」による制度なので、これでいいかという議論もあるかとは思う。
 現在、NOxを五割、粒子状物質(PM)を八割落とすという自治体の目標がある。

清水)

 走行制限の効果は分からないと言うが、社会実験は出来ないのか。

省)

 土日にはオキシダント濃度は落ちている。自動車走行量との相関性はある。
 社会実験はやれないことはないが、効果があるためにはかなりな規模が必要だろう。

清水)

 私の生活圏である京葉地域では、真夏の快晴の日には決められたように光化学スモッグ注意報が発令され、屋外での激しい運動と自動車の使用を控えるように呼び掛けられる。ところが外でスポーツをする人は害を受ける側となるため止む無く運動を控えるが、加害者となるドライバーは自ら害を蒙る訳ではないので構わず車を利用する。これは社会的に不正である。もっと問題意識を持って取り組んで欲しい。

省)

 今後の課題である。

4) 化石燃料に対する炭素税の早期導入の要請

 新聞報道などに拠りますと、貴省では炭素税の導入を検討しているとのことですが、当会ではこの方針を支持し、早期の導入を要請いたします。
 しかしながら税率についてはガソリン1リットル当たり約2円という低率では、人々の交通行動に変化を起こさせることができるのか疑問であります。無駄な物資輸送、人の移動の少ない都市・国土形成のためにも、経済構造の変革を引き起こすに足るだけの高率での課税を要請いたします。

省)

 温暖化対策税ということでやっている。CO2の量で課税をする。
 京都議定書では2008~2012年の平均で6%削減する必要があるが、CO2の排出量は1990年比で1999年には既に8%増加。現在は14%増なので新たな施策(税)が必要となっている。2004年には今までの対策を見直す。再来年またはその次で導入するよう折衝中のところ。
 エネルギー起源の部分で2%削減と内々考えている。
 温暖化対策税の税率はCO2トン当たり3400円でガソリン・リットル当たり2円の課税としたい。CO2トン当たり45000円でガソリン・リットル当たり30円とする考えもあるが、高率にすると所得税や法人税、消費税に次ぐほどの税額となってしまう。これでは影響が大きすぎる。そこで税を対策に回すという前提で結果として同じ効果が得られるトン当たり3400円、リットル当たり2円となった。これならば国民の理解も得られやすい。理解が得られないと導入は難しい。
 9月から11月末にパブリックコメント募集を行う他、シンポジウムなどで意見を募集していく。

清水)

 リットル2円で京都議定書の公約が実現できるのか。クルマ使用者が社会的費用を適正に負担しているのかという問題もある。リットル30円でもよいのでは。

省)

 国民の理解を得るためには、2円が適当と考えている。エネルギー起源・クルマだけではなく、他分野の削減もあるので。ガソリンは2円だが、燃料はガソリン以外のものもある。同じ効果ならリットル2円の方が理解を得られるのではないかと考えている。
 この税は税金がかかることで低公害車の導入や省エネが進むことを目標にしており、交通行動の変化を主眼にしているわけではない。エネルギー全般の話として扱っている。

清水)

 それは経済産業省が言いそうなことで、環境省としては、低公害車への乗り換えではなく、自転車への乗り換えを進めると言って頂きたい。積極的に独自性を出して欲しい。

省)

 両面あるということで申し上げた。

当会会員A)

 検討委員会の会合の時に具体的数字はでていたか。検討委員会では各団体どういう考えか。

省)

 検討委員会ではまだ数字が出ていない状態だった。より高い税率を主張する学者もいる。NGO炭素税研究会は4円位を主張している。

当会会員A)

 この際キリのいいところで、リットル当たり10円位は妥協点として要求できるのではないか。

省)

 2円でも石炭では三分の一が税になってしまう。

清水)

 これからは環境税が税の主体となっていくべき時代であると考える。環境税を骨格とした税制改革をお願いしたい。

◇総括

当会会員S)

環境基準も常に、子ども・老人の視点に立って考えてほしい。

当会会員T)

環境省にかみつきにきたのではない。もっと頑張って欲しいので応援したい気持ちだ。

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