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K:私自身は自動ブレーキの義務化を重視したい。梅田の事故を含めて多くの事故が、自動ブレーキの装着があれば防げたのではないかと思う。
今後もし仮に義務化を目指すとして、どういうステップがあり、どういう段階にきているかを聞きたい。
M:第10次計画の本文に、衝突被害軽減ブレーキの義務化も含めた保安基準の強化を盛り込んでおり、これからまさに検討していくことになる。今後のステップは、車線逸脱防止装置などもそうだが、メーカーが開発にしのぎを削っている段階にあり、メーカーに競争して開発してもらうことも必要と考えている。
我々は自動車アセスメント事業を通して車を公正中立に評価してランク付けし、消費者に選んでもらえるよう、メーカーに対してもよい車を作るようインセンティブを与えている。
引き続きアセスメントの充実を図り、良い車の普及を考えたい。
K:メーカーの競争開発で、国交省としては評価をオープンにしてより良いものの開発促進をしているととらえてよいか。
M:今のところ普及拡大できていると思う。アセスメント事業により、自社の車に自動ブレーキがついているかどうか、性能がよりよいものか、という形で各社競争しはじめている。
数だけでなく質の面でも普及向上をはかれている。今は「対クルマ」に対しての評価だが、来年度は「対歩行者」についての性能を評価していくとロードマップ上でも示しており、より開発促進・普及をはかりたい。
K:市場競争でよいものをというのはいいことではあるが、一方でクルマは危険物なので規制的側面も必要と考えている。今の話にはそれがなく、弱いと思う。
速度制限や信号などのルールも守るのが当たり前だが、実際には守られておらず、それが深刻な事故被害につながっていることは世界的な調査でもわかっている。ぜひ規制の側面からも取り組んでほしい。
M:現状はそうだが、第10次計画に具体的な義務化を含めたかなり踏み込んだ文言を盛り込んだことをご理解いただきたい。義務化を盛り込んだので、アセスメントで普及させてから、義務化につなげたい、あとはそのタイミングだと思っている。
K:将来的には義務化を考えているということなら、その時期は?
M:どのタイミングかは課題。今カメラを使った自動ブレーキやミリ波レーダーなどを使った技術も出ており、それも大事にしたいと思っている。バランスも見ながら慎重にタイミングを検討したいと思う。ご理解をいただき\たい。
K:「ゾーン30」を守らないクルマがけっこうあり、かつ梅田の病気の事故(前出)直後にも信号無視による事故もあった。信号の見落としを防ぎ、速度制限を守るような開発促進指導をしてもらいたい。
高速道においてトラックの制限時速は80kmのはずだが、リミッターは90kmで、矛盾がある。諸般の事情はあると思うが、特にゾーン30のような子どもや高齢者が通るところの速度オーバーは死亡率も高いといわれており、きちんと速度を抑えられる装置が欲しい。
たとえばDSRC技術(ITSで研究している通信技術、ETCにも採用)を使った速度制限装置を組み込んでいくことをメーカーに開発指導することなどもお願いしたい。
K:規制を導入することで、開発が進んで結果的に安くなる面もある。テレビの地上デジタル化のときも当初はチューナーの費用負担が問題視されていたが、次第に安い製品が出てきて普及した。政府がやるぞと決めるとメーカーがその気になる。そうしたリーダーシップをぜひ政府に取ってほしい。
M:指導だけでなく、通信型の運転新システム、たとえば赤信号との通信、道路の速度制限と車の間の通信など、そのあたりの技術は国としても積極的に研究開発にコミットしており、引き続き連携してやっていきたい。
K:速度制限と通信の関係は、GPS機能により、片方で道路の制限速度のデータベースを車が持つようにしてGPSで位置を確認すれば、その場の制限速度はすぐわかるのではないか。
世界的にはそうなっているはずで、若干問題があるとすれば電波の届かないところだが、それはほとんど解決しており、道路に新たな通信システムがなくてもできると思う。そのあたりはぜひ勉強してほしい。信号の色を読み取る技術も随分発達している。
K:画像処理で赤信号を認識するとか、DSRCの応用でやるなど、いろいろな方法を模索してコストを安く、一刻も早く対策をとってほしい。
K:軽井沢バス事故(2016年1月15日、スキー客を乗せた大型観光バスが道路脇に転落し、15人が死亡した事故)については、技術政策課ではどう検証されているか。
私は車線逸脱防止装置と速度制限遵守装置がついていれば防げたと思う。技術サイドからもそうした話があってしかるべきだと思う。
M:今、検討委員会でハード・ソフト両面からパッケージで事故原因究明と並行して調査検討している。またご意見をいただきたい。