足立礼子(世話人)
クイズパネルも展示
環境面などからクルマ優先・クルマ依存の社会を見直し、脱していこうという目的で、1997年にフランスの都市から始まった「モビリティウィーク&カーフリーデー」。今年は世界で2486の都市が参加し、これまでの最多と伝えられています。日本では12市(仙台、松本、福井、金沢、さいたま、横浜、逗子、豊橋、大阪、京都、高松、那覇)がカーフリーデーに参加予定でしたが、雨のため中止となった市もあったようです。
問い直す会で毎年参加している横浜カーフリーデーは、9月23日に開催されました。昨年は雨天中止でしたが、今年は心配された雨も朝方に上がって晴天となりました。
本会は毎年、横浜公園入口の路上に、クルマ社会の問題をテーマとした写真などのパネルを展示していますが、今年はほかに、カーフリーデーや交通問題にちなんだクイズのパネルも6枚作製して展示しました。クイズは親子で見てもらえるように表現をやわらかくし、答えは三択式にして、紙をめくると答えが見える形にしました。予想通り、子どもたちが近づいて遊び半分で紙をめくってくれたので、ファミリーの立ち寄りが若干増えたようです。ファミリーのほかにも、写真パネルやクイズをじっくり見て行かれる人は少なからずおり、「クイズの答えはなに?むずかしいね」と尋ねる人もいて、会話のきっかけにもなりました。 クイズ
また、ポケットサイズのカラー刷りクイズ集(パネルに記したクイズのほかに4問加えたもの。Q&Aは4〜5ページ参照)も用意し、配布しました。パネルを見ない人も多いので、持ち帰ってクルマ社会の問題を考えるきっかけにしてもらえたら、というねらいで作ったものです 1)。

今年新たに作ったクイズパネル。
「?」の紙の下に回答が記されている。
問題を共有できる市民グループとの出会いも
今年は、問い直す会の展示場所の対面に、「横浜にLRTを走らせる会」「路面電車と大森の未来を考える会」など交通関係のブースが集まり、交流もできました。
また、問い直す会と共通の意識を持つ市民活動グループとの出会いもありました。自転車利用の促進とクルマ優先社会からの脱却を目指して活動している「サイクリング・エンバシー・オブ・ジャパン」というグループの若者数名(アメリカ人を含む)が、『Bikes vs Cars 車社会から自転車社会へ』という映画 2)の自主上映会の広報にきて、当会のパネルに共感してくれ、当会のメンバーと話が尽きず広がりました。今後も活動の接点が持てるとよいと思います。
日本ではまだ低い、クルマ社会への問題意識
会場の他のエリアでは、交通関連としては電動カート、ミニバス、燃料電池車、ユニバーサルデザインタクシー、コミュニティサイクル(レンタサイクル)等のブースや、バスの死角を運転席に座って体験させるコーナーなどがありました。全体を見渡すと交通問題とは関係のないブースも多く、一般的なお祭りという雰囲気ですが、それでも「カーフリー」という名のもとに多くの人が集う機会は貴重だと思います。横浜カーフリーデーはNPO法人市民団体の主催で14年前から開催されており、実行委員会の方々のご努力あればこそと、深謝の思いです。

バスの死角体験。前ドアの脇も死角になる。
一つ残念だったのは、『道の駅』を売り物の目玉にする温泉観光地のブースがあったことです。それとは知らずブースの人に「そこへ行くには何線のどの駅が近いの?」と尋ねると、「え~!鉄道でくるの~?」と露骨に嫌な顔をされ、そっぽを向かれました。実行委員の方にあとで聞いたところ、観光地と地域特産物の宣伝が主という名目で参加した組織で、道の駅の宣伝が主であるとは知らなかったそうです。
このような事例は、横浜だけではなく他のカーフリーデーにおいてもおき得ることかもしれません。日本におけるカーフリーデー参加都市数は世界中のわずか0.5%で、その存在や意義を知る自治体も市民もごく少数です。カーフリーデーに出店(出展)参加する側もその意義などは二の次で、単にイベントの1つとして利用している場合も少なくないと思います。おまけに、日本では国も地方自治体も今もってクルマを交通の中心手段と重視しており、道路新設と『道の駅』の新増設・拡充には並々ならぬ力を注いでいます。『道の駅』は地域の産物・商業の窓口として、多くの国民にとって鉄道駅よりはるかに身近な場になっています。そんなこんなで、こともあろうに「クルマを減らそう」というイベントで、クルマでないと行けない『道の駅』の宣伝をする、という本末転倒な現象が起きても、残念ながらそう驚くことではないかもしれません。ただ、それに違和感を持つ人がほとんどいないとしたら、寂しい限りです。日本では、カーフリーデーに積極的に関わる自治体自体も少ないのが現状ですが、直接・間接に関わっている自治体や警察などの人も、「1日限りの歩行者天国的なお祭り」という認識に留まっている人が少なくないのでは、との思いが胸をよぎります。
【注】
1)クイズのパネルとポケットサイズのプリントは、各地の展示などでもご活用いただけます。世話人までお知らせください。
2)映画『Bikes vs Cars 車社会から自転車社会へ』はスウェーデン人監督作製による映画で、アメリカやブラジルなどのクルマ依存社会の病巣をあぶり出し、デンマークなどの自転車優先社会を対比として紹介しています。