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2018/3/30 自動車運転免許の認可基準の強化を求める要望書

投稿日:2018年4月12日 更新日:

クルマ社会を問い直す会は、2018年3月30日、下記の要望を国家公安委員長ほかへ提出しました。

自動車運転免許の認可基準の強化を求める要望書

自動車運転免許の認可基準の強化を求める要望書(PDFファイル)

国家公安委員長殿
警察庁長官殿
内閣府政策統括官交通安全対策室長殿

自動車運転免許の認可基準の強化を求める要望書

2018年3月30日
クルマ社会を問い直す会
http://toinaosu.org/

 最近、交通事故は関係機関のご努力もあって減少傾向にあります。しかし、年間死者数はいまも4600人を超え(平成28年の30日以内死者数)、うち半数は歩行者・自転車利用者が占めており、現状は「第10次交通安全基本計画」の目標にも、「人優先の交通安全思想」という基本理念にも未だ遠く、深刻な状況です。
 自動車は一瞬のミスや不注意で人を死傷させ得る危険物ですが、事故の大半はドライバーの法規違反、不注意、運転操作ミス、身心不調など、危険物を扱う資格や意識の欠如に起因しています。自動車の運転はだれの監視も受けずにドライバーが意のままにできる点に高い事故リスクが潜んでおり、なればこそドライバーは高い運転能力や注意力、身心機能、法の遵守意識などを有していなくてはなりません。運転免許制度はその重要な審査機関であり、免許認可には人命の安全がかかっています。その観点から、免許認可基準の強化を要望します。一部に過去の要望と重なる点もありますが、再度要望いたします。

要望項目(骨子)

  1. 自動車運転免許の取得および更新希望者全員に、現行試験・検査のほかに以下の試験・検査を義務づけ、厳しい判定基準のもとで運転免許を認可する制度を導入してください。
    1. ①運転技能・資質等の適性試験
    2. ②運転にかかわる健康状態の検査
      1. 血液循環器系健康診断(血圧、血糖値、血中脂質、肥満度、心電図)
      2. 睡眠時無呼吸症候群の簡易問診テスト(ESSテスト)
      3. 久里浜式アルコール症スクリーニングテスト
      4. 精密な視野検査(60歳から)
      5. 認知症検査(60歳から)
  2. 1の運転適性試験や健康診断の結果が及第点でもレベルが低い人、違反回数が多い人などは、運転免許の有効期間を1年または2年に短縮し、1の試験を受ける機会(チェックの機会)を増やしてください。また、前期高齢者の65歳以降の人も、有効期間を1年または2年に短縮してください。
  3. 違反や事故の内容により、行政処分を厳しくしてください。
  4. 無免許運転防止のため、「ICカード免許証による無免許運転防止装置」を自動車に装着することを義務づけてください。
  5. 運転免許自主返納をさらに促し、公共交通利用へのシフトを関係省庁と連携して進めてください。

要望項目の補足説明

1.自動車運転免許の取得および更新希望者全員に、現行試験・検査のほかに以下の試験・検査を義務づけ、厳しい判定基準のもとで運転免許を認可する制度を導入してください。

(死亡事故の第一当事者であるドライバーの85%は運転免許取得後5年以上の者であり、更新時にも導入することは事故削減に不可欠です。)

①運転技能・資質等の適性試験

 適性検査とは、ドライバーの運転動作の正確度、判断・注意力、危険予知力、安全意識、視力(動体視力、周辺視野、夜間視力)、性格などを運転シミュレーターなどで診断し、問題点を見出す検査(現在、事業用自動車の運転者に義務づけられている適性検査と同レベルのもの)などを指します。運転歴、違反歴などによる対象別の検査を「試験」として導入し(自動車教習所などを活用)、厳しい判定基準を設けてください。安全運転の能力や資質は、職業運転者だけでなくすべてのドライバーに必要不可欠です。

②運転にかかわる健康状態の検査

 運転にかかわる病気については、虚偽申告に罰則が設けられたものの自己申告であるため、病気の自覚がない・症状の認識が甘い・健康診断を受けていない等の場合、重大な病気が見逃されるおそれがあります。それを未然に防ぐ対策として、以下のような事前検査を義務づけ、免許認可の判定基準を設けてください。

  1. 血液循環器系健康診断(血圧、血糖値、血中脂質、肥満度、心電図)
  2. 睡眠時無呼吸症候群の簡易問診テスト(ESSテスト)
  3. 久里浜式アルコール症スクリーニングテスト

 aは、心臓発作や睡眠時無呼吸症候群や無自覚性低血糖による意識消失など、運転中の事故につながる症状と関連のある基本的な身体情報であり、bcは各症状の兆候をつかむ初段階テストです。いずれも一般医療機関で実施可能です。これらの検査を以下のように免許認可の審査に生かすことを要望します。

段階1:免許希望者にa~cの診断書(専用書式に検査数値と「治療の必要性の有無」を医師が記入する)の提出を義務づける。

段階2:段階1で「治療の必要性有り」の者は、より詳しい検査による診断判定書(専用書式に診断結果と運転の可否を医師が記入するもの。運転可否の基準は事前に設定)の提出を義務づける。

段階3:段階2で運転不可とされた者には免許認可を与えない。

 また、運転可とされた者でも要注意の症状がある場合は、運転に際して血圧、血糖値などの測定を義務づけ、数値により運転可・不可の判断基準(事前に設定)に従うことを義務づけ、違反した場合の罰則を設ける。

※(例)無自覚性低血糖については以下の対応を提案します。

  • 糖尿病でインスリンなどの薬剤治療中の場合は、無自覚性低血糖の危険の有無について年1回医師の診断書の提出を義務づけ、危険がある場合は免許不認可とする。
  • 運転免許を認可した者でも、インスリンや低血糖を起こすおそれのある薬剤を服用している場合は、運転前および運転中2時間毎の血糖値測定を義務づけ、数値が100㎎/dl未満の場合は運転を禁止とする。

d精密な視野検査(60歳から)

 精密な視野検査については2018年度から70歳以上のドライバーを対象に試験的に導入する動きがあると聞き、本格導入を期待しています。ただし、視野狭窄を招く緑内障、網膜色素変性などの患者年齢をみると、遅くとも60歳からの検査とそれによる免許認可の判定の導入を要望します。

e認知症検査(60歳から)

 認知症について、75才以上の人への更新時検査が義務化されたことは前進と歓迎します。ただし認知機能も60代頃から衰えるといわれ、若年発症もみられることから、遅くとも60歳からの検査導入を要望します。また、検査の結果「認知症のおそれ」と判定された場合、医師の診察を受けるまで運転は禁止とし、免許認可の基準も厳しくしてください。

※運転にかかわる疾患の検査法は、専門家の協議により上記案より適切なものがあればその導入を進めてください。また、上記以外の疾患でも検査と免許認可基準の導入について専門家による検討を進めてください。

※検査・試験の費用は免許取得希望者の負担としますが、障害者や高齢者の送迎などで運転が必要不可欠な人には所得に応じた経費軽減制度を設けることや、要望項目5に記す公共交通利用へのシフト政策も、併せて検討してください。

2.1の運転適性試験や健康診断の結果が及第点でもレベルが低い人、違反回数が多い人などは、運転免許の有効期間を1年または2年に短縮し、1の試験を受ける機会(チェックの機会)を増やしてください。また、前期高齢者の65歳以降の人も、有効期間を1年または2年に短縮してください。

 補足説明はなし。

3.違反や事故の内容により、行政処分を厳しくしてください。

①昨年表面化したあおり運転事件をふまえ、当該ドライバーに最長180日の免許停止や、状況により危険運転致死罪や暴行罪の適用も可能との通達が出されたことは、行為の悪質性と危険性からみて大いに賛同します。こうした道路交通法の危険性帯有に係る行政処分は、あおり運転以外にも、過度な速度超過や信号無視、ドリフト走行、スマートフォンなどを見ながらの運転などにも該当すると考えます。運転行為の持つ本質的な危険性を認識させるためにも、厳しい行政処分を要望します。

②現在は死傷事故を起こし免許取り消しとなった者も欠格期間の後、再度免許取得が可能となっていますが、事故を起こした者は再犯率が高く、重大事故再発のリスクも懸念されます。違反点数が一定以上になったら永久免許停止とする法律を設けてください。
また、上述のあおり運転事件では、容疑者が事故直前に起こした他県での悪質な違反運転の情報があとで発覚しており、都道府県警察間での法規違反者・違反歴情報の共有化が遅いようです。違反者・違反歴情報は全国共通の電子データとして即刻検索できるシステムを構築し、悪質違反者の迅速かつ厳正な取締りと処分を推進してください。

4.無免許運転を防止するため、自動車への「ICカード免許証による無免許運転防止装置」の装着を義務づけてください。

 免許停止・取消し中のドライバーが運転をして違反や事故を起こす例が見受けられます。免許停止・取消し中は運転できないようにするには、無免許運転防止装置の導入が必要です。

5.運転免許自主返納をさらに促し、公共交通利用へのシフトを関係省庁と連携して進めてください。

 警察庁はじめ関係機関の取り組みにより、高齢者の運転免許自主返納が進んでいるのは社会にとって大きな前進です。さらなる推進を願うとともに以下の対策を要望します。

①長く自動車依存で生活してきた人が、体力の低下した高齢になってから自動車を手放すのは、特に交通不便地域では生活面でも心理面でも大きな抵抗があります。高齢化がさらに進むこれから、高齢になってからではなく、若い世代にも免許返納・マイカー利用削減を促し、自動車に頼らない生活への転換を呼びかけてください。

②①と並行して、国土交通省等と連携して高齢者や障害者も歩きやすい道や自転車で走りやすい道づくり、きめ細かな公共交通網の拡充、動線や利便性を考えたまちづくり(公共施設や病院を結節点となる鉄道駅やバス停付近に設けるなど)を推進してください。全世代でマイカー依存度を減らせば、地域の公共交通網の活性化にもつながり、道路の渋滞緩和、交通事故削減にも寄与します。

③各地の警察で免許自主返納者に様々な特典を設ける取り組みがされていますが、免許返納者だけでなく、免許を持たず(持てず)に移動の不便をかこちながら生活してきた人々にも応分の配慮をしてください。

以上

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