「手上げ横断指導」を加えたことについての質問書
警察庁長官 様
国家公安委員長 様
内閣府 交通安全対策 担当責任者様
http://toinaosu.org/
2021(令和3)年4月、『交通の方法に関する教則』および『交通安全教育指針』の改定において、信号機がない場所での歩行者の横断について「手を上げるなどして運転者に横断の意思を明確に伝える」という指導(以下「手上げ横断指導」)が盛り込まれました。この指導について、道路交通法遵守、および歩行者の安全の観点から、次の点をお尋ねいたします。交通安全管理の責任を担う立場としてのご回答をお願いいたします。
質問1:「手上げ横断指導」は1972年に「交通の方法に関する教則」ができた時点には記載されていたものが、78年から削除されましたが、削除した理由を教えてください。当時の理由が不明な場合、今回改定にあたった関係者の皆様は、削除の理由をどう解釈された上で今回また加えたのかを教えてください。
質問2:「手上げ横断指導」を72年に削除した理由として、全日本交通安全協会の担当者が「手を上げさえすればクルマが止まってくれると思い込むと事故につながってしまう……」、と話しており(*1)、その危険は充分に考えられますが、これについてはどうお考えですか。
(*1):「交通の方法に関する教則に表記がない?「手上げ横断」の謎に迫る」2020.08.16 ガズー編集部)
https://gazoo.com/column/daily/20/08/16/
質問3:78年から「手上げ横断指導」のかわりに「車が近づいているときは通り過ぎるまで待つ」という指導が加わり、今も続いていますが、この指導を加えた理由を教えてください。
質問4:現在、JAFの調査が示すように、信号のない横断歩道で停止しない車は8割以上にもなりますが、このようなドライバーの道路交通法違反の常態化を招いた理由はどこにあると分析していますか。
歩行者に「車が近づいているときは通り過ぎるまで待つ」と40年間以上指導してきた影響についてはどう思われますか。
質問5:今回の改定に「手上げ横断指導」を加えたのは、ドライバーが止まらない理由として「歩行者の横断の意思がわからない」というものが多く、それに対応してのことだと報じられています。しかし、「歩行者が手を上げて横断の意思を示せ」という指導に力を入れると、ドライバーの多くが「歩行者が手を上げれば止まるが、手を上げなければ止まらない」ようになることは、現状の道路交通違反状況を見れば十二分に推測されます。これについてどう思われますか。歩行者の姿が見えていても手を上げなければ止まらない、という行為は、道路交通法第38条に違反する行為ではありませんか。
質問6:歩行者の中には、手を上げることが難しい人(心身にハンディのある人、高齢者、両手に重い荷物を持った人等)や、その指導を知らない人(海外旅行者を含む)、忘れる人もいます。手上げ横断指導によって手を上げないと止まらない車が増えると、そういう人々が衝突被害に遭う危険が増しますが、その点をどうお考えですか。
質問7:道路交通法第38条では、横断しようとする歩行者がいる場合、「横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)で停止することができるような速度で進行しなければならない。横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」と定めています。この法は、交通弱者である歩行者の安全な横断の権利を保障するためのもので、ドライバーに守らせることがなにより重要です。この法が守られない現状を招いたのはなぜか、ドライバー教育・指導等のどこに問題があり、なにが不足していたと思われますか?
以上