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「横断歩道のない場所を横断する歩行者を非難する報道について、再考を求める意見」を各報道機関に送付しました

投稿日:2023年8月11日 更新日:

昨今、テレビやインターネット等のニュースで、横断歩道のない場所を横断する歩行者を「乱横断」と非難する報道が頻繁に見られます。しかし、法規上は、横断禁止場所でなければ横断歩道以外でも歩行者優先で横断できることや、横断禁止場所において違法横断が発生する根本原因は歩行者の横断ニーズを無視して横断禁止にしたことにあること等から、横断歩行者だけを非難する報道は明らかに問題があると考えられます。そして、このような報道は問題の解決にはならないだけでなく、車が優先であるという誤った考えを運転者に植え付けることで、事故の頻度や被害を増加させている可能性も考えられます。

このため、以下の意見書を、インターネット上に記事を掲載していた主な報道機関(下記14社)に送付しました。

この意見書により間違った報道が減り、歩行者優先の考えが運転者に浸透することを願っていますが、意見書だけでは効果が限られますので、会員の皆様もご自身の意見を報道機関に送る等、ご協力をお願いいたします。

送付先(リンク先:当該ニュースページ):関西テレビ放送 フジテレビ NHK 九州朝日放送 HBC北海道放送 札幌テレビ放送 西日本新聞 くるまのニュース 琉球新報 十勝毎日新聞 日本テレビ テレビ朝日 TBSテレビ テレビ東京

横断歩道のない場所を横断する歩行者を非難する報道について、再考を求める意見書

2023年7月18日

(報道機関)ご担当者様

クルマ社会を問い直す会
共同代表 青木 勝
共同代表 足立礼子

 交通安全や交通事故に関する報道の際に、貴社が横断歩道のない場所を横断する歩行者を非難するような表現をされることがあります。これについて、以下の2つの問題があると考えます。

1.横断禁止でない場所について、法規と異なる報道を行っている

道路交通法※1では、下記に示す第十二条および第十三条の通り、横断歩道付近、斜め横断、車両等の直前直後、横断禁止標識がある場所を除いては、横断歩道が無くても歩行者の横断は禁止されていません。また、第十四条5、第三十八条の二、第七十一条二及び二の二では、歩行者優先が明記されており、車側に止まる義務があります。
これらのことから、横断歩道のない場所で横断することが全て法規違反であるかのように非難する報道は間違っています。このような報道が、運転者と歩行者の双方に誤った考え方を植え付けており、その結果、車は横断しようとする歩行者が見えていても減速せずに我が物顔で歩行者の近くを通過し、歩行者は車を妨害しないようにやむを得ず車の合間を走って横断するという、危険な状況を生じさせる要因にもなっています。これにより、事故のリスクが増加していると共に、衝突時の被害も甚大になっていると考えられます。つまり、報道機関の誤った報道が死傷者を増やしている可能性があります。
これらの点をぜひご理解いただき、今後は、車の運転者に対して横断者を優先するように呼びかける等、法規を踏まえた正しい報道をされるように、お願いいたします。

道路交通法(抜粋)
(横断の方法)
第十二条 歩行者等は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の付近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。
2 歩行者等は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。
横断の禁止の場所
第十三条 歩行者等は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。(後略)
2 歩行者等は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない
(目が見えない者、幼児、高齢者等の保護)
第十四条 5 高齢の歩行者、身体の障害のある歩行者その他の歩行者でその通行に支障のあるものが道路を横断し、又は横断しようとしている場合において(中略)、当該歩行者が安全に道路を横断することができるように努めなければならない
(横断歩道のない交差点における歩行者の優先)
第三十八条の二 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない
(運転者の遵守事項)
第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
二 (前略)身体の障害のある者が同項の規定に基づく政令で定めるつえを携えて通行しているとき、又は監護者が付き添わない児童若しくは幼児が歩行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること
二の二 前号に掲げるもののほか、高齢の歩行者、身体の障害のある歩行者その他の歩行者でその通行に支障のあるものが通行しているときは、一時停止し、又は徐行して、その通行を妨げないようにすること

2.横断禁止場所での横断について、横断禁止にしていることにも問題がある

横断禁止の場所での横断は危険な行為ですが、近くに横断歩道が無い場所も多くあると共に、違法横断者が多いということはその場所に横断のニーズが多くある、ということでもあります。それを無視して行政や警察が横断禁止にしていることに問題の根があります。
つまり、車の運転者だけでなく歩行者も最短距離で移動したいと思っており、特に、足腰の衰えた高齢者が遠くの横断歩道まで迂回するのは非常に負担が大きいにも関わらず、そのような多くの歩行者の要望を無視し、車ばかりを優先した道路環境になっていることが、違法横断と交通事故死傷者を生み続けている元凶と言えます。この対策として、車の円滑な走行だけでなく歩行者の安全と利便性も重視し、横断歩道を新設するなどの対策を行うべきです。
また、横断歩道の新設は渋滞を悪化させる要因になるために困難であると行政や警察が言うことが多いですが、平均乗車人数が1.3人で非常にスペース効率の悪い自家用車を無制限に使わせ、最大80人程度乗れる路線バスなどの公共交通の整備をなおざりにしてきたことが、渋滞を招いている根本的な原因です。
バスや鉄道、LRTを充実させ、かつ、自転車や歩行者の空間を増やすことで自家用車からの利用転換を促していけば、道路の渋滞も大幅に減り、歩行者も道路を横断しやすくなります。また、歩行者や自転車で移動しやすい地域は商業施設も活性化し、にぎわいのある魅力的なまちに変貌します。海外では、このような歩行者を優先した都市が数多く存在しており※2、日本は相当遅れています。
報道機関には、目先の問題だけでなく、背景となる道路環境の問題を提起いただくと共に、海外の先進事例を取り上げて、歩行者や自転車に優しい街づくりを促進するために世論を形成していただきたいと思います。

※1:道路交通法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105
※2:タイムアウト東京「2022年世界のトレンド:「カーフリー 」な街づくり」
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/news/trending-2022-pedestrian-011422

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