交通事故を防ぐには、道路交通システムの対策とともに、事故を未然に防ぐ自動車自体の安全機能対策も必須です。安全機能の開発は最近進んでいますが、現実に走行している車のごく一部にしか装備されていません。
そこで、事故抑止につながる機能・装置の装備義務化などを具体的に求める要望書を国土交通省に提出しました。
2024(令和6)年7月 28 日
国土交通大臣 斉藤 鉄夫 殿
クルマ社会を問い直す会
共同代表 青木 勝 足立礼子
https://kuruma-toinaosu.org/
group@kuruma-toinaosu.org
自動車車両の安全性能向上対策を求める要望書
私どもは、交通事故をはじめとするクルマ社会の問題を考え、改善を願って活動している全国組織の市民団体です。
毎日各地で起きている交通事故のほとんどは、ドライバーのミスや慢心や体調不良などによるものです。自動車は一瞬の操作ミスで人命にかかわる大事故を招く危険を内包していますが、それを運転する者の完璧・完全な運転操作も注意力も全く保障されていません。
したがって、自動車は、人間の犯しがちなミス、不測の行動、突発事態などに対応して事故に至らせない(未然に防ぐ)ためのさまざまな安全機能を装備していなくてはなりません。しかし、現実には、安全機能はごく一部の先進車に一部の機能が装備されているにとどまっています。
EUでは、自動車のさまざまな安全機能装備の義務化を進めています。わが国でも、交通事故被害者を1人でも出さないよう、有効性が一定程度認められた安全機能装置の装備義務化を早急に進められるよう、以下の要望をいたします。
【要望骨子】
- 海外で先行している自動車車両安全基準の国内適用、最新安全技術の適用義務化、技術開発の促進によって、車両の安全性能を早急に向上させる。
- 新車については、トップランナーの安全性能に合わせて保安基準を迅速に強化し全車適用する。使用過程車については、費用対効果が大きい安全装置について装備を推進、または義務化する。
- 高齢者や交通違反検挙者等のうち、特に重大事故発生可能性の高い運転者については、対応する安全性能を満たす自動車に運転を限定する。違反者には運転免許取消等の罰則を設ける。
【対策を優先すべき項目と対策案】
- アクセルペダル操作ミス防止
ペダル踏み間違い時加速抑制装置、後付け式ペダル踏み間違い防止装置の装備を義務づける。- 高齢者の運転は装備車に限定する。または、後付け式のペダル踏み間違い防止装置の装着を義務づける。違反者には運転免許取消等の罰則を設ける(違反者への対応は以下同)。
- 障害物がないと作動しない等、効果が不十分な物もある※1ため、確実に効果を発揮する方法を検討し、認定基準を厳格化する(低車速でのアクセル全開時は常にアクセルOFF出力、または一般的な加速度に制限する、等)。
- 意識喪失、よそ見運転への対応
2.1. ドライバー異常時対応システムの装備- 新車にドライバーの異常の自動検知・自動停止装置※2を義務化する。
- 中大型の使用過程車に、自動検知・警報装置※3を義務化する。
- 高齢者や、てんかん等の運転に影響のある持病がある人の運転は、自動停止装置装備車に限定する。
2.2 衝突警報装置の装備※4
- 使用過程車について、装備を推進する。
- 交通違反の検挙が多い者の運転は、装備車に限定する。
- 速度超過防止
ISA(自動速度制御装置)の装備- 新車に義務化する。
- 運転者によるオーバーライド(速度超過)を不可とする。
- 速度違反検挙者の運転は、装備車(警報のみも含む)に限定する。
- 最高速度リミッターを、法定最高速度に変更(普通車等は120km/h、原付1種は30km/h等)
- 速度違反検挙者の運転は、変更車に限定する。
- 横断歩行者・自転車の巻き込み防止
4.1 側方障害物検知装置※5の装備- 運転席から後輪までの距離が一定以上の全ての車に義務化する。
4.2 斜め前方視界の保安基準強化
- フロントピラー等の死角により運転席側斜め前方の視界が悪い車※6が多いため、ワイパー払拭範囲が必要な視界範囲を確保するように保安基準を強化し、新車に適用する。
- 飲酒運転防止アルコールインターロック装置の装備
- 飲酒運転違反者の運転は、装備車に限定する。
- 無免許運転防止免許証インターロック装置※7の装備
- 新車に義務化する。
- 高齢者、飲酒運転違反者等の運転を対応する安全装置の装備車に限定する場合に、免許証インターロック装置も併せて義務化する。
- 歩行者や自転車との衝突防止
7.1 歩行者保護保安基準の強化- 歩行者用エアバッグ装備等により向上する歩行者保護性能に合わせて保安基準を強化し、新車に適用する。
- 大型車を含む全ての新車に適用を拡大する。
- フロントエンド高さ※8や低身長者、歩行者の路面への2次衝突※9等、現在考慮されていない要因の影響が指摘されているため、より現実に即した基準に変更する。
7.2 車体幅を抑制する税制、保険制度の導入
- 車体幅の増加が歩行者や自転車に対する安全上の問題となっており※10、また狭い道でのすれ違いや駐車場での乗降時にも他車に対する多大な悪影響を及ぼしているため、普通自動車で一定の車体幅(例えば1.7m)超の車は、車体幅の増加に応じて自動車所有に対する税、損害保険料を上げる。
- 事故原因究明
8.1 ドライブレコーダー(ブラックボックス化、運転手撮影)の装備- 新車に義務化する。
- 交通違反の検挙が多い者の運転は、装備車に限定する。
- 運転手による証拠隠滅を防止し、運転操作の証拠を残すために、データ消去が不可能で運転手も撮影する仕様とする(ドライバー異常時対応システムとの統合も可)。
- 事故負傷者の救護9.1 eCall(自動緊急通報システム)の装備
- 新車に義務化する。
- 衝突被害軽減ブレーキシステムや側方障害物検知装置による車外の障害物情報を利用して、車への衝撃が少ない事故についても自動通報する(ひき逃げ、当て逃げ対策)。
安全運転や走行抑制効果のあるテレマティクス保険の普及にも繋がる。
- 交通違反、危険運転全般の防止
10.1 車載の周囲監視用カメラの画像解析による各種危険運転防止・警報装置の装備- 車線逸脱、車間距離不保持、一旦停止違反、進入禁止違反、追い越し禁止違反、車線変更禁止違反、駐車禁止違反、信号無視等の危険状態について、衝突被害軽減ブレーキ等のカメラ画像を利用して、危険防止のための制御や警報発報を行う装置を新車に義務化する。
- 使用過程車については、警告のみの装置※4の装備を推進する。
- 交通違反の検挙が多い者や高齢者の運転は、装備車に限定する。
★本要望について、意見交換の場を設けていただきたく、お願いいたします。もしくは、文書にてご回答をお願いいたします。
参考文献
※1:新たな「急アクセル時加速抑制」システムを発売 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
※2:ドライバー異常時対応システム | NOAH | TOYOTA
※4:モービルアイ 580 | 運転習慣を変える後付け警報装置モービルアイ
※5:【側方衝突警報装置 義務化】に伴う「既販車への対策」とは? | 東海クラリオン 株式会社
※6:おじさんパニック!? プリウスはAピラーが前に伸びすぎていて スーパーカーより視界が悪い!
※7:日立の指静脈認証やIC免許証と連携し さらなる高速・高精度な飲酒検知を実現した 「デュアル認証式アルコール測定システム」
※10:「メガSUVブーム」欧州で大問題に! 車両の大型化で死亡リスク30%増の報告、パリではSUV規制を問う住民投票も【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(20) | Merkmal(メルクマール)
以上