2007年11月12日、クルマ社会を問い直す会では、国土交通省に宛てて「道路整備の中期計画についての意見書」を提出いたしました。
道路整備の中期計画についての意見書
2007年11月12日
国土交通省大臣 冬柴鐵三 殿
国土交通省道路局長 宮田年耕 殿
道路整備の中期計画についての意見書
クルマ社会を問い直す会
代表 古川量巳
クルマ社会を問い直す会としては、道路行政を次の観点で進めて頂きたいと考えています。命・健康の保全を最優先にすること、および生活環境の改善を最優先にすることです。
具体的な目標課題として、①交通事故をなくすこと、②自動車の排気ガスによる喘息をなくすこと、③クルマを使えない・使わない人を交通弱者にしないこと、④地球温暖化を阻止することを掲げるべきと考えます。 道路整備中期計画に於いても、この目標に沿った内容で構成して頂きたいと考えます。
これらの目標で道路整備を考えるとき、整備という言葉の意味は、新たに道路を造るという意味よりも、既存の道路をどのような使い方をするか、利用のあり方をどう再編成するか、利用者間で道路空間をどう再配分するかと言うことに大きく重点がシフトすることにならざるを得ないと考えます。
計画で盛り込んで頂きたい具体的内容を絞って提示します。一部国土交通省道路局の所管をはずれる事項も含まれますが、関係他部局・他省庁と連携して実現してください。
①交通事故対策
交通事故による死傷者数は増加を続けてきており、やっと頭打ちの傾向が現れている程度です。交通事故死者のうち歩行者・自転車利用者の占める割合は、平成18年度で45%と半数近い状態です。この現実を改善することは道路整備における第一課題と考えます。
- 歩行者が自動車から分離して通行できる空間を確保すること(歩道の確保)
- 自転車が自動車および歩行者から分離して通行できる空間を確保すること(自転車専用道の確保)
- 歩道・自転車道の確保に際しては、車道空間の削減を車線の削減や一方通行化によって進めること
- 歩道・自転車道を分離確保できない場合に於いては、自動車に対して20km以下の速度制限を課し、同時にハンプもしくは狭窄を設置あるいは整備して自動車の速度制限の実現を担保すること
- すべての交差点に歩車分離信号を導入すること
②大気汚染対策
NO2やSPMの環境基準の達成率が上がってきても、喘息患者数の減少につながっておらず、むしろ増加の傾向にあります。
- 自動車の排気ガスで喘息を引き起す元凶とみられるディーゼル廃棄微粒子におおむね重なるPM2.5の環境基準を早急に決め、PM2.5を対象とした排出量の総量削減を実施すること
- NO2やSPMの環境基準を達成できていないエリアを対象に、ディーゼル車を対象としたロードプライシングを実施すること、その際、環境基準が達成出来る水準まで課金を操作すること
- NO2やSPMの環境基準を達成できていないエリアを対象に、車線削減を行って環境基準の達成を図ること
③交通弱者解消策
自動車の運転免許を取得できない18歳未満の人、高齢で運転能力に問題がある人、身体に障害があり運転能力に問題がある人、経済的理由でクルマを保有できない人、主義思想からクルマを持たない人が交通弱者となっていますが、6歳以上人口の3割前後を占めると推測されます。高齢化が進む中で、今後交通弱者の増大が見込まれます。
- バスと路面電車のための優先走行空間を確保すること
- この確保に際しては、車道における一般車線の削減や一方通行化によって進めること
- 一般車線の削減や一方通行化が出来ない場合に於いても、公共交通優先を明確にした道路利用(たとえばバス優先信号の実施)を進めること
- 公共交通の採算を取りやすい集住型の都市を目指して都市計画をみなおし、人口・機能の立地を緩やかに誘導すること
④地球温暖化防止策
交通手段における省エネルギー性・省CO2性は、鉄道そして自転車が圧倒的に自動車を上回っています。
- 自家用車から路面電車への転換を推進すること、そのため車道の路面電車空間への転用、集住型の都市作りを進めること
- 近距離交通における自家用車から自転車への転換を推進すること、そのため車道の自転車専用道への転用を進めること
- 中・長距離貨物輸送におけるトラックから鉄道へのモーダルシフトを推進すること、そのため貨物鉄道の復活・整備を高速道路の車
線の転用やローカル線の活用を含めて進めること - 中・長距離移動における高速道路を利用した自動車交通の鉄道へのモーダルシフトを推進すること、そのため容量の大きいフェリー鉄道(自動車をそのまま積載して走る鉄道)の新設を高速道路の車線転用を含めて進めること
以上4つの目標課題別に、絞った策を提案しました。4つの課題に共通して、より基礎的な政策として、交通・輸送における脱自動車、クルマ利用の削減があります。基礎的な方向としてこのクルマ利用の削減を目指しつつ個別の政策を進めて頂きたいと我々は考えます。
以上