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「クルマ社会と子ども」アンケート本報告

投稿日:2004年3月25日 更新日:

アンケートにみる クルマ社会と子ども

今私たちは、自動車に大きく依存した社会で生活しています。
それは便利で快適な暮らしといえる反面、交通事故、環境汚染、子どもの遊び場の減少や体力低下など、多くの問題も含んでいます。
特に、15歳以下の子どもの歩行中・自転車利用中の交通死傷事故が年間6万件近くも起きていることは、深刻な事態です。
心身の未成熟な子どもは大人以上に身の危険にさらされていますが、それを伝える力を持ちません。

このアンケートでは、保育園・幼稚園・小学校などの先生や保護者、小学生らを対象に、子どもたちのおかれている交通環境の現状を中心に、クルマ社会の利便性の陰に隠れてしまいがちな問題点を尋ねてみました。
ほとんどの人がクルマを使う、あるいは使わざるを得ない今日ですが、多くの方が真剣に考え、回答を寄せてくださいました。

子どもの命と健やかな成長を守り、また、すべての人々にとって望ましい社会を考える一助として、参考にしていただければ幸いです。

アンケート実施時期・対象・回答者数など

アンケート実施時期

2002年1月末~5月末

アンケート対象者

  • A群 :保育園・幼稚園の先生
  • B群 :小学校の先生(おもに低学年=1~3年生の担任)
  • C群 :幼児や小学生の保護者
  • C ́群:心身にハンディのある子どもの保護者や指導者
  • D群 :小学生
  • D ́群:心身にハンディのある子ども

アンケートの配布方法

  1. 全国に居住する本会会員と非会員計約50名の手を通して、各地の保育・教育施設等の関係者や子どもの保護者、小学生などに手渡しや郵送等で配布。
  2. いくつかの市区の施設を無作為に選んで郵送(A、B)。
  3. 会のホームページでアンケートを公開し、回答を募集。
  4. 第47回「子どもを守る文化会議」にて参加者に配布。

以上の方法で配布しましたが、集まった回答の約8割は1の方法によるものでした。

各アンケートの回答者数とおもな居住地

上記のような配布方法に拠ったため、回答者の居住地は全国に分散しています。特定地域や施設に偏らない分、全国的な傾向を伝えるものとなっています。※市区郡の詳細はp71に掲載。

アンケート対象 回答者数 おもな居住地
A群
保育園・幼稚園 の先生
207 東京都 38、三重県 35、鳥取県 27、大阪府 16、埼玉県 16、神奈川県 15、高知県 12、北海道 11、岐阜県 6、茨城県 5、愛知県 5、山形県 3、千葉県 2、奈良県 1、福岡県1、熊本県1、不明 13
B群
小学校の先生
133 北海道 58、東京都 33、神奈川県 5、埼玉県 5、兵庫県 5、三重県3、大阪府 3、奈良県 2、福岡県 2、栃木県 1、熊本県 1、不明 15
C群
幼児や小学生 の保護者
532 東京都128、高知県91、埼玉県85、三重県43、大阪府31、茨城県26、北海道23、岐阜県19、千葉県15、熊本県8、神奈川県7、岡山県7、兵庫県6、鳥取県6、山形県4、奈良県4、愛知県3、福岡県3、山梨県2、静岡県1、京都府1、広島県1、不明18
C ́群
心身にハンディ のある子どもの 保護者や指導者
89 新潟県 50、岡山県 10、東京都 7、大阪府 6、山形県 5、兵庫県 5、奈良県 2、鳥取県 1、不明 3
D群
小学生
437 北海道 292、東京都 44、大阪府 40、千葉県 15、熊本県 7、兵庫県 6、岡山県 5、埼玉県 4、神奈川県 4、鳥取県 4、愛知県 3、福岡県 3、奈良県 2、三重県 2、広島県 1、不明5
D ́群
心身にハンディ のある子ども
23 新潟県 14、山形県 5、東京都 2、山梨県 1、奈良県 1
合計回答者数 1421

回答群について

  • A群:保育園・幼稚園の先生(207名)
  • B群:小学校の先生(133名)※おもに低学年(1~3年生)の担任
  • C群:幼児や小学生の保護者(略称:一般保護者)(532名)
  • C ́群:心身にハンディのある子どもの保護者や指導者(略称:心身ハンディ児の保護者等)(89名)
  • D群:小学生(437名)
  • D ́群:心身にハンディのある子ども(略称:心身ハンディ児)(23名)

一般保護者(C群)と心身ハンディ児の保護者等(C ́群)の子どもの年齢

保護者の子どもの年齢は、一般保護者(C群)では4~6歳が約6割、0~3歳が4割、7~9歳が3.5割である。歩行者事故に遭いやすい幼児から小学校低学年頃の子どもが多い。心身ハンディ児の保護者等(C ́群)の場合は13歳以上が半数を占めている。やや年齢は高いが、心身ハンディ児全般の様子を知る一助となるかと思う。

保護者(C群・C ́群)の子どもの年齢


※学年での回答は便宜上、小学1年生=7歳とみなして、年齢に換算して集計。
※子どもが複数いる人もいるため、合計数は回答者数より若干多い。

小学生(D群)と心身ハンディ児(D ́群)の学年(年齢)

小学生(D群)の学年は、小学1~3年生までが65%で、低学年の割合が多い。心身ハンディ児(D ́群)は23名と少なく、諸事情により年齢は高いが、参考として回答を分けた。

子ども(D群、D ́群)の学年(年齢)


アンケートの設問概要

設問は、対象グループにより以下のように若干異なります。

設問の概要
設問 A群(保育園・幼稚園の先生)
B群(小学校の先生)
C群(保護者)
C´群(心身にハンディある子どもの保護者・指導者)
1 施設周辺の交通量 子どもの年齢または学年(記入式)
2 幹線道路に面しているかどうか 子どもがよく遊ぶ場所
3 保育・教育活動中に外に出る回数 戸外の遊び場の家からの距離
4 外出目的 家周辺や通園(学)路で感じるクルマの危険
5 外出時に感じるクルマの危険度
6 歩く空間で感じる具体的な問題
7 横断歩道で感じる具体的な問題
8 そのほかに感じる具体的な問題
9 実際の交通事故体験や危険体験(記入式)
10 歩行中の子どもの行動傾向
11 クルマ社会と子どもの心身発達との関連
12 道路対策で望むこと
13 車の使い方で望む対策
14 A:園児の通園手段
B:教職員の通勤手段
子どものためのマイカーの利用回数
15 A:通園手段についての園の方針
B:通勤手段についての学校方針
マイカーを使う場合の使用目的
16 クルマ社会と子どもについて(記入式) マイカーを使う場合の理由
17 マイカーを使わない人の使わない理由
18 クルマ社会と子どもについて(記入式)
設問 D群(小学生)
D´群(心身にハンディのある子ども)
1 自分の学年または年齢(記入式)
2 性別
3 居住地と学校名(記入式)
4 遊びや習い事での移動手段
5 登下校など外出時にクルマの危険がどれくらいあるか
6 歩行中や自転車利用中に感じる交通上の危険
7 そのほかクルマに対して感じること
8
9 実際の交通事故体験や危険体験(記入式)
10 よく遊ぶ場所
11 外で望む遊び場
12 クルマの来ない道があったら何をして遊びたいか(記入式)
13 子どもだけで電車やバスに乗って出かけた体験(Dのみ)
14 クルマが増えることによるリスクへの認識度

※回答は、(記入式)と付記したもの以外は、選択肢を示して選択方式としました。

アンケート結果

【1】保育園・幼稚園・小学校周辺の交通量や戸外活動の様子など

(1-1)園・学校周辺の交通量・幹線道路との関係(A群:保育園・幼稚園の先生・B群:小学校の先生への質問)

質問
貴園(校)の立地環境についてお伺いします。

周辺の交通量は(1:多い 2:中くらい 3:少ない)
幹線道路に(1:面している 2:面していない 3:面していないが近い)

 保育園・幼稚園および小学校周辺の交通量は、どちらも「多い」と「中くらい」がほぼ4割で合わせると8割を超え、「少ない」は2割以下である。また、幹線道路との位置関係は、「幹線道路に面している」または「面していないが近い」の合計が保育園・幼稚園で5割、小学校の回答では6割を超えている。「面していない」は3~4割である。

(図1-1-A)園・小学校周辺の交通量(A群:保育園・幼稚園の先生・B群:小学校の先生の回答)

(図1-1-B)園・小学校と幹線道路との関係(A群・B群の回答)

(1-2)保育・教育活動で外に出る回数とその目的(A群:保育園・幼稚園の先生・B群:小学校の先生への質問)

質問
保育・教育活動で子どもたちと園外・校外に出る機会はどれくらいありますか。

1:週に( )回くらい 2:月に( )回くらい 3:ほとんどない。

質問
(保育園・幼稚園で)園外へ出かける目的はなんですか。(おもなものに○を)

1:体作り・運動のため 2:自然と親しむため 3:地域を知り、交流するため 4:子ども同士の親睦のため 5:協調性などを養うため 6:交通安全マナーを身につけるため 7:その他

★★… 園児の散歩は自然とのふれあいや体作りなど多様な目的がある …★★

 校内授業が主体となる小学校に比べて、保育園、幼稚園での外出、いわゆるお散歩の回数はやはりずっと多い。月に4回(週に1 回)以上という回答が約半数あり、月12回(週に3回)より多いケースが1/4ある。ただ、月3日以下(週に1回以内)かほとんどないという回答も半数近くあった。なお、園周辺の交通量と散歩の回数にはとくに関連性は見られなかった。散歩回数の多少は、その園の保育方針に拠るところが大きいと思われる。
 散歩の目的は「自然と親しむため」を筆頭に、体作りや交通安全マナー体得、地域との交流などが多く挙げられた。1人平均3項目強を挙げており、散歩が情操教育や健康増進、社会学習など複数の目的を持っていることがうかがえる。

(図1-2-A)保育園・幼稚園で園外に出る回数(A群の回答)


(図1-2-B)小学校で校外に出る回数(B群の回答)

※回数は、1 ヶ月が4週間とみなして月あたりで集計。

(図1-2-C) 園児の散歩の目的(A群:保育園・幼稚園の先生の回答)
※回答は複数選択式。数字は選択した人の割合。

「その他」の回答で多いのは「園庭が狭いので園外に遊び場に行く」で、4件あった。「心の開放感を味わうのも大事な目的」「いろいろなものを目にし、触れて感性を養うため」等の回答もあった。

【2】子どもの遊び場・子どもの移動手段など

(2-1)子どもがよく遊ぶ場所( C 群: 一般保護者・C ´群: 心身ハンディ児の保護者等への質問)

質問
お子さんがよく遊ぶところはどこですか。( 3 ~ 4 個まで○ を)

1:自分や友達の家の中 2:家の近くの路地 3:空き地や原っぱ 4:公園 5:児童館 6:学校の校庭 7:田んぼやあぜ道 8:川や海辺 9:その他

★★… 子どもの戸外遊び場は公園が多い …★★

 子どもがよく遊ぶ場所を4つ以内選択する設問では、一般保護者の回答では、家の中が最も多く、戸外遊び場としては公園が多い。その次は家の近くの路地であった。心身ハンディ児の保護者等の回答では公園の選択率が一般保護者より低かった。かつて子どもがよく遊んだ空き地や原っぱ、川などは少ない。

( 図 2 - 1 )「子どものよく遊ぶ場所」( C 群: 一般保護者・C ´群: 心身ハンディ児の保護者等の回答)
※ 回 答は複数選択式。数字は選択した人の割合。

そ の 他 の 遊 び 場としては、一般保護者の回答では園庭、集合住宅の敷地内、自宅の庭、駐車場などが、心身ハンディ児では福祉会館やプールなどの施設が複数挙がっている。

(2-1-補)居住地の人口密度別に見る「子どものよく遊ぶ場所」( C 群: 一般保護者への質問より)

★★… 都市部では、戸外遊び場の選択肢が少ない …★★

 一般保護者の回答のうち人口密度が6000 人/k㎡以上の都市の居住者と1000 人/k㎡以下の地方の居住者の回答を比較したところ、後者のほうが戸外遊び場の選択の幅が広い傾向にあった。人口密度の高い都市部は、公園が戸外遊び場の中心であり、遊べる路地も多くないようだ。

( 図 2 - 1 ― 補) 居住地の人口密度別に見る「子どものよく遊ぶ場所」( C 群: 一般保護者の回答より)

人口密度6000人/k㎡以上の都市:
東京都内・大阪市・市川市・横浜市・名古屋市・草加市・尼崎市など
人口密度1000人/k㎡以下の地方:
高知県香美郡・つくば市・山形市・鳥取県気高郡・鳥取市・三重県安芸郡・松阪市など

(2-2)小学生らがよく遊ぶ場所(D群:小学生・D´群:心身ハンディ児への質問)

質問
どこでよく遊びますか。( 3 こか4 こまで○ を)

1:自分や友だちの家の中 2:自分や友だちの家のまわり( 道など) 3:公園 4:学校の校庭 5:児童館 6:学童クラブの中 7:あき地や原っぱ 8:田んぼやあぜ道 9:山 10:川や海 11:その他

★★… 小学生は家周辺や公園でよく遊ぶ …★★

 小学生の回答(4個まで選択)では、家の中が8割で、家のまわりが6割、公園も6割近くあった。家の中が最も多く、田んぼや山や川などの自然空間が少ないのは、保護者の回答と同様である(注:左の回答群の子どもとこちらの小学生とは無関連で、地域構成も異なる)。
 心身ハンディ児では、家の中に次いで公園が多いが、家のまわりは少ない。

子ども自身の回答

( 図 2 - 2 ) 小学生らのよく遊ぶ場所( D 群・D ´群の回答)
※回答は複数選択式。数字は選択した人の割合

「その他」の遊び場としては、小学生では17件あり、「まち」( 2名)、「地域センター」「神社」「長崎屋」「教会」など。「家を建てる前の空き地」「前は田んぼやあぜ道があってそこで遊んでいた」「遊ぶ気がしない」という回答もあった。
*心身ハンディ児は「ほとんど家の中」「教会」「川の土手を散歩」の3件だった。

( 2― 3 ) 戸外遊び場の家からの距離( C 群: 一般保護者・C ´群: 心身ハンディ児の保護者等への質問)

質問
お子さんが自由に遊べる戸外の空間( 路地、空き地を含む) は家のそばにありますか。

1:家から100m 内にある 2:家から200m 内にある 3:それ以上のところにある

★★… 3割以上は、家から100m以内に遊び場がない …★★

 子どもの戸外の遊び場は、一般保護者の回答では家から100m以内が6割だった。子どもの年齢層別に遊び場までの距離(図2-3-B)とよく遊ぶ場所(表2-3)を見ると、子どもの年齢が低いほど家の近くで遊んでいることがわかる。
 とはいえ、0~6歳児の3割以上は、遊び場が家から100m 以上離れている(公園が多いと思われる)。家の周辺に適当な遊び空間がないと、家の中で遊ばせる時間が増えてしまうことはないだろうか。

( 図 2 - 3 - A ) 子どもが自由に遊べる戸外遊び場までの家からの距離( C 群・C ´群の回答)

( 図 2 - 3 - B ) 子どもの年齢層別に見る、家から戸外遊び場までの距離( C 群: 一般保護者の回答より)

( 表 2 - 3 ) 子どもの年齢層別に見る「よく遊ぶ場所」
自分や友達
の家の中
公園 家の近くの路地 校庭 空き地や原っぱ 児童館 田んぼやあぜ道 川や海辺 その他
0〜3歳 90 76 41 11 12 10 6 1 13
4~6歳 91 76 45 19 14 7 5 1 10
7~9歳 90 67 45 31 19 10 5 1 10
10〜12歳 88 70 35 41 14 9 4 2 9
13歳〜 92 75 28 39 17 8 3 3 8

※数値は各年齢層該当者のうちの割合( % )

( 2- 4 ) 子どもたちの外出時の移動手段 ( D 群: 小学生・D ´群: 心身ハンディ児への質問)

質問
友達の家や外に遊びに行くときや、塾や習い事に行くときは、どうやって行きますか。( あてはまるものに○ を)

1:歩くことが多い 2:自転車が多い 3:歩きと自転車と半々 4:親に車で送ってもらうことが多い 5:電車やバスが多い

※ 実際のアンケートでは平仮名を多くし漢字にはルビを振った。以下同じ。

★★… 子どもたちの移動手段は歩きと自転車が中心 …★★

 小学生の外出時の移動手段(複数に丸をつけた子もいるため、回答数は1.2 倍となった)は、「自転車が多い」と「歩きと自転車が半々」を合わせると半数を超え、自転車がかなり使われていることがわかる。学年別に見ると、やはり高学年ほど自転車利用が多くなっている。

子ども自身の回答

(図2-4-A)小学生らの外出時の移動手段(D群・D´群の回答)

子ども自身の回答

(図2-4-B)学年別移動手段(D群:小学生の回答より)

※サンプルなので以下省略

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