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書籍の紹介 『移動から公共交通を問い直す コロナ禍が気づかせたこと』

投稿日:2024年9月16日 更新日:

書籍「移動から公共交通を問い直すコロナ禍が気づかせたこと」の表紙です

「移動から公共交通を問い直す コロナ禍が気づかせたこと」

西村 茂 著 自治体研究社 2024年7月刊
A5版 172ページ 1,980円(税込)
ISBN 9784880377728

2022年に、本会で「移動と地域公共交通を考える―コロナ禍と日仏比較から―」というテーマでご講演いただいた西村茂さん(金沢大学名誉教授)が、新著を出されました。
コロナ禍によって移動の意味や形態が多様化してきた中で、また、高齢化がさらに進み、地球環境悪化が加速する中で、これからの移動のあり方、公共交通の役割を広く考え直す内容です。

第1部では、コロナ禍により利用者が激減した地方のバスや鉄道事業が大きな打撃を受け、今も厳しさが続く現状と、それに対する国の支援・補助はどのようなものであったのか(適切といえるものだったのか)が、記されています。
第2部ではご専門であるフランスの地方自治や交通権の最新情報や交通の現状と、日本における移動の権利や地域公共交通に対する考え、法制度の相違などについて記されています。第3部では「くるま社会」のもたらす環境負荷や格差などの課題と、くるまに依存しない移動のあり方(オンデマンド交通や小型モビリティなど)について、第4部では地域の移動交通を支える税のあり方や国の責務について、いずれもデータや国内外の事例を紹介しながら考察されています。

読み進めるうちに否応なく見えてくるのは、日本においては「移動の権利は人権問題である」という認識が国にも国民にもないこと、そのため移動の権利を保障し具体的に支える国の責任も明確にされず実質的な支援もなされない、という現実です。フランスにおいても移動の地域格差は広がっているそうですが、憲法に交通権が明記されているので国民が抗議の声を挙げ、人権問題として認識される点が異なります。日本の交通政策は、経済活性に結びつくものに主眼をおいており、地域公共交通問題は主要課題でないことは、現実が物語っています。

本書の話題は多岐にわたります。クルマ社会を後押しした半島振興法、まちのスプロール化をあおる立地適正化計画、フランスの交通の現状など、教えられることが多くあります。また、ライドシェア推奨策などの対策、デマンド交通の課題、交通税の意義、公共交通無料化のもたらす多様なプラス効果等々、これからの交通を考える上で参考にすべきことが示唆されています。(A)

★この本は著者の西村茂さんより本会にご寄贈いただきました。ありがとうございます。お読みになりたい方は世話人の足立までお知らせください。

講演報告は会報108号に掲載されています。

 

書籍の紹介 『真冬の虹 コロナ禍の交通事故被害者たち』

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