内閣府政策統括官と面談しました(3)

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杉田:内閣府の交通安全対策担当の立場として、交通安全のために今後盛り込んでいきたいこと、目玉的な政策の方向を聞きたい。

久保田:今策定中の第10次計画案の特徴として、これは関係省庁も含めての総意でもあるが、交通事故のない社会を目指してということで、今まではスピード違反や赤信号無視などの削減をおもな対象としていたが、今ではそういう事故は減ってきて、相対的にはうっかり事故が増えているので、うっかり事故をどうにか削減したいという狙いがある。無意識な部分に働きかけていく必要があると考えている。うっかり不注意による巻き込み事故や追突事故などをなくしていくような働きかけをしていくことで、さらに事故が減らせると考えている。

杉田:我々も機械装備によってうっかり事故にも相当対応できると考えている。だから要望したような装備装着を義務化してほしいと思っている。

久保田:技術の力は大きいと思う。人に対する教育も大事だが、技術を部分部分でも取り入れていくことが大事だと思う。ただ、完全自動化は、機械としてはできても、交通社会に溶け込むのは正直どうかと個人的には思っている。

杉田:私は完全自動化を望んではいない。そうではなく、個々の技術対策、安全装置をきちんとしてほしい。

久保田:いろいろな装置の個々の安全を確認したうえで、取り入れられる技術はどんどん取り入れたい。先ほど話に出た視覚障害者の事故もブザーでは聴覚障害者には対応できないので、その点では死角のないクルマ作りが必要だと思う。運転する側が気づく装置、それに対応して
止まる装置が必要だと思う。その意味で安全が確認できたら導入することが大事だと思う。

足立:義務化することが大事。メーカーは安全装置を増やせば高くなるし売れないので渋ると思うが、国としては命の安全の観点からメーカーに引きずられるのではなく、義務化できるものは義務化する姿勢を持ってほしい。
また、当会に糖尿病専門医がおり、低血糖による事故の危険を強く感じて患者に警告しているが、注意すると逆切れして治療に来なくなるという現実があるという。このように病気についても多くの人が気づかずに乗っている現実があるのだから、歯止めをかけるために検査の義務化を要望している。

久保田:くわしくはわからないが、運転免許の取得・更新時にそうしたフィルターをかける制度が昨年導入されたと思うが、一定の病気については今後、一気にはそうならないがある程度歯止めは効くのかなと思っている。

足立:ぜひ後押しをしていただきたい。

 

佐藤:今、国交省道路局で、社会資本整備計画の中で今後の道路の交通安全について、2020年を目標とした計画が話し合われている。その中で、今後閣議決定の予定となる建議資料に、道路における交通弱者の危険を減らすということで、「歩行中の事故の半減を目指す」(「世界一安全な道路交通を実現するため、平成28年度からの5年間で、対策実施エリアでの歩行中・自転車乗車中死者の半減を目指す」)ことを掲げている。ちょうど第10次計画案と重なる5年間において、歩行者の死者を半減させるという目標立てをしている。国交省としてはあくまでも道路局内での目標で、道路局から第10次計画にこの目標を挙げるものではないとのことだが、そもそも第1次交通安全基本計画でも歩行者の死者半減が目標とされたように、ここがいちばんネックとなっているところである。
第10次計画案においても、このような目標設定が今こそ必要ではないかと思う。過去50年の道路交通の現状を振り返り、東京オリンピックを5年後に控えた今、単に全体で2,500人まで死者を減らすというのではなく、解決すべき点を絞って目標に打ち出すべきだと思う。もちろん目標立てした数値までは目をつぶるということは本意ではないが。
車体などの安全装置対策も大事だが、機械装置で救われるというのは、本来人間同士の行動における目標ではないような気がする。あくまでも共生社会としてつながってくるような目標を、ぜひ専門委員の方々に検討していただきたい。先に述べた「歩行者の死者半減」という目標は交通弱者を守ることを第一にしたわかりやすい目標で、オリンピックを控えて斬新な目標でもあると思う。今までの交通安全計画・運動でも歩行者事故削減は目標にあるが、「歩行者も注意せよ」「歩行者もルールを守れ」では、事故責任はお互い様になってしまい、ドライバーに対する訴えかけにはならない。

久保田:資料を見て、参考にしたい。

榊原:長年の疑問だが、建設の現場で人が死ぬことは大問題で、その原因と解決策が出るまで工事進行停止のような規制がかかるが、道路での死亡については講習を受ける程度で済まされてしまうのはなぜか。運送事業者もある程度対策ができるまで事業は停止、個人ならもう運
転させない、というような建設現場並みの厳しい対応が必要だと思う。特に交通運輸事業者にはもっと厳しい立場で取締りや規制をかけて、絶対事故を起こしてはいけないというようにすべきだが、3人も4人も死者が出ても、すぐうやむやになってしまう。第10次計画案にそのような考えも入れていただきたいと思う。

 

佐藤:こうした要望について、各省庁に直接我々から問い合わせてなくてはダメか。面識のない我々のような団体がいきなり行くと対応もそっけない。内閣府から、今日のような要望懇談があったことを、関係部署に伝えていただけるとありがたい。

久保田:省庁により対応が若干違うこともあるので、直接聞かれる方がよいとは思う。要望書は各省庁にまわっていると聞いているが、今日の面談の話は伝えるようにする。

 


今回の面談を通して感じたことは、内閣府は計画のとりまとめだけを行っており、具体的な施策は各省庁、具体的には国交省、警察庁に委せているということです。したがって各省庁に直接要請する事が必要であると思われます。
しかし、警察庁は要望が多くて忙しいと面談を毎年断ってきています。このことから分かるように、直接要望を聞いて貰う、あるいは相手の考えを聞かせて貰うためには、まだまだハードルがかなり高いと感じざるを得ません。
一方で、今回のような要望を毎年定期的に行うことで、相手方に当会の存在を認知させることができ、ハードルを少しでも低くする可能性があるならば、継続した方が良いのではないかと思った次第です。

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