●運転免許の認可基準強化の要望について
[榊原]次に「運転免許制度」の要望について。骨子は5つある。
- 取得更新時の検査強化。
- 検査結果の悪い人や事故の多い人に免許有効期間の短縮。
- 交通違反者の行政処分を厳しくしてほしい。
- 免停になっている人の無免許運転が多いので、ICカード免許証による無免許運転防止装置の装着義務化を。
- クルマ依存ではなく、公共交通へのシフトを。
[足立] 2011年にも関連する要望を出した。
その後、免許取得時の高齢者講習などハードルは上がってはいるが、それに追いつかないほど違反運転、漫然運転、不注意運転、薬を飲んでの運転などが多い。
クルマは一瞬のミスで凶器になるので、おおもとの免許取得・更新時に技能や身体機能、適性などを厳しくチェックすることが必須。チェック体制強化はシステム的にも労力が必要で、ドライバーの反発もあり、運転できなくなる人も増えることは承知しているが、厳しくしないと犠牲者は減らない。
技術的なチェックは、職業ドライバーに義務付けているNASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)で行なっているシミュレーション試験のようなものを一般ドライバーにも課すべきと考える。同じ公道を走るのだから当然で、チェックを受けないと免許をとれないようにしてほしい。医学的検査についても同様。
免許更新は現行の3年、5年ごとでは能力低下に対応できない。特に問題がある人は1~2年で再試験を受けるようにできないか。
免許更新は、講習受講やビデオを見るだけですむと聞くが、更新時を再教育の機会とすべき。免許取得者減少で自動車教習所がつぶれていると聞くが、教習所を検査機関として活用すれば生き残り策にもなるのではないか。
また、諸検査に費用も手間もかかるとなれば、安易に免許を取ろうという人が減ると思う。
さらに、免許返納高齢者の代替交通手段として公共交通を増やすよう警察庁から国交省に要望しているが、ここを充実させ、クルマに頼らない社会に転換していくべきだと思う。
[星野]高齢者講習も更新希望者が溢れている実態で悩ましい。
[榊原]死者数が4千人レベルになったから急に目立つようになったのかわからないが、病気が原因の事故の報道が目立つように思う。
てんかん、ペダルの踏み違い、心臓麻痺や脳梗塞などによる事故がしょっちゅう起きているような気がして、何とかカバーする方法がないかと考える中での提案である。現場の意見もあるとは思うが。
[星野]病気が原因という事故が増えたのは、事故原因が詳しくわかるようになってきたことにもよる。ドライブレコーダーで事故時のドライバーの状態がわかるようになってきた。
私も事故現場に何度か行ったことがあるが、警察官には医学的知識がなく、病名を聞いてもどういう症状があるのかわからない。医者に確認しながら原因の可能性を探っているのが実情で、補足してカメラの映像などを使うこととしている。時代の流れというか、原因の突き詰め方法が進んできて、原因を明言できるようになってきたのではないかと思う。
[榊原]高速道路で反対車線からクルマが飛び越してきた事故もあったが。
[星野]ああいうのもカメラ映像でわかるようになった。
[榊原]病気など原因がいろいろ言われているが、証拠のデータを取れるようになったのは大きいだろうか。
[星野]主にドライバーの操作の記録をデータとして残すイベントドライブレコーダー(イベントデータレコーダー)もついてきたので、記録が残るようになってきた。
一定の病気がある人には免許を与えないような制度を作っている。有識者会議でも医者から話を聞いている。
[井坂]持病などを免許証に記載できないのか。
[星野]申告はしてもらう。違反すると罰則もある。プライバシーの問題もあって免許証への表記はしていない。
[井坂]免許証を身分証として使うことを考えてのことか。でも何かあったときに現場の警察官が見られないと意味がない。データとして入れることを考えてほしい。
[榊原]免許証によるインターロック(無免許運転防止の)は何がハードルか。
[井坂]インターロックも技術のハードルが下がっていると思う。ICカードは鉄道の運転にも使われているほど信頼性が高い。価格も安くなっている。
[星野]誰でも差し込めるというという事から、なりすましがあるのではという心配がある。免許証の盗難による違法な使用もあるかもしれない。
[井坂]コストも安いし、事故時にカードが車体に残ればなりすましもバレる。
[榊原] ICカード免許証で無免許運転をインターロックする議論はされているのか。
[星野]飲酒インターロックの関係で聞いたことがある。技術的な問題はそろそろクリアできていると思うが、自動車メーカーの対応が出来ていないのかもしれない。あいまいで申し訳ない
が。
[榊原]違反がひどい人の免許更新を厳しくできないか。違反の多いのは決まった(限られた)人だと思うので。高齢者の自主返納は進んでいると思うが。
[星野]公共交通機関へのシフトが大事だと思う。札幌では路面電車をつないだことで利便性が上がって、高齢者でも運転しなくていいようになったと聞く。自治体や交通事業者の取り組みも重要だと思う。
[足立]先ほど警察庁も事故削減が第一という趣旨のことを言っておられた。インターロックのように一部に課題(なりすまし)があるとしても、有効性のあるものはいろいろ取り入れて、少しでも違反を減らしてほしい。
面談終了
警察庁の星野氏が最初に断っておられるように、警察庁の各担当者が同席したわけでは無いので、今回はこちらからの要望を星野氏に代表して聞いて頂くという形となりました。
直接担当の方に回答を聞きたかったところではありますが、相手方の都合もあり、ありのままを担当の方に伝えて頂くということで了解しました。
星野氏には無理に回答して頂いた部分もあると思います。この面談報告内容の責任は全て当方にある事をお断りしておきます。
今後とも警察庁には、継続的に面談の機会を作っていただけることを期待します。