「交通事故削減のための運転免許制度等への要望」を警察庁等へ送りました。

交通事故削減のための運転免許制度等への要望

2026年1月15日

警察庁長官 楠 芳伸 殿

クルマ社会を問い直す会  
共同代表 青木 勝 足立礼子                            https://kuruma-toinaosu.org/
group@kuruma-toinaosu.org

私どもは、交通事故をはじめクルマ社会の問題を考え、交通弱者の安全が最優先に守られ、だれもが平等に移動できる交通社会の実現を願って活動をしている全国市民団体です。
交通事故は、関係省庁のご尽力により半世紀前と比べれば大きく減っていますが、令和6年も30日以内死者は3,221人、重傷者は2万7,285人にのぼり、第11次交通安全基本計画の数値目標(令和7年までに30日以内死者数を2,400人以下、重傷者数を22,000人以下にする)の達成も危ぶまれています。しかも、死者・重傷者の半数は歩行者・自転車利用者という力学的に圧倒的弱者であるという現実も長く続いており、人口の高齢化の進行とともに高齢歩行者の死傷被害も増えています。このような命と健康の著しい侵害が長年続いている現状は、憂慮すべき事態です。

第11次交通安全基本計画が掲げる「道路交通の安全についての対策」の8つの柱のうち、「2.交通安全思想の普及徹底」「3.安全運転の確保」「5.道路交通秩序の維持」に密接に関わるのは運転者の資質と意識です。死傷事故の現状を当事者の原因で見ると、大半は安全運転義務違反などの道路交通法違反によるものです。不注意のみならず、速度超過やスマホ見ながら運転、飲酒運転などの利己的で確信的な違法運転、また、ペダル踏み間違いなどの基本的操作ミス、体調管理不備による事故等も頻発しています。
自動車は一瞬の不適切な操作が人を死傷させる危険に直結することから、国は安全対策として運転免許制度という国家資格制度を設けていますが、これほどずさんな運転による事故が多い現状は、今の制度に問題があると言わざるを得ず、その見直しは避けて通れません。警察庁自体も、20 歳で普通免許を取得した者が70歳まで運転技能や知識のチェック体制もない現実を「空白の50年問題」として認識していると聞きます。

運転者に起因する事故を減らすには、「人間は間違いを起こす」「人間は自己中心的になりやすい」「心身状態は変化する」という現実をふまえた、繰り返しの対策強化が不可欠です。
その観点から、最低限必要と思われる対策を以下に要望いたします。前例はなくとも実施すれば全ての道路利用者の安全に寄与し、道路交通の円滑化、事故処理や医療等にかかる膨大な社会的費用の削減にもつながります。なにより人命尊重の理念と長期的展望に立ち、前向きにご検討いただきたく、お願い申し上げます。

【対策要望項目】

■要望1:運転免許更新時に、初回更新者講習対象者、違反運転者講習対象者、一般運転者講習対象者、および高齢者について、講習ではなく試験を実施してください。

1-1:運転歴が浅い者、10代~20代前半は事故を起こす者の割合が高い(*1)ことが知られています。また、交通違反・事故を起こす回数が多い者ほど違反・事故を繰り返す率が高いことが指摘されています(*2)。現在、運転免許の更新の際は、講習と視力等の適性検査を受けるだけで更新できますが、事故抑止の観点から、初回更新者講習対象者、・違反運転者講習対象者・一般運転者講習対象者については、試験(筆記および実技)を導入してください。それにより、対象者だけでなくすべての運転者の遵法運転、安全運転意識が大きく向上することが期待できます。
(*1)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00130002
(*2)https://www.jsdc.or.jp/Portals/0/pdf/library/research/news/no_28.pdf
https://www.itarda.or.jp/contents/465/info73.pdf

1-2:現在70~74歳、および75歳以上で認知機能検査合格者には高齢者講習が義務づけられていますが、講習時に信号無視や深刻な操作ミスなど危険な運転が多くみられるにもかかわらず、試験ではないため注意に留まり、危険が野放し状態です。高齢になると身体機能全般の低下速度が速くなることも考慮し、「70歳以上の高齢者には1年毎、少なくとも2年毎に筆記試験と実技試験と運動機能テストを導入」を要望いたします。実技試験では駐車スペースへの駐車など高齢者に多い事故の場面も取り入れてください。運動機能テストでは、足の筋力や体の柔軟性、バランス能力などの測定を導入してください。これらは、内閣府が「運転に必要な能力」として維持増進のための体操を紹介しているものです(*3)
(*3)https://www8.cao.go.jp/koutu/kyouiku/pdf/elderly_drivers-p.pdf

1-3:外国人の運転免許切り替え者に対しても1-1、1-2を適用してください。また、ジュネーブ条約等による国際運転免許証保持者に対しては、自動車教習所で日本の交通標識やルールを学ぶ特別講習制度を設け、受講を強く推奨してください。

■要望2:身体機能や健康状態に関する適性検査を強化してください。

2-1:自動車の運転は90%が視覚情報に基づくとされ、安全運転に正常な視覚機能は欠かせません。人は加齢とともに緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症など、視覚異常症状(視野欠損など)を伴う病気の発症率が高くなり、病気がなくても動体視力や夜間視力が低下しやすくなります。また、緑内障は40歳以上の5%が罹患しているとみられ、この病気で視覚障害のある運転者の6割は運転中に症状の自覚がないと報告されており、事故リスクの高さが指摘されています(*4)。その点をふまえ、40歳以上から、運転免許取得時および更新時には、視力・水平視野・色彩識別検査のほか、眼底検査・上下視野・動体視力・夜間視力・深視力の検査を、医療機関で受けることを義務づけ、各検査の運転可能な基準値を専門家の協議で定めてください。
眼の動きから運転能力を測定する装置(*5)も開発され、有効と聞きますが、どの検査であれ、対象者全員に義務づけしなければ真の事故抑止にはなりません。その点をご理解いただきご検討ください。
(*4) https://www.inouye-eye.or.jp/news/20250120/
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/seminar2022_002.pdf
(*5)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000145113.html

2-2:免許の取得・更新申請時には、一定の病気等の症状に関する「質問票」の提出が義務付けられていますが、病気への自覚不足による申告漏れや虚偽申告もあります。病気による事故は重大な結果を招きやすいことから次の対策を講じてください。
a)申告漏れや虚偽申告に対する罰則をより強化する。
b)免許取得者の症状を知る医療関係者、家族、同居者が運転に危険、不安を感じた場合、公安委員会へのすみやかな届け出を義務づける(現在は医師の届け出制度があるが任意で義務ではない)。
c)該当する病気があるが運転可能と判断した者については、運転免許証にその印を入れ、本人、家族、警察官が認識しやすいようにする。
ⅾ)該当する病気があるが運転可能と判断した者については、病態により半年~2年ごとに専門医の診断書提出を義務づけ、その都度運転の実技試験を実施して、許認可を判断する制度を導入する。

2-3:病気の中でも患者数の多い糖尿病で、「インスリンや低血糖をおこす恐れのある薬剤を服用している者」に運転を許可する場合、重大事故を防ぐため、次の対策も講じることを強く要望します。
a)低血糖が運転に及ぼす危険や運転中の低血糖予防策を説明した啓発用のパンフレットや動画(*4)を作成し、免許取得時、上記(2-2-d)の実技試験実施時に視聴を義務づける。
b)運転の前および運転中1時間毎の血糖値測定を義務づけ(断続的に運転する場合も同様)、測定数値が100㎎/dl未満の場合は運転を禁止させることを義務づけ、違反した場合の罰則を設ける。
(*4)啓発用パンフレットや動画は、警察庁と薬剤メーカー、日本糖尿病学会などによる協議で作成してください。パンフレットの参考として本会の糖尿病専門医が患者用に配布している物を添付します。なお、てんかんや睡眠時無呼吸症候群、緑内障などについても啓発用パンフレットや動画を作成し、活用してください。