公開質問

衆議院選挙にあわせ政党に問う

投稿日:2003年11月8日 更新日:

 衆議院選挙の機会に、政党7党に向けて6項目のアンケートを実施しました。回答の可否と、回答の内容について取り急ぎお伝えいたしますので、投票のご参考になれば幸いです。次のような結果となっています。

回答の状況

回答あり

日本共産党・社会民主党・民主党・保守新党

 急な質問書送付にも関わらず、4つの党から回答をいただきました。日本共産党・社会民主党・民主党は6項目へ全て回答をいただきました。保守新党は総論の簡単な内容でした。

回答なし

公明党・自由民主党・みどりの会議

 3つの政党からは特に連絡がありませんでした。

質問状

各政党総裁、党首、代表、委員長、政策責任者 殿

クルマ依存社会の見直しに関する政策質問書

2003年10月31日
クルマ社会を問い直す会

前略

 11月9日投票の衆議院議員選挙に向けて、以下の書類を提出させていただきます。この書類は、この選挙に取り組んでおられる政党様にお送りいたします。

1.本質問書 2頁
2.返信用封筒
3.当会発行冊子最新号

 自動車は、移動能力や運搬能力が弱い人間にとって、ドアツードアの利便性や輸送能力のある文明の利器であり、大きく普及してきましたが、それがもたらすマイナス面を制御する適切な施策が取られなけらば、利器は迷惑物や凶器に転じます。日本は世界有数の自動車社会に成長した結果、人間が安全に暮らすという最低限度の権利さえ日常的に侵害されているのが現実です。私たちはこの歪みを正し、人間が賢明さを持って自動車を活用できる社会をめざして、自動車中心でなく、人間中心の交通政策、道路政策を求めて8年前に発足し、運動をつづけている市民団体です。会員は、北海道から沖縄県まで全国各地に居住する400人です。

 選挙の準備でお忙しい中とは存じますが、今回の質問書書について、そのご回答をはじめ、御部署・御団体で交通問題に向けて取り組まれていることの紹介など、お返事をいただけますと幸いです。ご回答の有無・時期・内容は、当会会員の投票の参考にさせていただくと同時に、報道機関などを通じ一般の方にも紹介し、投票の参考とさせていただきたく考えております。急なお願いにて恐縮ですが、11月6日頃までにお返事いただけますと幸いです。

 なお電子メールと郵便にて同じ内容を送らせていただきました。お返事は、メール・FAX・郵便、いずれでいただきましてもありがたく思います。

 また、同封いたしました定期刊行冊子について今後もお読みいただける場合は定期的に寄贈させていただきたく考えておりますので、その点もご希望を連絡いただけますと幸いです。

クルマ依存社会の見直しに関する政策質問書 質問内容

1.交通安全対策について

 交通事故の被害者が多数に上る状況です。人命は一つ一つが大切であるという視点から見て、現在の交通安全対策が、適切であるとはとうてい言えないと私たちは考えています。貴党のご見解と交通安全政策をお聞かせください。

2.歩行者の安全確保について

 超高齢化社会を迎え、高齢者の歩行の安全を保障することや障害者のノーマライゼーションが必要です。また、子どもたちが屋外で伸び伸びと遊ぶことも健全な発育にとって必要です。一方、日本では歩行者・自転車利用者、中でも高齢者の交通事故被害者が多い状況です。自動車の進入禁止区域を増やすこと、スピードの抑制機構、歩道の拡大、狭い道路の一方通行化など、歩行者優先の区域を拡大すべきと私たちは考えています。この点について貴党のご見解と、政策への適用予定をお聞かせください。

3.交差点の安全対策について

 幹線道路の交差点は、歩行者が非常に多く事故に遭うため、特に対策が急がれる場所です。鉄道の踏切に見られるような「遮断機」を降ろす設備を、横断歩道に沿って(クルマの前に)設けることが理想ですが、当面は原則として分離信号を導入するなどの物理的対策が必要と考えます。これらについての貴党のご見解、または交差点の交通事故防止策をお聞かせください。

4.公共交通の再生について

 世界で屈指の鉄道網を有していた日本が、無原則なクルマ社会化の結果、鉄道の地方路線が次々と廃止され、沿線地域の生活条件の悪化・地域社会が荒廃や崩壊する例があります。公共交通が廃止・減便された地域では、お年寄りや病人、子どもたちなど、自動車の運転をしない人たちは日常生活が困難となります。公共交通である鉄道・路面電車・バス路線網の再生、整備が必要と考えますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

5.大気汚染被害について

 無原則、無制限な自動車走行は道路近隣の住民に深刻な健康被害をもたらします。東京大気汚染公害裁判などでは、行政や自動車メーカーの責任が問われています。自動車走行量の制限について、貴党の政策をお聞かせください。

6.道路建設計画について

 日本では、狭い国土に高速道路・主要幹線道路が数多く存在します。今後の自動車道路の建設計画については見直しが必要で、また自動車の総量規制が必要と考えますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

以上。

回答結果

 以下に、質問内容に続けて、4つの党から届いた回答を示します。回答は、改行や字体は変えてありますが、回答タイトルや段落なども含めて、原本にできるだけ忠実に入力しました。誤字脱字と思われる箇所もありましたが、そのままにしてあります(速報のため校正は1回としており、入力ミスも多少あるかと存じますがご容赦ください)。

日本共産党からの回答

1)交通安全対策について

 交通事故の被害者が多数に上る状況です。人命は一つ一つが大切であるという視点から見て、現在の交通安全対策が、適切であるとはとうてい言えないと私たちは考えています。貴党のご見解と交通安全政策をお聞かせください。

回答

 2002年の交通事故死者は8326人、死傷者は117万6181人と、大変深刻で心痛む事態が続いています。政府のような、あいまいな姿勢と目標ではなく、交通事故の死傷者を大きく減らしていく長期目標と、そのための段階ごとの計画をきちんと持つことが重要です。またモータリゼーション政策の見直しなど、クルマの総量を抑えることも必要です。日本共産党はかねてから、人命尊重がなにものにも優先されるべきであるとの立場にたった交通安全対策と交通安全施設整備・充実、二重三重の安全対策を求めています。

2)歩行者の安全対策について

 超高齢化社会を迎え、高齢者の歩行の安全を保障することや障害者のノーマライゼーションが必要です。また、子どもたちが屋外で伸び伸びと遊ぶことも健全な発育にとって必要です。一方、日本では歩行者・自転車利用者、中でも高齢者の交通事故被害者が多い状況です。自動車の進入禁止区域を増やすこと、スピードの抑制機構、歩道の拡大、狭い道路の一方通行化など、歩行者優先の区域を拡大すべきと私たちは考えています。この点について貴党のご見解と、政策への適用予定をお聞かせください。

回答

 近年、交通事故被害で高齢者の割合が極めて高くなっており、高齢者をはじめ、子どもたちや障害者などに安全で安心できる道路交通社会をつくることが喫緊に課題となっています。歩行中・自転車乗車中の事故を減らすためには、人と車の分離を徹底することが重要です。そのために、住宅地や商店街への車両進入規制の拡大、スピードの抑制、歩道の拡大、狭い道路の一方通行化など、歩行者優先の考え方で整備することです。また障害者が使いやすい歩道づくり、車イスで歩ける街づくりに力をいれる必要があります。

 政府自身、交通事故死者を半減させた教訓として、「安全施設の整備の量的拡大と投資効果の大きさをあげることができる」(1987年度交通安全白書)とのべています。国や自治体の道路投資の重点を、大型公共事業の高速道路などから交通安全施設の整備に転換することこそ求められています。

3)交差点の安全対策について

 幹線道路の交差点は、歩行者が非常に多く事故に遭うため、特に対策が急がれる場所です。鉄道の踏切に見られるような「遮断機」を降ろす設備を、横断歩道に沿って(クルマの前に)設けることが理想ですが、当面は原則として分離信号を導入するなどの物理的対策が必要と考えます。これらについての貴党のご見解、または交差点の交通事故防止策をお聞かせください。

回答

 日本共産党としては、交差点の安全対策には次のことが必要だと考えています。

  • 歩行者が安心して渡れる交差点にするため、スクランブル方式や、歩行者と右・左折車の分断など、交差店内での歩行者と車の完全分離。
  • お年寄り、こども、障害者が青信号なら安心して横断できる特別の対策(信号の時間その他を含む)。
  • 立体交差店の整備や交差点の構造の改良。
  • 関係交通安全施設の整備。
  • 住民の要求に誠実に答えるための体制、組織の整備。

4)公共交通の再生について

 世界で屈指の鉄道網を有していた日本が、無原則なクルマ社会化の結果、鉄道の地方路線が次々と廃止され、沿線地域の生活条件の悪化・地域社会が荒廃や崩壊する例があります。公共交通が廃止・減便された地域では、お年寄りや病人、子どもたちなど、自動車の運転をしない人たちは日常生活が困難となります。公共交通である鉄道・路面電車・バス路線網の再生、整備が必要と考えますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

回答

 わが国では、1960年代以降の政府のモータリゼーション政策の展開のなかで保有自動車台数が著しく増加する一方で、鉄道やバスなどの生活路線としての公共交通機関が次々と切り捨てられてきました。また、保有自動車台数の増加と比例して交通事故も増加しています。
 日本共産党は、早くから政府のモータリゼーション野放し政策を批判し、公共交通機関の整備をすすめ、車の総量を抑えることなしに交通事故の減少はありえないと主張してきました。
 さらに車の増加は、交通事故にとどまらず、環境問題を引き起こし、お年寄りや病人、子どもたちなど交通弱者の移動の自由を大きく阻害しています。この意味からも、鉄道、電車、バスなど公共交通機関の役割をきちんと認識し、その利便性を高め、安くて安心な交通機関として発展させます。

5)大気汚染被害について

 無原則、無制限な自動車走行は道路近隣の住民に深刻な健康被害をもたらします。東京大気汚染公害裁判などでは、行政や自動車メーカーの責任が問われています。自動車走行量の制限について、貴党の政策をお聞かせください。

回答

 西淀川、東京など各地の大気汚染訴訟判決では、健康被害と自動車排ガスとの因果関係を認めました。判決は、健康被害が予見できたにもかかわらず、自動車にまでディーゼル化をすすめたことなど、自動車メーカーに社会責任上問題があったことも指摘しています。現在も被害者は増え続けており、判決をふまえ、新たな措置をとることもふくめて、すべての被害者の迅速な救済を国・自治体にもとめます。メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化するよう要求します。使用中のディーゼル車の汚染物質除去装置をメーカーが開発して社会的責任をはたすよう要求します。

 ディーゼル車の排ガス規制がはじまりましたが、都心地域や住宅地での幹線道路の建設や、郊外から自動車が流入する幹線道路の建設が進められており、大気汚染の解決のためには、まちづくりの面からも自動車交通量の規制が不可欠です。自動車交通量の規制のために、ノー・カーデイの実施、パーク・アンド・ライド方式の導入、路面電車の活用・復活など、条件にあった多様な方法を追及します。

6)道路建設計画について

 日本では、狭い国土に高速道路・主要幹線道路が数多く存在します。今後の自動車道路の建設計画については見直しが必要で、また自動車の総量規制が必要と考えますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

回答

 日本共産党は、年間50兆円にものぼる巨額の公共事業の大盤振る舞いを批判してきました。なかでも道路建設はその典型の一つです。道路建設は、公共事業に占めるシェアが大きいだけでなく、揮発油税、自動車重量税など6兆円にのぼる道路特定財源など、公共事業を自動的に膨張させる「仕組み」があります。ムダと環境破壊の大型公共事業をやめさせると同時に、特定財源制度を廃止して一般財源化し、年金など社会保障や環境対策、暮らしに活用します。公共事業は、福祉・暮らし型を中心に切りかえ、道路建設は生活道路中心に必要な予算を配分するように改革し、街づくりや環境などとの両立を基本にすべきです。

 自動車の総量規制は、道路建設計画はもとより、大気汚染対策でも交通安全対策でも公共交通の再生のうえでも大事なことです。

日本共産党のHP

社会民主党からの回答

1.交通安全対策について

 交通事故の被害者が多数に上る状況です。人命は一つ一つが大切であるという視点から見て、現在の交通安全対策が、適切であるとはとうてい言えないと私たちは考えています。貴党のご見解と交通安全政策をお聞かせください。

回答

 あらゆる人の交通権の保障、すべての人が利用しやすい交通バリアフリーの実現、環境にやさしい交通、安全で快適な交通、地域生活交通の確保が社民党の交通政策の基本です。

 20世紀の行き過ぎた「クルマ社会」は、激増する交通事故、慢性化する交通渋滞、大気汚染・騒音等の交通公害といった社会的外部負経済をもたらすとともに、交通弱者の移動の権利を奪ってしまいました。さらに交通分野の規制緩和が追い打ちをかけ、憲法に保障された幸福追求権、居住・移転の自由、生存権に立脚する「移動の権利」が画餅と化しています。21世紀を人間優先の社会とするため、社民党は、誰もが、いつでも、どこからでも、どこへでも、安全、安心、平等、快適に移動できる権利としての、新しい人権「交通権」を保障することを交通政策の基本とし、そのためにも公共交通の充実が必要であると考えます。特に弱い立場にある人たち、高齢者・障害者・子どもの移動の自由を保障することが必要です。

 高齢社会に対応する交通システム、限られた資源、地球環境を守る交通が求められており、「クルマ社会」の行き過ぎを転換し、公共交通を基盤に置いた人と地球にやさしい総合交通体系の確立を目指します。

2.歩行者の安全確保について

 超高齢化社会を迎え、高齢者の歩行の安全を保障することや障害者のノーマライゼーションが必要です。また、子どもたちが屋外で伸び伸びと遊ぶことも健全な発育にとって必要です。一方、日本では歩行者・自転車利用者、中でも高齢者の交通事故被害者が多い状況です。自動車の進入禁止区域を増やすこと、スピードの抑制機構、歩道の拡大、狭い道路の一方通行化など、歩行者優先の区域を拡大すべきと私たちは考えています。この点について貴党のご見解と、政策への適用予定をお聞かせください。

回答

 クルマ社会の進展は、急激な交通事故の増加を招き、死傷者の激増をもたらしました。まず歩行者と車が同じ道を通行することが事故の大きな要因の一つですから、歩車道の完全分離を推進するとともに通行区分の明確化を徹底します。またスクールゾーンの増設やコミュニティ道路の充実を図っていきます。交差点における歩行者優先の原則を徹底するとともに、「人にやさしい」視点で歩行者安全策を追求します。あわせて踏切の歩道設置や、踏切への点字ブロック設置を進めるなど、人にやさしい踏切にします。

 次に自転車事故や歩行者への傷害事故を防止するため、非常に遅れている自転車道の整備や自転車通行帯の充実を推進します。車対車の事故防止のためには、道路標識や信号機の改善を図るとともに、自動車構造のいっそうの向上を進めるため構造基準の強化を図ります。また、交通安全教育のいっそうの推進や、自動車教習の強化など運転者対策も充実させます。

 各省庁の連携を強化するとともに、自治体が独自に交通実態にあった交通安全行政を行なえるよう追求します。歩道の段差の解消、電柱の地中化、歩道橋や地下道への小型エレベーターの設置を推進します。

3.交差点の安全対策について

 幹線道路の交差点は、歩行者が非常に多く事故に遭うため、特に対策が急がれる場所です。鉄道の踏切に見られるような「遮断機」を降ろす設備を、横断歩道に沿って(クルマの前に)設けることが理想ですが、当面は原則として分離信号を導入するなどの物理的対策が必要と考えます。これらについての貴党のご見解、または交差点の交通事故防止策をお聞かせください。

回答

 歩車道の完全分離を推進するとともに通行区分の明確化を徹底し、スクールゾーンの増設やコミュニティ道路の充実を図っていきます。交差点における歩行者優先の原則を徹底するとともに、信号機の高度化を進めるなど「人にやさしい」視点で歩行者安全策を追求します。踏切の歩道設置や、踏切への点字ブロック設置を進めるなど、人にやさしい踏切にします。自転車事故や歩行者への傷害事故を防止するため、違法駐車の禁止の徹底、自転車道の整備、自転車通行帯の充実を推進していくとともに、交通安全教育のいっそうの充実や自動車教習の強化などの運転者対策を進めます。交通事故被害者のケアを充実するとともに、事故調書の早期開示を検討します。

4.公共交通の再生について

 世界で屈指の鉄道網を有していた日本が、無原則なクルマ社会化の結果、鉄道の地方路線が次々と廃止され、沿線地域の生活条件の悪化・地域社会が荒廃や崩壊する例があります。公共交通が廃止・減便された地域では、お年寄りや病人、子どもたちなど、自動車の運転をしない人たちは日常生活が困難となります。公共交通である鉄道・路面電車・バス路線網の再生、整備が必要と考えますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

回答

①生活バス・サービスの維持
 モータリゼーションの進展で危機に瀕しているバス事業に、無謀な規制緩和が追い討ちをかけ、特に過疎地では路線の廃止や休止が相次いでおり、地方部では、住民の便利な「足」がなくなってしまうのではないかという深刻な問題がすでに出てきています。しかし、環境問題、高齢化問題、地域活性化、地域コミュニティの復興といった21世紀の豊かな社会づくりに必要な課題の解決には、自治体ぐるみの生活交通の再生がなくてはならないと考えます。生活交通は、人の自由な移動を通じて、文化を伝え、コミュニケーションを保障し、地域社会の活性化を生み出す重要な役割を果たしており、単に交通の問題ではなく、広く社会的な視点からの新しい発想と手法で考え、地域活性化・過疎対策の基本に、生活交通の維持が位置づけられるべきです。「公共交通は赤字でも福祉など他の分野で便益を生む」というクロスセクターベネフィットの考え方で、地方の生活バス路線やコミュニティバス、福祉バスへの財政措置を強化するとともに、自治体、住民、バス会社の三位一体の連携プレーで生活交通の維持を図ります。将来的には、道路目的財源の総合交通財源化を行い、バスの維持・復権のための財源を国・自治体の責任できちんと手当てすることを目指します。

②オムニバスタウン構想の推進
 バスの利便性向上、活性化を図るその利用を促進するため、魅力ある車両の導入や、バス停の高度化、バス専用レーンの拡充、情報案内システムや運行管理システムの整備を行いつつ、各省庁が連携してバスの多様な意義を十分に活かした街づくり(「オムニバスタウン構想」)を進めます。

③社会資本としての地方鉄道の維持
 規制緩和による地方鉄道の廃線計画が各地で浮上し、生活に密着した鉄道路線の維持が大きな問題となっています。地方鉄道を維持するため、「公共近距離輸送は生存配慮にかかわるので維持しなさい」というドイツの「地域における公共近距離旅客輸送に関する法律」にならい、「公共交通の根幹をなす鉄道を守る」立場に国・自治体の交通政策を転換させ、地域住民の生活路線であり、鉄道ネットワークをなす地方鉄道に対する補助制度を抜本的に見直すとともに、基盤保有と運行を分離する「上下分離」方式の活用を検討します。地域における公共交通の整備は、地域振興や雇用、市街地活性に効果があり、鉄道を地域住民の共同の社会資本と位置づけ、駅を拠点とした街づくり、アクセスや利便性の向上、駅周辺整備の推進や「ルーラルレイルウェイツーリズム」など、鉄道を核とした地域振興を進めます。

④路面電車の復権・再生
 人と環境にやさしい生活交通体系として、超低床車両を使用した新しい路面電車であるLRT(軽快電車)を強力に支援します。そのため、軌道・車両に対する税財政上の支援を拡充するとともに、軌道の専用化を進めます。また、歩行者専用のショッピングモールに公共交通を運行させた商業空間(トランジットモール)を広げ、街ににぎわいと魅力を取り戻し、「トランジットモデル都市」を目指します。

⑤地域交通委員会の設置・地域交通計画の策定
 バス、地方鉄道、路面電車等の地域の公共交通を守るため、「公共交通の確保および経営調整に関する特別措置法」(仮称)を制定するとともに、住民の移動の権利、自治体の交通政策に関する責務等を規定する「地域公共交通基本条例」(仮称)を制定します。また、国の持っている交通行政の権限を自治体に移譲し、地域交通に対する自治体の決定権を拡充することで、住民・利用者の声を交通政策に反映されるようになります。交通問題に関する自治体間の協力や広域連合制度の活用を進めます。生活交通維持のための「地域協議会」を地域の関係者が一体となって交通問題を考える場とするため、利用者、住民、交通労働者も参加するように働きかけます。地域のあるべき交通の姿を地域交通計画として策定します。将来的には「地域交通委員会」への発展を目指します。

⑥公共交通としてのタクシーの支援
 規制緩和政策によって需給アンバランスと、渋滞、運賃破壊、労働強化が進めんでおり、需給の適切なコントロールや働きやすい環境作りを求めます。タクシーの運転者資格制度の創設やタクシー適正化事業実施のための機関の設置を検討します。駅前タクシー乗り場やタクシーベイの整備を進めます。なお、高齢者・障害者等に対する福祉輸送の需要が増加していますが、道路運送法の例外適用が拡大し、安全輸送を担保する2種免許の取得さえいらないかのような状況が作られつつあります。NPOやボランティア等の福祉移送であっても、安全輸送のための法的基準や一定の規制は必要です。道路運送法上の事業許可、乗務員の第2種免許取得義務づけ、介護保険とのかかわについて安全面の確保を重視しつつ改善を求めることとし、福祉タクシー事業の推進とあわせて対応します。

5.大気汚染被害について

 無原則、無制限な自動車走行は道路近隣の住民に深刻な健康被害をもたらします。東京大気汚染公害裁判などでは、行政や自動車メーカーの責任が問われています。自動車走行量の制限について、貴党の政策をお聞かせください。

回答

①交通需要マネジメントを推進し、自動車の都心部乗り入れ規制や台数割当制度、ロードプライシングを導入するなど、中心市街地の自動車の総量規制に踏み出すとともに、パーク・アンド・ライドなど自動車・自転車と生活交通の連携を進めます。不要なマイカーの利用を抑制するため、公共交通を利用しやすくするようにするとともに、カーシェアリングを検討します。違反駐車防止条例の制定を推進します。

②クリーンな乗り物である自転車の活用を進めていくため、非常に遅れている自転車道や自転車通行帯、自転車駐輪場の整備を推進するとともに、サイクル・アンド・バスライドや生活に密着した循環型自転車活用制度(レンタサイクル)を広げます。

③物流の効率化、環境対策を推進するため、幹線物流における貨物鉄道輸送や内航船舶輸送の強化、各交通機関相互のアクセス向上、共同配送拠点の整備を進め、自動車輸送からの移転(モーダルシフト)を促進します。なお高速道路の無料化は、受益者負担のあり方からみて不公正であるだけでなく、温暖化対策や騒音・大気汚染対策、公共交通の利用促進といった交通政策に逆行するなどの問題があります。コンテナ貨物輸送力の増強など貨物鉄道に対する支援措置を強化します。

④さらにハイブリッドバスや電気自動車、CNG車等低公害バスの導入を推進します。また条件に応じてバスのトロリー化を検討します。

6.道路建設計画について

 日本では、狭い国土に高速道路・主要幹線道路が数多く存在します。今後の自動車道路の建設計画については見直しが必要で、また自動車の総量規制が必要と考えますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

回答

 基礎的社会資本整備が不十分な地域以外は、自動車道路の建設は環境や必要性の観点から見直すべきです。尼崎、名古屋南部、東京の各公害訴訟において、国と公団はあいついで敗訴しました。とりわけ尼崎地裁は、ディーゼル車の総量規制に踏み込んだ判決を下し、名古屋地裁は、なんの対策もとろうとしない国の怠慢を厳しく指摘しています。排気ガスは大気を汚染して人の健康を蝕むばかりでなく、地球温暖化原因になっています。これらの判決をクルマ社会への警告だと受け止め、ディーゼル車の総量規制はもちろん、自動車総体の総量規制に踏み込むべきだと思います。

社民党のHP

民主党からの回答

1)交通安全対策について

 交通事故の被害者が多数に上る状況です。人命は一つ一つが大切であるという視点から見て、現在の交通安全対策が、適切であるとはとうてい言えないと私たちは考えています。貴党のご見解と交通安全政策をお聞かせください。

回答

 交通事故の実態を踏まえ、道路交通行政を見直していきます。地方警察官の増員により必要に応じて取り締まり体制を拡充します。また、財源を伴う地方分権の実施により、地域の状況により合致した交通安全対策がとれるようになります。

2)歩行者の安全確保について

 超高齢化社会を迎え、高齢者の歩行の安全を保障することや障害者のノーマライゼーションが必要です。また、子どもたちが屋外で伸び伸びと遊ぶことも健全な発育にとって必要です。一方、日本では歩行者・自転車利用者、中でも高齢者の交通事故被害者が多い状況です。自動車の進入禁止区域を増やすこと、スピードの抑制機構、歩道の拡大、狭い道路の一方通行化など、歩行者優先の区域を拡大すべきと私たちは考えています。この点について貴党のご見解と、政策への適用予定をお聞かせください。

回答

 高齢者、障害者、子どもを含め誰もが安心して歩けるよう、道路の安全性を確保すべきと考えます。4)で述べる交通基本法に従い、地域の状況に合わせて整備をすすめます。また、喫煙者のタバコによる子どものやけど事故などが起こったことから、人通りが多い道での危険な喫煙を禁止する歩きタバコ禁止法案も提出しました。

3)交差点の安全対策について

 幹線道路の交差点は、歩行者が非常に多く事故に遭うため、特に対策が急がれる場所です。鉄道の踏切に見られるような「遮断機」を降ろす設備を、横断歩道に沿って(クルマの前に)設けることが理想ですが、当面は原則として分離信号を導入するなどの物理的対策が必要と考えます。これらについての貴党のご見解、または交差点の交通事故防止策をお聞かせください。

回答

 地域の状況に合致した交通安全対策がとれるよう、検討していきます。

4)公共交通の再生について

 世界で屈指の鉄道網を有していた日本が、無原則なクルマ社会化の結果、鉄道の地方路線が次々と廃止され、沿線地域の生活条件の悪化・地域社会が荒廃や崩壊する例があります。公共交通が廃止・減便された地域では、お年寄りや病人、子どもたちなど、自動車の運転をしない人たちは日常生活が困難となります。公共交通である鉄道・路面電車・バス路線網の再生、整備が必要と考えますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

回答

 民主党は2002年6月に交通基本法案を国会に提出しました。法案には具体的権利としての異動に関する権利を明文化し、利用者の立場にたち、生活交通を維持するとともに、交通基本計画によって総合的な交通インフラを効率的に整備し、重複による公共事業の無駄遣いを減らし、環境負荷の少ない維持可能な社会の構築することを盛り込みました。こうした法律により、公共交通が再生できるものと考えます。(交通基本法案概要 http://www.dpj.or.jp/seisaku/syakai/BOX_SY0040.html

5)大気汚染被害について

 無原則、無制限な自動車走行は道路近隣の住民に深刻な健康被害をもたらします。東京大気汚染公害裁判などでは、行政や自動車メーカーの責任が問われています。自動車走行量の制限について、貴党の政策をお聞かせください。

回答

 大気の環境基準を速やかに達成できるよう、排出基準の強化や規制対象の拡大、経済的措置の導入などをはかっていくべきと考えます。すでに普及しつつある電気自動車に対する集中的助成、今後本格的実用化が見込まれる燃料電池車への支援を中心にして、環境にやさしい低公害車の普及・拡大をすすめます。モーダルシフトに※

※WWW掲載者注:この文章はここで終わっています。

6)道路建設計画について

 日本では、狭い国土に高速道路・主要幹線道路が数多く存在します。今後の自動車道路の建設計画については見直しが必要で、また自動車の総量規制が必要と考えますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

回答

 民主党は、高速道路を含む道路建設計画を大胆に見直し、本当に必要な道路のみを建設することとします。道路に特化された特定財源の存在は無駄な道路建設や財政硬直化の原因との批判が高まっていることから、この道路特定財源を廃止し一般財源化します。高速道路は一部大都市を除き無料化することで、今ある高速道路を有効利用します。また、日本道路公団・本州四国連絡公団を廃止します。

保守新党からの回答

【公開質問状】に対する回答
 現在の交通安全対策は、安全対策という狭い観点から見れば、良くやられていると考えます。問題は、運転する人、通行する人だけを見た安全対策には限界があるということであります。
 都市計画やそれに基づく道路整備計画などにおいて、道路そのものを拡張する、歩行者優先の区域を拡大する、車優先から鉄道等の公共交通を優先するなどの総合的な対策を講ずることが必要だと考えます。

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