清水真哉
今号では、歩車分離信号のスペシャリストである長谷さんが、分離信号の様々なタイプについて、判り易い解説を書いて下さいました。
警察が分離信号の導入を躊躇するのは、それが渋滞を引き起こすからだと言われています。しかし私が考えるに、そもそも自動車が便利な乗り物だという思い込みを疑う必要があります。
自動車、自転車、歩行者などがすべて平行して動いている限り、順調でしょう。しかしそれぞれ任意の目的地を持つ以上、交差は避けられません。歩行者だけなら互いに機敏に避(よ)けますが、不器用な自動車が加わると順番に止まって待たなくてはならないのです(ゆえに人のスクランブル交差点は可能で、自動車のスクランブル交差点はありえない)。意外と不自由な乗り物が自動車です。
その自分の弱点を、自動車は歩行者に付けを回すことで回避しようとしてきました。その最悪のものが歩道橋や道路横断地下道ですが、性質(たち)の悪いのが自動車歩行者混合信号です。そもそも歩行者だけなら信号など必要もなく、自動車があるから歩行者も信号というものを耐え忍んでいるのに、右折車左折車はその歩行者が青信号を渡るのを待つ辛抱もなく、自分たちにも信号を青にして早く走り出させろと我儘(わがまま)を言うのであり、それを認めたのが混合信号という危険物なのです。
子供たちに「青になるのを待ってから渡りましょう」と教えた後で、でも青でもクルマは横から来ますから気を付けましょうなどと諭すのは、二枚舌で恥ずかしいことなのだと大人は知るべきです。
私たちも、歩行者が堂々と渡っていい青信号なのに、右折左折を待つ自動車のために小走りで信号を駆け抜けたりする、そんな自動車への気遣いから早くおさらばしたいものです。
(2008年1月発行 会報第50号)