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危険運転致死傷罪見直しについての要望書を提出しました

投稿日:2023年11月11日 更新日:

昨今、法定速度を大幅に上回る速度で死亡事故を起こしても危険運転致死傷罪が適用されないことが問題となっており、自由民主党内に危険運転致死傷罪のあり方を検討するプロジェクトチームが発足されたため、座長である平沢勝栄議員に、以下の要望書を送付いたしました。

自由民主党
危険運転致死傷罪のあり方を検討するプロジェクトチーム
座長 衆議院議員 平沢勝栄 様

前略にて、失礼をお許しください。
私どもは、1995年に設立した全国市民活動団体です。交通事故をはじめとするクルマ社会のもたらす問題を考え、人の命を最優先にする安全な交通社会の実現を願って活動をしております。交通事故の被害者やご遺族も多く参加しており、被害者の方々の会とも交流をもちながら活動しております。
このほど、危険運転致死傷罪のあり方について、自由民主党内にプロジェクトチームが結成されると伺い、ぜひ私どもの思いもお伝えしたく、座長である平沢勝栄議員様に、要望書を送らせていただく次第です。失礼とは存じますが、ぜひご一読いただき、思いをご理解いただけますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

2023年11月6日

クルマ社会を問い直す会
共同代表 青木 勝
共同代表 足立礼子

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危険運転致死傷罪等の刑罰のあり方について、
交通事故削減の観点から望むこと

  • 危険運転致死傷罪の判断基準に、幅広い視点の導入を
    危険運転致死傷罪は悪質性や故意性がかぎとされますが、故意の実証は難しく、条文の解釈も曖昧で逃げ道が多いことが課題となっています。そのため、常軌を逸した違法行為が軽視されるという常識からかけ離れた判決が出されてしまいます。判断の際に、《加害者の運転の道路交通法と照らしての逸脱程度、それが招いた結果、加害者の事故前後および過去の運転や行動状況》等を判断基準として重視する方向で法の改正を検討していただきたいと思います。
    また、危険運転の類型が限定的で、「スマホながら運転」など該当しないものもありますが、その都度あとから類型を追加検討するのではなく、上述の《 》のような判断基準に照らしての柔軟な適用を検討していただきたいと思います。
  • 過失運転罪も見直しを――結果責任を重視した『違法運転致死傷罪』に
    現状では被害者が死傷させられた事故でも危険運転致死傷罪が適用となるのは0.1%と極めて少なく、大半は過失運転致死傷罪となっています。しかも、過失運転致死傷罪の84%は不起訴扱いで(令和4年版犯罪白書より)、裁判にかけられても大半は執行猶予付きで刑期も極めて短いという現実があり、そこにも被害者と遺族は強い疑問と不満を抱いています。
    重量と速度を有する自動車の運転は他者への加害の危険を伴いますが、社会生活上の有用性の観点から、安全への配慮を条件として使用が許されています。運転は、運転に伴う危険を制御し適切に操縦できる能力があると都道府県公安委員会が認めて運転免許証を付与され、かつ、道路交通法の定める遵守事項を守ることができる者だけに許される行為です。それに反する運転行為は「許されない危険」であり、それほどに自動車の運転は重大な責任を背負った行動です。
    しかし、戦後自動車の急増に伴って交通死傷事件が激増したため、「許されない危険」に対する刑法の検討もされぬまま応急的に過失(業務上過失)罪扱いとされ、1970年代には「国民皆免許」「くるま社会」の現実に合わせるべく業過事件の起訴率を大幅に減らすなど、寛刑化が著しく進みました(この動向は「平成5年版犯罪白書」に詳しく記されています)。どのような違法運転で人を死傷させても過失だから許そうという意識が蔓延し、それが違法運転を増長させてもきました。
    そうした中、被害者遺族から悪質で危険な運転への厳罰化を求める声が挙がり、危険運転致死傷罪ができたわけですが、現実には上記のように危険運転致死傷罪への適用が極めて少ない上に過失運転致死傷罪の刑が極めて甘いという現実に、強い疑問と「適切な処罰」を求める声が高まっています。突然命を奪われたり重度の障害を負わされたりした方やその家族の一生続く悲痛、苦しみに対し、加害者は何の咎も受けずに生きられるなら、法治国家といえるのでしょうか。
    今、危険運転罪の見直しと同時に求められているのは、過失運転致死傷罪を、「許されない危険」(違法性)の重さと「結果責任」の重さとをふまえた罪刑(仮称『違法運転致死傷罪』)に切り替えていくことであり、それは、運転者にハンドルを握る際の本来の責任を自覚させ、事故抑止にもつながるものです。ぜひこの点も併せてご検討をお願いいたします。危険運転致死傷罪は、仮称『違法運転致死傷罪』の中の特に悪質性の高いものとして位置づけるか、もしくは、一つにまとめてもよいと思われます。
  • 事故を起こさせない対策も、同時に検討してください
    交通事故の責任は加害者だけでなく、社会全体にもあります。国として、違法運転の取り締まりを強化するとともに、以下のような対策の強化も進めるよう、関係省庁への働きかけをお願いいたします。

    • 自動車の安全装備対策:ブレーキとアクセル踏み間違い防止装置、前方監視ドライブレコーダー、アルコールインターロック 、衝突被害軽減装置、速度遵守装置、免許証インターロック、ひき逃げ防止装置などは、国が装着を義務化しなければ装着は進まず、事故抑止につながりません。装着により自動車の価格が上がるとしても、安全最優先の視点で検討していただきたいと思います。
    • 運転免許資格基準の強化:免許更新期間を短くし、更新のたびに実技を含む再教育・再試験の実施を義務づける、健康診断を義務づける、高齢者の認知機能検査を厳しくし高齢者講習を試験化する、などの対策は、近年の事故の現状を見ると必須と思われます。
    • 道路の安全対策:信号増設、歩道・自転車道の増設、歩道のない道などの速度制限強化や一方通行化、などの安全対策も多くの国民から求められています。

 最後に、プロジェクトチームで検討されるにあたり、広く国民にヒアリングをしていただき、また、関係省庁よりパブリックコメントも実施していただきたく、その点も含めまして、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

以上

この要望の主旨に共感される方は、ぜひ個々人でも、国や政党にご意見をお送りください。
多くの方の意見が、大きな力になります。
よろしくお願いいたします。
首相官邸:
https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html

国土交通省(自動車関係安全対策):
https://www1.mlit.go.jp:8088/hotline/cgi-bin/u_hotline09061.cgi

自由民主党:
https://ssl.jimin.jp/m/contacts

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