公共交通の利用推進等のため、駐車料金のあり方の検討を求める要望
2024年2月21日
国土交通大臣 斉藤 鉄夫 様
クルマ社会を問い直す会
共同代表 青木 勝 足立礼子
担当世話人 小島 啓
私共は、クルマ依存社会の弊害(交通事故、移動の格差、環境汚染、温室効果ガス排出等)を問い、改善を求めて活動している全国組織の市民団体です。
このたび、公共交通の利用推進や持続可能で安全、公平な社会の実現のために、商業施設、公共施設、会社等(以下、施設等)の駐車場の料金のあり方の検討(無料や低額であることの見直し)を実施いただきたく、要望いたします。
【要望の理由】
◆無料や低額の駐車料金がクルマ依存と公共交通衰退を促進している
貴省では公共交通の推進を提唱されていますが、現実にはクルマ依存と公共交通の衰退は進む一方であり、それにより次のような問題を社会にもたらしています。
・交通事故増大
・温室効果ガスや大気汚染物質の排出増加
・エネルギー資源の浪費
・舗装した道路や駐車場によるヒートアイランド現象の深刻化
・道路渋滞悪化
・道路整備・維持費の増大
・都市中心部の空洞化
・移動困難者の増加
・高齢者の免許返納阻害、事故増加等。
そして、クルマ依存と公共交通衰退をもたらしている原因の1つに、施設等の駐車場の料金が、多くの場合、実質的に無料や低額であるということがあります。それにより、利用できる公共交通があってもその運賃の方が自動車使用時の費用より高くつくことが多く、自動車を選択したくなる動機の1つになっています(車の燃料費は、近年の大幅な燃費向上やEV化により長期的には大きく低下しています。詳細はこちらをご参照ください→https://kuruma-toinaosu.org/20230730meeting/)。
◆駐車場非利用者にとって費用負担が不公平
施設等の駐車場の料金が無料や低額であることは、駐車場利用者だけ駐車料金を値引きして優遇していることになると共に、駐車場の建設・維持・管理費用は施設使用料や物品の販売価格に上乗せされ、駐車場を使わない施設利用者からも間接的に徴収していることになるため、公平性の点で大きな問題であると言えます。
◆各法規の趣旨やSDGs の目標に反する
駐車場料金が無料や低額であることはクルマ依存と公共交通衰退を助長しているため、貴省が進めている「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」に基づく「都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく駐車施設の集約化事業」や、「都市再生特別措置法」に基づく「まちなかウォーカブル推進事業」、「交通政策基本法」、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」等の趣旨(交通の環境負荷低減、安全・快適な歩行環境創出、公共交通の確保・利便性向上等)に反しています。その上、SDGsの目標11-2(安全で安価な公共交通機関の整備)、目標 3-6(交通事故死傷者の低減)、目標13(気候変動対策)にも反しています。
◆他の施設利用者の安全を脅かすと共に、地域の集客力を抑制
駐車場料金が無料や低額であることにより多数の駐車場が必要となっており、複数の施設が隣接している地域においては、駐車場スペース確保の結果、施設間の距離が離れることになったり、駐車料金の割引が他施設では使えないこと等により、他の近隣の施設へ移動する都度に駐車場からの車の出し入れが生じ、歩道や自転車レーンと交錯する通行が頻発します。これが、歩行者や自転車利用者など他の利用者の安全を脅かし、まちの魅力を減退させ、地域の集客力を抑制する要因となっています。
【問題解決のための具体的要望】
以上のことから、次の対策を要望いたします。
【1】商業施設、公共施設、会社等の一時利用駐車場において、駐車場利用者と非利用者に、駐車場の建設・維持・管理費等に基づく適正な費用の差を設ける。具体的な実施方法は状況により異なると思われますが、例として下記が考えられます。
・商品価格や施設利用料等に上乗せされている駐車場料金を分離し、駐車場利用者だけから直接徴収する。
・駐車場を使用しない施設利用者に対し、駐車料金に相当する額の還元や特典付与を行う。
【2】大規模施設の責任者は、公共交通でのアクセスを良くする方法について、公共交通事業者や自治体と協議を行い、積極的な支援協力(広報、費用支援等)を行うことを義務づける。
【3】施設責任者は、自転車利用者の利便性向上のため、必要十分な容量の駐輪場を施設入口近くの利便性の良い場所に設けることを義務づける(道路上スペースの利用も自治体と共に検討する)。
なお、【1】により駐車料金等が上昇し、車利用者の費用負担が増加する可能性があるため、車の利用が必要な低所得者や障害者等の弱者に対する社会保障給付の増額等、救済策も、関係省庁とご検討いただくことを要望いたします。
また、上記対策により公共交通のニーズが増加して採算性が改善するため、路線新設や運行本数増便等、公共交通の整備・拡充を同時に推進することも強く要望いたします。
以上の対策を実施することにより、国民に、地球環境改善や持続可能な社会作りのために自動車の使用を控えて電車やバスや自転車を使おうという動機が生まれ、公共交通の活性化や安全なまち作りの実現に近づけることができます。それは先進国の務めでもあります。
また、貴省では「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」に基づく「都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく駐車施設の集約化」事業において、非効率な自動車の都市内移動の低減によるCO2 排出量の削減、安全・快適な歩行環境の創出、自動車交通の減少によるバス等の公共交通機関の運行の円滑化などを目指し、「まちなかウォーカブル推進事業」では居心地が良く歩きたくなるまちなかの創出を推進されています。本要望提案はそれら事業の理念にも沿い、事業を後押しする力になると考えておりますので、ぜひ前向きなご検討をお願いいたします。
また、関係者様のお考えを詳しく伺いたく、懇談の機会を設けていただけると幸いです。お忙しいとは存じますが、オンラインでも構いませんので、ご検討をいただけますよう、よろしくお願いいたします。
※3月15日までに、ご回答を上記のメールアドレス宛へお願いいたします。懇談の日時、場所、方法等についてご希望を記していただければと存じます。懇談いただけない場合は、文書にてご回答をお願いいたします。
なお、ご回答内容については、当会ホームページ等で公開することをご了承ください。ご不明な点は、上記連絡先までお問合せをお願いいたします。 |