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最近思うこと(3)

投稿日:2024年9月16日 更新日:

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④グランドデザイン  ~市民の健康とコミュニティ、社会性を育てるために~

私は膝に痛みがありますが、中距離、長距離の外出時は予防のために膝にサポーター、腰にコルセットを付けて、歩きや自転車やバスで駅まで行き、鉄道に乗り、バスに乗り換えて、今は何とか自立的に移動しています。だから、乗り換え時に駅のロータリーやバス待合スペース、バス停に椅子やベンチがあったらいいなと度々思います。私より大変そうで、辛そうな方もお見かけします。バスを待つ時、ベンチや椅子があれば、一息ついてちょっとおしゃべりもできて、爽やかな気持ちで次に向かえます。鉄道駅の整備は隔世の感があるほど進み、私は助かっていますが、バスへの乗り換えや公共施設、周辺の商店へのアクセスについての意識はまだ拡がっていません。高齢者だけでなく、若者も子どもも、クルマを使わず公共交通で、安心して、楽に、気持ちよく街に出かけられるようになればよいな、と思うのです。私の勘違いかも知れませんが、それが街の価値を高める「グランドデザイン」だと思います。

地域の足を担っているバス事業は、運転手不足や利用者の減少で経営に苦慮しているようです。そんな中ですが、鉄道会社が鉄道利用者のために想像力を働かせて、駅周辺にベンチを設置するのはいかがでしょう?既に実施している自治体もあるようですが、コミュニティバスがない地域に民間委託でミニバスを走らせるのも一案と思います。公共の移動手段を鉄道会社、バス会社、タクシー会社などと行政が連携して、時には大きなスーツケースや重い荷物を持って移動する市民や観光客を応援してほしいと思います。市民にとって、交通、移動の便利さは生活の質を左右する大きな要素です。移動サービスの充実は生活の質を上げるだけでなく、わが街への愛着、わが街の満足度と価値を確実に高めると思います。

⑤生活道路  ~クルマに優先権を与えない~

物流の根幹である高速道路や幹線道路については、クルマなしの生活を貫いていますので、分かりません。でも命を最優先とすれば、日本の生活道路の概念を変えなければなりません。2026年9月から生活道路の時速制限が60kmから30kmに変更されることが閣議決定されたそうです。私はすごいことだと喜んだのですが、その生活道路という規定が曲者なのでした。私の感覚で考える生活道路ではないのです。「中央分離帯及び中央線がなくて、しかも幅が5.5メートル以下」という規定があるのです。道は続いていて、線ですが、面と捉えることが大事と思います。住宅が密集する地域では幹線道路以外は生活道路ゾーンにして、時速30kmの速度制限にする方向をなぜ、目指せないのでしょうか?
そこで思い出したのは、会員である今井博之氏の研究と寄稿です。特にこども環境学会での報告に加筆された「子どもにやさしい道がコミュニティを育てる」という小冊子は、道が人を育て人をつなぐ上で果たす役割の重要性を伝えるものでした。

その後、氏はドイツやオランダ、スウェーデンの取り組みを『「クルマ社会と子どもたち」(その後):交通沈静化の海外の取り組み』、『交通死者・重傷者をゼロにする海外の政策〈ビジョン・ゼロ〉のその後』の2冊の小冊子にまとめられ、会より発行されました。「子どもを交通事故から守ることと、身近な道路で安心して遊べる環境が子どもの発育や発達に影響する」ということは会の発足の根幹であると思います。

「ボンネルフ」(生活の庭)という言葉を私が知ったのも今井氏の小冊子です。「ボンネルフ」の本質はクルマの速度を低速にすること、通過交通を入れないことで、その基本理念は①優先権を自動車に与えない ②道路で遊ぶことを禁止しない ③歩道に駐車させない ④高速で走れない(時速30km以下)(小冊子より引用)。
2007年の「こども環境学会」で、“道草ができるまちづくり”をテーマにした特別シンポジウムが開かれ、子どもが交通事故に遭わないで、自由に移動できて、集団で遊べるような安全な道路を生活環境の中に造ることが一つの重要なカギであることが示されました。(会報48号に報告があります。)

あの頃私は、「生活道路を子どもの命と発達を守る環境、空間として考えること、幼児期、学童期にしっかり歩くことが基本の体をつくること、成長段階に合わせて、自立的に行動を拡げ、身近な自然や地域の大人に接することで情緒や社会性が育つ」と教わり、その環境をつくることが大人の役目と感じていました。力不足でその役目は果たすことはできませんでした。保育施設は増えても、大事な子ども期にそういう経験ができているのか?保育現場では声をあげることもできず、散歩や外遊びの体験をしてもらうためにご苦労されていることと思います。それでも会の活動は多少なりとも、国や行政を動かし、私は何にもしなくても、我が家の近くの小学校に続く車道の一部は「時速30」、「学童注意」のペイントがあり、学校に続く道路の前の横断歩道は押せば直ぐに青に変わる信号になっています。まだまだですが、少しずつ、変わってきています。

子どもたちの列と保育士さんが歩道を歩いているところの写真です。

最近遭遇したこども園の子どもたちのお散歩。

私は今年の総会後の講演・対談会で宮田浩介氏の欧米先進国の先進的な自転車専用レーンのお話を聞いて、その政策や整備の根底に、平等に人間の命や健康を守る社会的環境、空間を取り戻したいという精神があるのではないか?と思ったのでした。そして、「子どもの命を守り、成長・発達を育む環境をよくすること」こそ、多くの人々に平等に寄与し、「生活の質(QOL)をより良いものにすること」であると再認識したのです。

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