川内町平尾交差点にたたずむ安全坊や
帰路は、途中の歩車分離信号を見ながら、長崎を回り熊本から大分経由で帰ることにしました。普及率が低いとはいえ、途中の大きな都市では、時折歩車分離信号を見かけます。そんな中で通りすがりの交差点で思いもかけず感激した出来事がありました。
長崎へ向かう途中、窯元で有名な伊万里で何の変哲もない交差点に目が釘つけになりました。なぜなら、この大川内町平尾交差点には、磁器で制作された愛らしい児童人形が横断歩道を挟んで設置してあったからです。
子どもの交通事故防止看板というと、飛び出し坊やばかりが目につきます。
近年は飛び出し坊や看板が蔓延し、そのために「子どもは飛び出すもの」と印象づけられ定着してしまいました。しかし、実際の子どもの死亡事故ニュースを拾い上げてみると、ドライバーの信号無視や子どもを見落とす車側からの飛び込み事故が多く目につきます。交差点に設置している信号待ち人形は、手を上げじっと交差点を見つめたたずんでいました。よく見ると人形の名前は息子の名前と同じ「げんき」と書かれてあり、胸にこみ上げてくるものがありました。
けなげに車の通過を待つ子どもや、信号待ちの子どもを見かけたら、ドライバーが細心の注意を払い徐行、停止すべきです。子どもの事故を常に飛び出しと印象づける「飛び出しくん看板」の設置は控えたいものです。
その後、九州を横断するように大分県別府に入り、門司港から帰宅いたしました。大分県や北九州市にも歩車分離信号が多く設置されています。福岡市の信号群と比較しながら視察を終えました。
【補足】大川内町では、安全人形を14体制作し、7カ所の交差点に設置しています。正式名は安全ガールとされているようです。
福岡市の歩車分離信号視察を終えて
福岡市の歩車分離信号密集群は、健常者だけでなく視覚障害者ついても配慮がなされた質の高い歩車分離信号密集群でした。今後も横断者の命を守ると同時に、加害者を生み出さない完全な歩車分離信号をさらに推し進めて行ってほしいと思いました。
福岡県警のホームページには、福岡県内の歩車分離信号の設置に関する説明が掲載されています。そこには、交差点名や設置場所、分離方式が記載された一覧があり、視覚障害者のための音響付加装置付交差点の一覧もきちんと掲載されています。
このような広報の延長線上に国民の歩行者優先思想が芽生えてくるのでしょう。
福岡県警の取り組みは、県民のみならず全国民からの支持も得られ、国が歩行者保護の交通安全を推進する上でとても良い影響を与えてくれるここと思います。ぜひ他の都道府県でも、福岡市や前回視察の札幌市のように地域住民に愛され誇れる歩車分離信号群を作っていただきたいと思いました。
懇談会での説明は、大変わかりやすく、「福岡の歩車分離信号は警察の主導です。3年計画で安全を優先し進めていきました」「今は、昔と違い歩行者優先の考え方です」と語っていた村上課長補佐のことばがとても心に残っています。やはり交通の安全は、国民の声だけでなく警察指導が有効で大切なのだと痛感しました。
歩車分離信号のさらなる普及を
日本は、深刻な少子高齢・人口減少社会に突入しています。とりわけ国の未来を支える子どもの命はなにより大切にしていかねばなりません。国は少子化対策としてさまざまな子育て支援対策を行っていますが、青信号の交差点で巻込み事故から、今生きている子どもの命を守ることは、重要な子育て対策の一つであると思っています。
子どもが安全に渡れる信号交差点は、全ての国民が安全に渡れる交差点です。
国は、通学路へ歩車分離信号の設置はもとより、国民が安心して子育てや日常生活がおくれる安全な歩車分離信号交差点の推進を、国策をもって推し進めていただきたいものと思います。
(東京都八王子市在住)
*会報114号では長谷智喜さんによる「札幌の歩車分離信号群を視察して」を掲載しています。