清水真哉
<高齢者と歩道橋>
先月(2011年1月)14日、神戸の須磨区の交差点で、手押し車を押しながら横断していた老婦人が、ダンプカーにはねられるという事故がありました。幸い軽症とのことですが、その交差点には横断歩道はなく、歩道橋が設置されていると、記事にはあります。
買い物用の手押し車に寄り掛かるようにして歩く高齢者、特に婦人の姿を近年よく見掛けるようになりました。彼女たちにとって歩道橋というのはまったく無理な施設でしょう。
高齢化社会の中でいよいよ、自動車という高速移動手段が、街なかには不適合なものであることが、歴然としてきました。
歩行中や自転車運転中の高齢者の事故が増加していると言われていますが、都市構造が高齢者に合ったものか、真面目に検証した人がいるのでしょうか。
私はかつて、浜松市に行ったときに、交差点の下に掘られた、道路横断用の地下道というものの存在を知って愕然としたものです。
また、大分県宇佐市では、宿泊した宿の前の道を渡るのに苦労しました。整備の良い国道であるだけにクルマはスピードを出しており、信号のある横断歩道まで長く歩かないと、怖くて渡れませんでした。
自分が住む、東京都江東区でも、横断歩道と横断歩道の間の間隔が長すぎると感じる所があります。
鉄道についてはバリアフリー化が進められていますが、道路については無為無策のままです。
少子高齢化を背景に、横断歩道橋が撤去され、横断歩道が整備されるという事例が出てきているようですが、歩道橋の全廃とともに、信号機付きの横断歩道を抜本的に増やすことを、声を大にして求めていきたいと思います。その際、信号機の設置は必須です。今の日本では、信号機のない横断歩道ではクルマは全く停まってくれなくなりました。
チュニジアやエジプトでは、長く沈黙を強いられてきた人たちが路上に出て声を上げました。本当は日本の歩行者だって不満を声に出せずに耐えているのですから、今すぐにでも百万人規模のデモをしたっていい筈なのです。
高齢者の人柱によってではなく、言論の力によって、道路を歩行者のために取り返していきたいと思います。
(2011年3月発行 会報第63号)