■コミュニティバスの現状と課題■
塚本 敬
コミュニティバスは、交通分野ではよく用いられている言葉だが、確立した定義はない。「地方自治体等が、交通不便地域の解消、中心市街地活性化、高齢者の外出促進などを目的とし、バスの事業計画や運営にかかわるバス」とする。近年では、地域住民主体で企画運営されたコミュニティバスも現れているが、本稿では、「自治体が運営するコミュニティバス」を中心に取り上げたい。
1.コミュニティバスの現状
コミュニティバスは、1995年に東京都武蔵野市が走らせたのが初めと言われる。ただ、地方部では、自治体が民営バスの廃止代替バスを1980年代から運営しているケースも多く、廃止代替バスとコミュニティバスの違いは必ずしも明瞭なものではない。
武蔵野市のムーバスは、交通不便地域解消を目的に、20~30分の循環コース、100円均一運賃、200mおきのバス停留所、15~20分間隔の等間隔ダイヤ、車両は市が所有、運行で生じた赤字は市が補てんするというスキームではじめられた。このムーバスは、全国に拡がったコミュニティバスのモデルとなったものである。
全国では約半数の自治体(914自治体)で導入されているという(1)。
2.コミュニティバスの課題
コミュニティバスは交通不便地域解消の方策として有力な手法であるが、全国に拡がるにつれ、必ずしも成功とはいえない事例も散見されるようになった。問題点は以下のとおりである。
- コミュニティバスの運行目的が明確でない自治体がある。
- 既存のバスと、システムが切り離されている。
- 既存の路線バスの乗客を奪うだけにとどまるバスがある。
3.これからのコミュニティバスに必要なこと
コミュニティバスを走らせることを自己目的としない。コミュニティバス運行に先立ち、公共交通マスタープラン、地域公共交通連携計画などを策定し、その地域で必要な公共交通の姿を明らかにする。その上で、既存の路線バスでなにが不足しているのかを明らかにし、既存の路線バス、コミュニティバスやその他の公共交通手段が一体となって地域の公共交通網を構成することが望ましい。
4.近年の成功事例
東京都国分寺市の東元町ルート、一周約12分、運転間隔は20分間隔、日中ダイヤではバス一台で運行されているが、とてもよく利用されている。JR国分寺駅の南側は坂になっていて、一日あたり約1,000人の利用客がある。短距離の利用客需要をうまく取り込むことができた。コンパクトなルート設定と、運転間隔を短く設定したのが成功の理由と思われる。是非、他の地域でも参考にしてほしい。
5.地域公共交通連携計画の中での見直し
れまで、コミュニティバスは、既存の路線バスとは切り離された形で整備されてきた。地域公共交通活性化法(2006)に基づく地域公共交通連携計画の策定に取り組む自治体が増えてきているが、その中で、既存の路線バスとコミュニティバスを一体的に見直すことに取り組んでいる自治体がある。長野県上田市、 茅野市などである。地方では、既存の路線バスも多くが赤字路線である。財政支 出を 伴うコミュニティバスが既存の路線バス利用客を奪うだけでは、公共交通全体の活性化にはつながらない。路線バスに対する効果的な財政援助を行うためにも、コミュニティバスと既存の路線バスの一体的な見直しを行うことが望ましい。
注
(1)国土交通省自動車交通局『 コミュニティバス等地域住民共同型輸送サービス検討小委員会報告』2005