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路線バスをアップグレードしよう ~神奈川県横浜市の事例から学ぶ(1)

投稿日:2024年9月16日 更新日:

井坂洋士
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現状維持は路線バスの縮退を招く

2023年頃から、全国の路線バスで「乗務員不足」を理由とした減便・縮小・廃止が顕著に拡大している。

「減便のお知らせ」が貼ってある各事業者のバス停の写真

市内を走る路線バスが「乗務員不足」を理由に軒並み減便されている(長野県上田市)

影響範囲が広いのも今回の特徴で、過疎化に悩む山間地や深刻なクルマ依存に悩む地方都市のみならず、都市間高速バスや、日々多くの乗客が利用する大都市圏のバス路線にまで影響が及んでいる。

乗客の多寡にかかわらず、現状維持のままでは路線バスは衰退する時代に入ってしまった。後述する事例のように、住民生活と地域経済を支える路線バスを維持するためには、現状維持で満足せず、アップグレードしてゆく必要がありそうだ。

大勢の人がバスを待つターミナルの写真に、減便のお知らせがコラージュされています

高頻度に運行し多くの乗客に利用されている路線ですら、“現状維持でいたら減便”の憂き目にあう(川崎市交通局)

路線バスのアップグレード

「運転手不足」を手をこまぬいて見ていた自治体ばかりではなく、路線バスの諸問題に対応すべく、基幹バス路線の改善・更新(アップグレード)を進めていた地域もある。

路線バスが多く利用されている大都市近郊に事例が多く、とりわけ千葉県の京成バス[1]や、神奈川県と東京都南多摩地域の神奈中バスは、コロナ禍以前より事業者が率先して連節バスを導入してきた。

連節バスの写真です

神奈中バスが導入した連節バス「ツインライナー」(JR相原駅)


一定の需要がある基幹バス路線のアップグレードに連節バスの導入は取り組みやすい具体策だ。車内が広いぶん乗客にとっては混雑緩和につながり、事業者にとっては少ない人手で多くの乗客を運ぶことができる[2]分かりやすいメリットがある。

車両のみならず道路(バス専用レーン)や停留場、PTPS(公共車両を優先する信号制御)なども総合的にアップグレードすると BRT (Bus Rapid Transit) になり、海外では事例が増えているが、道路管理者である地方自治体と交通管理者である都道府県警察の協力が欠かせず、残念ながら国内で先進的な取り組みはほとんどない[3]

他には、多くのバス事業者が混在している熊本県熊本市と広島県広島市にて、2020年の法改正[4]で解禁されたバス路線の共同経営に取り組まれている。

また、自治体主導でLRTを整備してバス路線を再編した栃木県宇都宮市[5]や、市内電車・バスの再編に積極的に参画している富山県富山市などの事例もある。

本稿では、2024年に2箇所で連節バスの導入などに取り組まれた神奈川県横浜市の事例を紹介したい。

脚注

[1] 日本では京成バスが1998年に千葉県千葉市の幕張新都心(幕張本郷駅~海浜幕張駅)に連節バスを導入したのが始まり。
https://www.mlit.go.jp/common/001020739.pdf

[2] 国交省では路線バスの収支状況を調査・公表しており、人件費が原価(運行経費)の57%ほどを占めている。よって、乗務員1人で運べる乗客数が増えれば収支改善効果が大きい。一方、車両にかかる費用は償却費(購入費)が7%、修繕費が5%ほど。
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001372205.pdf
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000326.html

[3] 専用の走行空間を持たず連節バスを導入するだけで「BRT」と呼んでいる事例(東京都、横浜市など)や、鉄道廃線跡を専用道路にして「BRT」と呼んでいるJR東日本の事例はあるが、本来の「Bus Rapid Transit」の意味から外れて導入前よりも所要時間が長くなっているなどの問題がある。
ちなみに国交省では「連節バス、PTPS(公共交通優先システム)、バス専用道、バスレーン等を組み合わせることで、速達性・定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステム」としている。
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha01_hh_000040.html

[4] 独占禁止法特例法について https://wwwtb.mlit.go.jp/shikoku/content/000262395.pdf

[5] 本誌114号(2023年12月号)「ついに走り出した芳賀・宇都宮LRT」を参照。

 

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