公開質問

2004年参議院選挙にあわせ政党に問う

投稿日:2004年6月22日 更新日:

参議院選挙の機会に、政党6党に向けて11項目のアンケートを実施しました(6/21・22に送付)。回答の可否と、回答の内容について取り急ぎお伝えいたしますので、投票のご参考になれば幸いです。次のような結果となっています。

回答の状況

回答あり

民主党・みどりの会議・日本共産党・公明党・自由民主党・社会民主党

6つの党から既に回答をいただきました。

回答なし政党

なし

今回は質問書を差し上げた全ての政党から回答がありました。

質問状本文

各政党総裁、党首、代表、委員長、交通政策責任者 殿

交通政策に関する質問書

2004年6月21日
クルマ社会を問い直す会
代表 三田直水

前略

 自動車は文明の利器であり、大きく普及してきましたが、それがもたらすマイナス面を制御する適切な施策が取られなければ、利器は迷惑物や凶器に転じます。日本は世界有数の自動車社会に成った結果、人間が安全に暮らすという最低限度の権利さえ日常的に侵害されているのが現実です。私たちはこの歪みを正し、人間が賢明さを持って自動車を活用できる社会をめざして、自動車中心でなく、人間中心の交通政策、道路政策を求めて9年前に発足し、運動をつづけている市民団体です。会員は、北海道から沖縄県まで全国各地に居住する400人です。

 つきましては7月11日投票の参議院議員選挙に向けて、当会より以下の質問をさせて頂きたく存じます。
 選挙の準備でお忙しい中とは拝察いたしますが、今回の質問書について、ご回答をいただけますと幸いです。ご回答の有無・内容は、報道機関、当会HPなどを通じ一般の方にも紹介し、投票の参考とさせていただきたく考えております。急なお願いにて恐縮ですが、6月末日頃までにお返事いただけますと幸いです。

 なお電子メールと郵便にて同じ内容を送らせていただきましたが、お返事は電子メールで頂けますようお願い致します。

交通政策に関する質問書

1)国民の移動する権利を保障し、環境的・社会的に持続可能な交通体系の構築を求める交通基本法が昨年、民主党と社会民主党により共同提出され廃案になりましたが、この法案に対する貴党のお考え、今後の対応をお聞かせ下さい。

2)温暖化対策について、二酸化炭素排出量の削減が目標通りに進まず、あらためて環境税という経済的対策の必要性がクローズアップされてきましたが、環境税導入に対する貴党のお考え、また導入をしない場合には、その代案をお聞かせ下さい。

3)イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めています。地球温暖化、道路建設による自然破壊、地方公共交通機関の衰退、都市中心部の空洞化など、車社会の弊害としての諸問題を考慮すると、日本でも自動車依存社会から脱却するために具体的目標を定めて努力することが必要な段階を迎えていると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

4)モーダルシフトは、総論としては推進される事となっていますが、トラック輸送の方が環境や安全面での負荷が大きいにもかかわらずコスト面から選択されるという状況が続いています。鉄道貨物が経費の面でも優位に立てるよう、財政や税制上の措置を講じるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

5)羽田空港は再拡張により航空機の発着量が一・五倍になるとされていますが、温暖化ガスの排出量削減が緊急の課題とされる中、とりわけ温暖化効果の高いとされる航空量を増やすことに為政者の誰も疑念を抱かずにいることは訝しいことと言わねばなりません。これ以上の空港整備は中止し、高速鉄道を整備し、環境への負荷の大きい航空輸送から鉄道への乗換えを進めることが必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

6)鉄道整備は新幹線や地下鉄の新規建設に偏り、地方鉄道や路面電車は独立採算を求められるばかりで最低限の安全性の確保さえ難しい状況に追い込まれています。在来線への再投資を進める財政上の枠組みが必要であると思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

7)自転車利用の推進は、総論としては賛成されますが、現実には自転車の走行空間の拡大は遅々として進んでいません。片側二車線以上ある道路では必ず一車線を自転車(およびバス)の優先車線とする、片側三車線以上ある道路では必ず一車線を自転車の専用車線とする、といった判断が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

8)また自転車利用の促進のためには、自転車通勤者に対する通勤手当の割増や、税制優遇などの政策が必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

9)交通安全
交通事故件数・死傷者数は、目標を立てて半減また半減と、零を目指してたゆまず努力していかなくてはならないものと考えますが、交通事故を減らすための具体的手段として貴党はどのような政策をお持ちかお聞かせ下さい。

10)事故時の映像や時速、ハンドルの動きなどを記録するドライブレコーダーは事故の実証的な解析に極めて有効であり、危険な運転を抑止する効果も見込めることから、全ての自動車に搭載を義務付けるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

11)子供の遊び場
かつて路地や空地は子供の遊び場であり、子供の心身の発育、社会性の育成のための大切な場所でした。それが昨今は、路地は通り抜け道路となり、空地は駐車場と化して、子供達は駆逐されました。TVゲームを止めて外で遊ぼうにも、その場所は見つけ難いのが現状で、近年の子供の基礎体力低下の原因ともなっていると考えられ、戸外で遊ぶための場所を確保することは教育政策上も重要な課題と思われます。路地での自動車の走行を制限し、路地を子供達に返還すること、また空地を子供の遊び場として提供した場合には固定資産税を減免するといった施策が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答結果

民主党からの回答

1)

国民の移動する権利を保障し、環境的・社会的に持続可能な交通体系の構築を求める交通基本法が昨年、民主党と社会民主党により共同提出され廃案になりましたが、この法案に対する貴党のお考え、今後の対応をお聞かせ下さい。

回答

民主党が提案した「交通基本法案」は、すべての国民に対し、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障される権利として「移動に関する権利」を定めるとともに、徒歩・自転車・自動車・鉄道・航空など各種交通手段がそれぞれの特性のもとで役割分担に応じ、総合的に整備されることや、交通による環境への負担の低減を図ることを定めることを内容としています。与党は、この法案の内容を受け入れようとしませんでしたが、今後も実現をめざし、再提出します。

2)

温暖化対策について、二酸化炭素排出量の削減が目標通りに進まず、あらためて環境税という経済的対策の必要性がクローズアップされてきましたが、環境税導入に対する貴党のお考え、また導入をしない場合には、その代案をお聞かせ下さい。

回答

民主党は、化石燃料の使用抑制・効率化と省エネルギー・新エネルギーの技術開発や環境関連投資促進に資する環境税を創設することを主張しています。CO2排出量(炭素含有量)に着目し、炭素1トンあたり3000円程度課税します。電力については、現在の電源開発促進税を一部組み替えて課税する炭素・エネルギー税とします。但し、その際には他に転換不可能な原料炭・ナフサ等の原材料としての使用については課税の対象から外し、産業界等の温暖化ガス発生の抑止への効果的な取り組みに対しては税の軽減もしくは還付制度を設け、わが国の産業の競争力の維持・強化をはかります。また、輸入石炭についても一定の措置を設けます。税収は、省エネルギー・新エネルギーの技術開発、設備投資、普及等に優先的に配分します。これにより、環境技術立国として、環境と雇用を両立させた持続可能な社会を構築します。なお、石油税制についても、そのあり方を含め今後検討します。

3)

イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めています。地球温暖化、道路建設による自然破壊、地方公共交通機関の衰退、都市中心部の空洞化など、車社会の弊害としての諸問題を考慮すると、日本でも自動車依存社会から脱却するために具体的目標を定めて努力することが必要な段階を迎えていると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

民主党は、交通基本計画によって総合的な交通インフラを効率的に整備し、重複する公共事業の無駄づかいの削減や環境負荷の少ない持続可能な社会の構築をめざしています。交通基本計画を策定するにあって、道路交通量の在り方について、検討していきます。

4)

モーダルシフトは、総論としては推進される事となっていますが、トラック輸送の方が環境や安全面での負荷が大きいにもかかわらずコスト面から選択されるという状況が続いています。鉄道貨物が経費の面でも優位に立てるよう、財政や税制上の措置を講じるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

民主党は、荷主が輸送機関を選択する立場にあることを重視し、モーダルシフト推進計画の策定と実施状況の報告を義務付けることを柱とした、「複合一貫輸送の推進に関する法律案」を2003年の156通常国会に提出しましたが、2003年の衆議院解散のため、廃案となりました。今後、モーダルシフト化率達成のため、法案を再提出し、成立をめざします。

5)

羽田空港は再拡張により航空機の発着量が一・五倍になるとされていますが、温暖化ガスの排出量削減が緊急の課題とされる中、とりわけ温暖化効果の高いとされる航空量を増やすことに為政者の誰も疑念を抱かずにいることは訝しいことと言わねばなりません。これ以上の空港整備は中止し、高速鉄道を整備し、環境への負荷の大きい航空輸送から鉄道への乗換えを進めることが必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

交通基本計画を策定する過程で、航空輸送と鉄道輸送の在り方について、検討していきます。

6)

鉄道整備は新幹線や地下鉄の新規建設に偏り、地方鉄道や路面電車は独立採算を求められるばかりで最低限の安全性の確保さえ難しい状況に追い込まれています。在来線への再投資を進める財政上の枠組みが必要であると思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

交通基本計画を策定する過程で、鉄道の在り方について、検討していきます。

7)

自転車利用の推進は、総論としては賛成されますが、現実には
自転車の走行空間の拡大は遅々として進んでいません。片側二車線以上ある道路では必ず一車線を自転車(およびバス)の優先車線とする、片側三車線以上ある道路では必ず一車線を自転車の専用車線とする、といった判断が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

今後検討します。

8)

また自転車利用の促進のためには、自転車通勤者に対する通勤手当の割増や、税制優遇などの政策が必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

今後検討します。

9)交通安全

交通事故件数・死傷者数は、目標を立てて半減また半減と、零を目指してたゆまず努力していかなくてはならないものと考えますが、交通事故を減らすための具体的手段として貴党はどのような政策をお持ちかお聞かせ下さい。

回答

具体策については、今後検討する。

10)

事故時の映像や時速、ハンドルの動きなどを記録するドライブレコーダーは事故の実証的な解析に極めて有効であり、危険な運転を抑止する効果も見込めることから、全ての自動車に搭載を義務付けるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

今後検討する。

11)子供の遊び場

かつて路地や空地は子供の遊び場であり、子供の心身の発育、社会性の育成のための大切な場所でした。それが昨今は、路地は通り抜け道路となり、空地は駐車場と化して、子供達は駆逐されました。TVゲームを止めて外で遊ぼうにも、その場所は見つけ難いのが現状で、近年の子供の基礎体力低下の原因ともなっていると考えられ、戸外で遊ぶための場所を確保することは教育政策上も重要な課題と思われます。路地での自動車の走行を制限し、路地を子供達に返還すること、また空地を子供の遊び場として提供した場合には固定資産税を減免するといった施策が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

民主党は、市町村に権限と財源を移譲し、地域のことは地域で決められるようにし、地域住民のニーズに合致した施策の実現を提唱しており、子どもの遊び場の確保についても、自治体が対応しやすいように、地方分権をすすめるべきであると考えます。

みどりの会議からの回答

クルマ社会を問い直す会 御中

 みどりの会議事務局の田中信一郎です。

 いつもお世話になっております。
 政策アンケートへの回答をお送りいたしますので、よろしく
ご査収願います。
 また、みどりの会議ホームページ上に、マニフェストを掲
げておりますので、こちらもご参考にしていただければ幸い
です。
 よろしくお願いいたします。

交通政策に関する質問書への回答

1)

国民の移動する権利を保障し、環境的・社会的に持続可能な交通体系の構築を求める交通基本法が昨年、民主党と社会民主党により共同提出され廃案になりましたが、この法案に対する貴党のお考え、今後の対応をお聞かせ下さい。

回答

 賛成の立場です。

2)

温暖化対策について、二酸化炭素排出量の削減が目標通りに進まず、あらためて環境税という経済的対策の必要性がクローズアップされてきましたが、環境税導入に対する貴党のお考え、また導入をしない場合には、その代案をお聞かせ下さい。

回答

 環境税導入を推進しています。

3)

イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めています。地球温暖化、道路建設による自然破壊、地方公共交通機関の衰退、都市中心部の空洞化など、車社会の弊害としての諸問題を考慮すると、日本でも自動車依存社会から脱却するために具体的目標を定めて努力することが必要な段階を迎えていると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 旅客輸送を公共交通と自転車、徒歩中心に移行するべきだと考えています。具体的には、公共交通への支援を大幅拡大、パーク&ライド、環境定期券、自動車道路を路面電車(LRT)、自転車道路、緑道に転換。自転車登録制度や共有自転車制度、公共輸送への自転車持ち込み、使いやすい無料駐輪場整備などによる「自転車公害」解消など。

4)

モーダルシフトは、総論としては推進される事となっていますが、トラック輸送の方が環境や安全面での負荷が大きいにもかかわらずコスト面から選択されるという状況が続いています。鉄道貨物が経費の面でも優位に立てるよう、財政や税制上の措置を講じるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 貨物輸送のムダを減らし、農産物や工業製品の「地産地消」を奨励して物流の必要を減らすとともに、トラック輸送を船舶・鉄道など環境破壊の少ない交通機関に移行するべきだと考えています。そのために、財政や税制上の措置も必要です。

5)

羽田空港は再拡張により航空機の発着量が一・五倍になるとされていますが、温暖化ガスの排出量削減が緊急の課題とされる中、とりわけ温暖化効果の高いとされる航空量を増やすことに為政者の誰も疑念を抱かずにいることは訝しいことと言わねばなりません。これ以上の空港整備は中止し、高速鉄道を整備し、環境への負荷の大きい航空輸送から鉄道への乗換えを進めることが必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 これ以上の空港整備は、不要です。みどりの会議では、具体的に静岡空港の建設中止を国土交通省や静岡県に強く求めています。

6)

鉄道整備は新幹線や地下鉄の新規建設に偏り、地方鉄道や路面電車は独立採算を求められるばかりで最低限の安全性の確保さえ難しい状況に追い込まれています。在来線への再投資を進める財政上の枠組みが必要であると思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 みどりの会議は、在来線・地方鉄道・路面電車(LRT)を重視しています。新幹線建設の財源を、これらの維持・整備に回すべきです。

7)

自転車利用の推進は、総論としては賛成されますが、現実には自転車の走行空間の拡大は遅々として進んでいません。片側二車線以上ある道路では必ず一車線を自転車(およびバス)の優先車線とする、片側三車線以上ある道路では必ず一車線を自転車の専用車線とする、といった判断が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 道路建設・街づくりにおいては、住民参加・環境優先が不可欠です。そうした観点から、自転車道の整備も重要と考えています。

8)

また自転車利用の促進のためには、自転車通勤者に対する通勤手当の割増や、税制優遇などの政策が必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 自転車通勤者に対しても、公共交通機関利用者と同様に、財政・税制措置が必要だと考えます。

9)交通安全

交通事故件数・死傷者数は、目標を立てて半減また半減と、零を目指してたゆまず努力していかなくてはならないものと考えますが、交通事故を減らすための具体的手段として貴党はどのような政策をお持ちかお聞かせ下さい。

回答

 ETCなどクルマ社会を進める政策・予算を、脱クルマ社会を進めるための政策・予算に切り替え、脱クルマ社会を実現することが、もっとも重要な交通事故対策だと考えます。

10)

事故時の映像や時速、ハンドルの動きなどを記録するドライブレコーダーは事故の実証的な解析に極めて有効であり、危険な運転を抑止する効果も見込めることから、全ての自動車に搭載を義務付けるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 プライバシーとの兼ね合いを見極めつつ、積極的に検討していきたいと考えます。

11)子供の遊び場
かつて路地や空地は子供の遊び場であり、子供の心身の発育、社会性の育成のための大切な場所でした。それが昨今は、路地は通り抜け道路となり、空地は駐車場と化して、子供達は駆逐されました。TVゲームを止めて外で遊ぼうにも、その場所は見つけ難いのが現状で、近年の子供の基礎体力低下の原因ともなっていると考えられ、戸外で遊ぶための場所を確保することは教育政策上も重要な課題と思われます。路地での自動車の走行を制限し、路地を子供達に返還すること、また空地を子供の遊び場として提供した場合には固定資産税を減免するといった施策が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

〈回答〉
 意義深い提案だと思いますので、積極的に検討していきたいと考えます。

日本共産党からの回答

日本共産党のサイト

1)

国民の移動する権利を保障し、環境的・社会的に持続可能な交通体系の構築を求める交通基本法が昨年、民主党と社会民主党により共同提出され廃案になりましたが、この法案に対する貴党のお考え、今後の対応をお聞かせ下さい。

回答

 交通関係の規制緩和、交通機関の民営化などによって、地方鉄道ローカル線やバス路線の廃止などが全国各地でおこなわれています。そのため、国民の足、「移動の権利」が奪われています。
現在政府が推進している「都市再生」は、一部の大都市に公共事業を集中させ、バブル期に計画され、頓挫していた開発を公共事業の後押しで復活させ、巨大再開発を推進するものです。そのためあちこちで環境破壊やまち壊しがすすみ、高齢者・障害者・子どもなどが安心してまちを移動できないなど、新たな交通弱者を生み出しています。
 こうしたことから、政府の交通政策の抜本的転換が今日的課題になっています。交通の足を奪われた移動困難者や交通弱者などの国民に、新たな権利を保障する「交通基本法」の意義は大きいと考えます。
 しかしこの法律は、「国際競争力の維持、強化」「国際的海運及び国際的航空の中核的拠点となるべき施設整備」とのべており、現在すすめている関西空港2期工事など巨大でムダな公共事業をいっそう促進する条項も含まれており、この点は正すべきであると考えます。
 なおこの法案は審議未了のまま廃案となったため、わが党が問題点の指摘や態度を表明する機会はありませんでした。

2)

温暖化対策について、二酸化炭素排出量の削減が目標通りに進まず、あらためて環境税という経済的対策の必要性がクローズアップされてきましたが、環境税導入に対する貴党のお考え、また導入をしない場合には、その代案をお聞かせ下さい。

回答

 二酸化炭素排出量に応じた環境税の導入によって、地球環境問題対策の解決のための対策や大気汚染被害者の救済、自然エネルギー促進などのための財源の充実をはかり、地球温暖化対策での国際的公約を果たすことが求められています。
 EU諸国で温暖化ガスの排出削減のため導入されている政府と産業界との協定制度を日本でも導入し、地球環境の分野でも企業の社会的責任を果たすべきです。

3)

イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めています。地球温暖化、道路建設による自然破壊、地方公共交通機関の衰退、都市中心部の空洞化など、車社会の弊害としての諸問題を考慮すると、日本でも自動車依存社会から脱却するために具体的目標を定めて努力することが必要な段階を迎えていると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 自動車排ガスと健康被害との因果関係をあいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。また圏央道(首都圏中央連絡道路)東京地裁判決に見られるように、道路建設、公共事業のあり方についても司法からきびしい批判がなされています。
それだけに、くるま優先で自動車道路の建設を促進して、公害を悪化させる行政の姿勢を根本的に転換させる必要があります。
 日本の温暖化ガス排出は、エネルギーの消費にともなうものが大部分を占めています。イギリスは長期的な目標として二酸化炭素を1990年比で2050年に60%削減する目標を打ち出し、ドイツは2020年までに45%削減するという目標を掲げています。日本でも長期的な見通しをもった計画が必要です。
イギリスでは、1997年に道路交通削減法が制定されました。この法律では、地方当局の管轄下の道路の場合、道路交通レベルの削減目標、将来の道路交通成長率の削減目標を設定することを要求しています。
 また最近、ロンドンでは渋滞緩和対策としてロンドン中心部に乗り入れる車両に混雑課金を課す制度を導入したとのことです。我が国でも、環境問題、交通安全などさまざまの点から道路交通量の削減を真剣に考えるべきであり、法制定も含めて具体的に考えるべき時です。

4)

モーダルシフトは、総論としては推進される事となっていますが、トラック輸送の方が環境や安全面での負荷が大きいにもかかわらずコスト面から選択されるという状況が続いています。鉄道貨物が経費の面でも優位に立てるよう、財政や税制上の措置を講じるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 モーダルシフトは必要なことと考えています。JR各社が、旅客優先の全国鉄道輸送体系をとっているため、鉄道貨物輸送は大きな制約を受けています。とりわけ国鉄分割・民営化によってそれが加速化され、結果、貨物の鉄道離れがいっそうすすみました。
 とりわけ東北新幹線など整備新幹線整備による平行在来線の切捨ては、全国を一貫する鉄道輸送に決定的な障害を与えています。
 国内物流における輸送機関分担率では自動車が最大で、そのシェアは50%を超えています。トラックの排出原単位(1トンキロ輸送あたりに排出する二酸化炭素の量)は、大量輸送機関である鉄道・内航海運に比して大きく、貨物輸送部門の輸送機関別CO2排出割合においても、全体の9割を占めています。CO2の排出を抑制するためには、鉄道や内航海運等、単体のエネルギー消費効率のよい輸送機関の活用を図るモーダルシフトを促進することが重要です。そのためには、鉄道等による貨物輸送が輸送効率の面でも、コスト面でも優位に立てるよう財政、税制、交通政策といったさまざま面からの支援策を講じることが必要です。

5)

羽田空港は再拡張により航空機の発着量が一・五倍になるとされていますが、温暖化ガスの排出量削減が緊急の課題とされる中、とりわけ温暖化効果の高いとされる航空量を増やすことに為政者の誰も疑念を抱かずにいることは訝しいことと言わねばなりません。これ以上の空港整備は中止し、高速鉄道を整備し、環境への負荷の大きい航空輸送から鉄道への乗換えを進めることが必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 空港整備や航空輸送から鉄道等への転換については、国民の利便性なども考慮しつつ、転換を促進すべきです。羽田の再拡張問題は、温暖化ガス排出の問題のみならず、航空機騒音問題、国・地方の財政負担、首都圏一局集中の加速、黒字・赤字路線の二分化による地方路線の切捨てなどさまざまな問題点をもつものであり、羽田再拡張を内容とした「東京国際空港における緊急整備事業の円滑な推進に関する特別措置法」には反対しました。

6)

鉄道整備は新幹線や地下鉄の新規建設に偏り、地方鉄道や路面電車は独立採算を求められるばかりで最低限の安全性の確保さえ難しい状況に追い込まれています。在来線への再投資を進める財政上の枠組みが必要であると思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 現在の鉄道に対する投資が新幹線や新規地下鉄建設に重点がおかれていることはご指摘のとおりです。第3セクター鉄道も含めた地方鉄道は、安全投資が軽視されているばかりか、その存続さえ危ぶまれる事態になっています。また整備新幹線建設の結果、平行在来線が存続できす、地域住民の足が奪われています。
 こうした地方鉄道の状況は、赤字がリストラなど合理化につながり、合理化が利便性の低下と安全軽視、旅客の減少につながるという悪循環に陥っています。
都市では路面電車が再評価されています。地下鉄は地上との階差があり、高齢者や障害者が使いにくい面もあり、地域に密着した路面電車が見直されています。
 空港整備や新幹線、高速道路建設など大規模プロジェクト中心から、生活に直結した地方鉄道や路面電車に再投資を行うなど、投資の流れを転換すべきです。

7)

自転車利用の推進は、総論としては賛成されますが、現実には自転車の走行空間の拡大は遅々として進んでいません。片側二車線以上ある道路では必ず一車線を自転車(およびバス)の優先車線とする、片側三車線以上ある道路では必ず一車線を自転車の専用車線とする、といった判断が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 現在、政府がすすめている自転車利用の対策は、駐輪場の整備や既存道路の拡幅、小規模バイパスの建設と併せた自転車通行道と歩道を分離する施策程度であり、それも遅々としてすすんでいません。
 それは、日本の道路政策が自動車通行優先で自転車利用や歩行者の安全や利便性を軽視しているからです。片側2車線、3車線道路について、そのうち1車線を自転車、歩行者優先にすることは検討に値すると思います。しかし自転車と歩行者やバスなど大型車との関係など安全性や通行方法の確立も含めて検討しなければならない課題もあります。

8)

また自転車利用の促進のためには、自転車通勤者に対する通勤手当の割増や、税制優遇などの政策が必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 自転車通勤者に対する通勤費の支給は通常の交通機関を利用した場合の通勤手当程度は支払うようにすべきです。税制については、通勤手当として支給されれば一定条件のもとで非課税とされており、その範囲で対応可能かと思います。自転車通勤を普及するためには、駅周辺の自転車駐輪場の整備の充実、事業所における駐輪場の確保など今後の課題もあります。

9)交通安全

交通事故件数・死傷者数は、目標を立てて半減また半減と、零を目指してたゆまず努力していかなくてはならないものと考えますが、交通事故を減らすための具体的手段として貴党はどのような政策をお持ちかお聞かせ下さい。

回答

 2003年の交通事故死者は8326人、死傷者数は117万6181人、事故発生件数も93万6721人で依然として、大変深刻です。死者数は減少しているものの、高い水準を維持していることに変わりはありません。現在の政府の交通安全対策のような、あいまいな姿勢と目標ではなく、交通事故の死傷者を限りなくゼロに近づける長期目標と、それに近づけるための段階ごとの計画をきちんと持つことが重要です。日本共産党はかねてから、人命尊重がなにものにも優先されるべきであるという立場から交通安全対策と交通安全施設整備の充実を求めてきました。
 交通事故の多発の根本的原因は、1960年頃からのモータリゼーション野放し政策にあります。そのことは、保有自動車台数に比例して、事故件数、死傷者数が増加していることに現れています。特に東京、横浜、川崎、大阪などの大都市では、自動車交通量そのものを制限しない限り交通事故件数を減らすことはできません。
 そのためには、鉄道、バス、路面電車など大量公共交通機関中心のシステムを確立する一方、自動車の総量規制基準を決め、区域内の自動車保有規制、走行量規制などをおこなうべきです。特にディーゼル車については中小運送業者への支援措置を強めつつ、大都市区域内への乗り入れの規制をさらに強めるべきです。

10)

事故時の映像や時速、ハンドルの動きなどを記録するドライブレコーダーは事故の実証的な解析に極めて有効であり、危険な運転を抑止する効果も見込めることから、全ての自動車に搭載を義務付けるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 最近、ドライブレコーダーが商品化されています。メーカーの宣伝では、交通事故の場合の責任をはっきりさせる上で効果があるとされています。事故の際の解析に有効な点、危険な運転の抑止効果になるとの指摘がありますが、設置しただけで直接的な効果があるかどうか、いま少し実証的な検討が必要かと思われます。
 また、交通事故の際の警察捜査に使われるのではないか、などの問題点があり、直ちに搭載を義務付けることについては、慎重な検討が必要です。

11)子供の遊び場
かつて路地や空地は子供の遊び場であり、子供の心身の発育、社会性の育成のための大切な場所でした。それが昨今は、路地は通り抜け道路となり、空地は駐車場と化して、子供達は駆逐されました。TVゲームを止めて外で遊ぼうにも、その場所は見つけ難いのが現状で、近年の子供の基礎体力低下の原因ともなっていると考えられ、戸外で遊ぶための場所を確保することは教育政策上も重要な課題と思われます。路地での自動車の走行を制限し、路地を子供達に返還すること、また空地を子供の遊び場として提供した場合には固定資産税を減免するといった施策が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

〈回答〉
 確かに路地や空地はかつて子供の手頃な遊び場でした。ところがモータリゼーションの普及によって路地まで自動車が入り込み、道路で遊ぶことは危険な状態のところが増加しています。当面すぐに道路を遊び場として復活することは困難な課題ですが、交通規制などを強化して安全な道路をつくることは必要です。
 また、身近に公園やプレイロットを整備し、子供の遊び場を確保することも重要です。空地を遊び場として活用する場合に固定資産税を減免することは、既に多くの自治体で一定の基準を満たせば減免措置をおこなっていますが、さらに拡充することが必要です。
 いずれにしても地域の実情をいかした、規制や取り組みが必要です。

以上

公明党からの回答

公明党のサイト

「クルマ社会を問い直す会」様へ

日ごろのご活動、心から敬意を表します。
ご指定の「6月末日頃」の回答期限にて、
ご送付いただいた質問書に対する件について
以下のとおり回答させていただきます。

交通政策に関する質問書回答

文責 公明党政務調査会
伊藤 秀継

1)

国民の移動する権利を保障し、環境的・社会的に持続可能な交通体系の構築を求める交通基本法が昨年、民主党と社会民主党により共同提出され廃案になりましたが、この法案に対する貴党のお考え、今後の対応をお聞かせ下さい。

回答

 ご指摘の法案が民主党・社民党から提出され、第156国会において審査未了となり、その後の国会には提出されていないと承知しています。同法案に関しては、現行の交通施策がめざす目的と合致するところも多く、法制化によってこうした政策目的を達成することが適当かどうかも含め検討すべきと考えます。

2)

温暖化対策について、二酸化炭素排出量の削減が目標通りに進まず、あらためて環境税という経済的対策の必要性がクローズアップされてきましたが、環境税導入に対する貴党のお考え、また導入をしない場合には、その代案をお聞かせ下さい。

回答

 環境政策における経済手法の効果的な措置は講ずべきであると考えます。英国の気候変動税と排出量取引市場の形成や、デンマークにおける炭素税と補助金等の組み合わせ等の、環境政策における経済的手法のあり方等は、わが国にとっても重要な示唆に富む施策です。

3)

イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めています。地球温暖化、道路建設による自然破壊、地方公共交通機関の衰退、都市中心部の空洞化など、車社会の弊害としての諸問題を考慮すると、日本でも自動車依存社会から脱却するために具体的目標を定めて努力することが必要な段階を迎えていると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 自動車に依存し過ぎる社会については、国民の健康への影響、地球環境への悪影響の観点から是正の必要があるとの認識に立ちます。この弊害に除去については多様な施策の組み合わせによることが適切であり、是正策として問題点に応じた具体的目標を設定することは妥当と考えます。

4)

モーダルシフトは、総論としては推進される事となっていますが、トラック輸送の方が環境や安全面での負荷が大きいにもかかわらずコスト面から選択されるという状況が続いています。鉄道貨物が経費の面でも優位に立てるよう、財政や税制上の措置を講じるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 鉄道貨物輸送の充実は、過大な自動車依存による地球への環境負荷を削減できる可能性があり、そのために財政・税制上の多様な政策手法の確立は重要な課題であると認識します。

5)

羽田空港は再拡張により航空機の発着量が一・五倍になるとされていますが、温暖化ガスの排出量削減が緊急の課題とされる中、とりわけ温暖化効果の高いとされる航空量を増やすことに為政者の誰も疑念を抱かずにいることは訝しいことと言わねばなりません。これ以上の空港整備は中止し、高速鉄道を整備し、環境への負荷の大きい航空輸送から鉄道への乗換えを進めることが必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 国民の社会的・経済的な移動の実態及びグローバルな国際社会の実態からして、一律に航空輸送から高速鉄道へ振り替えを図ることが適切かもしくは可能かどうかについて、研究を進めると同時に、国民の意見をさらに詳しく聴取すべきと考えます。

6)

鉄道整備は新幹線や地下鉄の新規建設に偏り、地方鉄道や路面電車は独立採算を求められるばかりで最低限の安全性の確保さえ難しい状況に追い込まれています。在来線への再投資を進める財政上の枠組みが必要であると思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 鉄道の在来線への支援については、少子高齢化時代の移動手段の確保の観点からも、財政・税制上の効果的な施策を拡充したいと考えます。

7)

自転車利用の推進は、総論としては賛成されますが、現実には自転車の走行空間の拡大は遅々として進んでいません。片側二車線以上ある道路では必ず一車線を自転車(およびバス)の優先車線とする、片側三車線以上ある道路では必ず一車線を自転車の専用車線とする、といった判断が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 自転車優先車線及び専用車線については、歩行者の利用空間を確保しつつ、国及び地方の交通実態に応じた確保が可能となるよう今後とも積極的に拡充に努めます。

8)

また自転車利用の促進のためには、自転車通勤者に対する通勤手当の割増や、税制優遇などの政策が必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 自転車通勤者の通勤手当割増や税制優遇に関し、政策効果について研究をすすめる一方で、実効性ある政策手段の検討をすすめます。

9)交通安全

交通事故件数・死傷者数は、目標を立てて半減また半減と、零を目指してたゆまず努力していかなくてはならないものと考えますが、交通事故を減らすための具体的手段として貴党はどのような政策をお持ちかお聞かせ下さい。

回答

 高齢者が被害・加害者となる交通事故が激増しており、早急にその防止対策及び安全対策を講じる必要があると考えます。

10)

事故時の映像や時速、ハンドルの動きなどを記録するドライブレコーダーは事故の実証的な解析に極めて有効であり、危険な運転を抑止する効果も見込めることから、全ての自動車に搭載を義務付けるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 その有効性については安全対策効果が期待されますが、データを事故防止にどのように活用するかについてさらに研究を進める必要があり、あわせて設置に関して運転者の負担が過大にならない方策についてもなお検討の余地があります。まず事業用自動車についてこうした検討課題の実証実験を行い、政策効果を検証すべきと考えます。

11)子供の遊び場
かつて路地や空地は子供の遊び場であり、子供の心身の発育、社会性の育成のための大切な場所でした。それが昨今は、路地は通り抜け道路となり、空地は駐車場と化して、子供達は駆逐されました。TVゲームを止めて外で遊ぼうにも、その場所は見つけ難いのが現状で、近年の子供の基礎体力低下の原因ともなっていると考えられ、戸外で遊ぶための場所を確保することは教育政策上も重要な課題と思われます。路地での自動車の走行を制限し、路地を子供達に返還すること、また空地を子供の遊び場として提供した場合には固定資産税を減免するといった施策が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

〈回答〉
 路地の車両通行禁止措置や空地の遊び場としての確保は、安全面だけでなく子供たちの健全育成の配慮からも必要な課題と考えます。
 地域の交通実態を踏まえつつ、柔軟に確保できるよう施策を推進します。

自由民主党からの回答

自民党のサイト

1)

国民の移動する権利を保障し、環境的・社会的に持続可能な交通体系の構築を求める交通基本法が昨年、民主党と社会民主党により共同提出され廃案になりましたが、この法案に対する貴党のお考え、今後の対応をお聞かせ下さい。

回答

 利用者ニーズに的確に対応した高い水準の交通サービスを国民に提供するためには、基本的な交通インフラについては公的部門が効率的にその整備を図りつつ、個々の交通サービスの提供については、地域の利用者ニーズを踏まえた民間事業者等が創意工夫やその努力を最大限発揮して行うことが望ましいと考えており、このため、わが党は規制緩和等に取り組んできているところです。
 「移動の権利を保障する」ということは、この枠組みを大きく転換し、公的部門が交通サービスの水準について基本的に責任を負うこととなります。国民が国に対しその権利を行使した場合、国は交通サービスを提供する責任を負うこととなりますが、その実現のためには交通事業に対する国の関与権限の強化、財政支出の増大や非効率化を招くなど、様々な問題点があります。こうした様々な問題点を十分理解し、是認した上で、移動権を保障することについて国民のコンセンサスが形成されていないと考えます。
 過疎地域における生活交通の維持、駅等交通施設のバリアフリー化、環境への負荷の低減等については、個別の法律や予算補助をはじめとする各種支援スキーム等により既に総合的に取り組み、具体的に実践中であり、その充実を図っていくことが重要であると考えております。

2)

温暖化対策について、二酸化炭素排出量の削減が目標通りに進まず、あらためて環境税という経済的対策の必要性がクローズアップされてきましたが、環境税導入に対する貴党のお考え、また導入をしない場合には、その代案をお聞かせ下さい。

回答

 温暖化対策に関する税等の経済的手法については、地球温暖化対策推進大綱の評価、見直しにも考慮しながら、国民経済産業全般に与える影響等を十分考慮し、国民的議論を踏まえて、総合的に検討します。

3)

イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めています。地球温暖化、道路建設による自然破壊、地方公共交通機関の衰退、都市中心部の空洞化など、車社会の弊害としての諸問題を考慮すると、日本でも自動車依存社会から脱却するために具体的目標を定めて努力することが必要な段階を迎えていると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 交通体系は、各交通機関の競争と利用者の自由な選択により形成されることが原則ですが、その整備にあたっては、各交通機関がその特性を活かし、十分な連携を図るとともに、地球温暖化等の諸問題にも対応していくことが重要です。
 このため、自動車の低公害化・省エネルギー化、交通需要マネジメント、違法駐車対策等の施策(ソフト)と各種基盤整備(ハード)を一体的に実施することにより、公共交通機関の利用の促進、鉄道・海運へのモーダルシフトの推進、道路交通渋滞対策等の推進を図るとともに、オムニバスタウンその他のバスのサービス改善施策等を進めているところであります。
 さらに、数値目標については、地球温暖化対策推進大綱においては、【運輸部門におけるエネルギー需要面のCO2排出削減:H22において自然体ケースと比較して約4530万-CO2】 社会資本整備重点計画においては、【NO2の環境基準達成率:64%(H14)→約8割(H19)】と具体的な数値目標を定め、施策を推進してまいります。

4)

モーダルシフトは、総論としては推進される事となっていますが、トラック輸送の方が環境や安全面での負荷が大きいにもかかわらずコスト面から選択されるという状況が続いています。鉄道貨物が経費の面でも優位に立てるよう、財政や税制上の措置を講じるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 モーダルシフトの推進につきましては、長距離輸送の分野を中心に、鉄道への転換を促進し、もって環境負荷軽減等の社会的課題に対応した物流体系を構築することを主眼としております。このような目的を実現するため、JR貨物の自立的経営を前提としつつ、長距離幹線コンテナ輸送の拡充など、モーダルシフトについての適切な支援を講じることとしております。
 具体的には、コンテナホームの整備(駅のE&S化)による荷役時間や列車所要時間の短縮、列車の増発等の輸送力の増強、高性能機関車の導入等によって鉄道貨物輸送のサービス水準を向上させ、荷主や利用運送事業者のニーズに応えていく必要があります。
 このため、財政上の支援措置の対象として、これまでに武蔵野線・京葉線貨物走行対応化事業(平成10~12年度)、門司貨物拠点整備事業(平成11~13年度)が完成し、平成14年度からは、山陽線鉄道貨物輸送力増強事業(平成18年度完成予定)を実施しております。
 また、税制上の支援措置として、旧国鉄からの承継資産に対する固定資産税等の軽減(課税標準3/5)、高性能機関車・貨車に対する固定資産税の軽減(課税標準5年間1/2)等を講じております。
 またソフト面におきましては、荷主や物流事業者等の関係者が共同して環境負荷低減策に取り組む場合に、一定の効果が認められるものに対して支援をする、「環境負荷の小さい物流体系の構築を目指す実証実験」を行っており、平成16年度の鉄道のモーダルシフトについて、現時点で9件認定されたところであります。
 今後とも、鉄道貨物輸送の活性化が図られるよう、必要な諸施策を講じて参ります。

5)

羽田空港は再拡張により航空機の発着量が一・五倍になるとされていますが、温暖化ガスの排出量削減が緊急の課題とされる中、とりわけ温暖化効果の高いとされる航空量を増やすことに為政者の誰も疑念を抱かずにいることは訝しいことと言わねばなりません。これ以上の空港整備は中止し、高速鉄道を整備し、環境への負荷の大きい航空輸送から鉄道への乗換えを進めることが必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 交通サービスは、各交通機関の輸送特性に応じて利用者が自由に選択することにより提供されるのが原則であると考えております。
 海に囲まれた島国である我が国においては、航空は、その輸送特性により、国際輸送分野、国内の中・長距離輸送分野を中心として、個人の旅行ニーズを満たすほか、企業活動を支え、国民の生活水準の向上や我が国の経済発展に大きな役割を果たすことから、今後とも増大する航空需要に対応し、羽田空港の再拡張等の空港整備が必要であると考えます。
 なお、我が国の二酸化炭素総排出量のうち、航空輸送が占める割合は1%に満たず(2001年度現在)、提供座席距離あたりの二酸化炭素排出量原単位についても、燃料消費効率の改善された新型機への更新等により、1990年度に対し2002年度現在において約12%の軽減が図られています。

6)

鉄道整備は新幹線や地下鉄の新規建設に偏り、地方鉄道や路面電車は独立採算を求められるばかりで最低限の安全性の確保さえ難しい状況に追い込まれています。在来線への再投資を進める財政上の枠組みが必要であると思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 地方鉄道や路面電車につきましては、事業経営者の様々な経営努力や地域の積極的な支援を前提として路線の維持及び経営の安定化が図られることが望ましいと考えております。
 また、安全の確保や経営の合理化、利用者利便の向上等の観点から、従来より近代化補助等により、経営の厳しい地方中小鉄軌道事業者の設備整備等に対して支援を行っております。
 特に、地方鉄道の安全性の確保につきましては、平成12年と13年に発生した、京福電気鉄道の列車衝突事故を契機として、平成14、15年度に行った鉄道施設の緊急評価を踏まえ、16年度から5ヵ年間に限り、緊急に整備が必要なトンネル・橋梁の改修等に対して、補助率の嵩上げを行う等の拡充を図ったところであります。
 今後ともこれらの制度を活用し、自立的な経営を目指す事業経営者や地域の取組みを支援して参りたいと考えております。

7)

自転車利用の推進は、総論としては賛成されますが、現実には自転車の走行空間の拡大は遅々として進んでいません。片側二車線以上ある道路では必ず一車線を自転車(およびバス)の優先車線とする、片側三車線以上ある道路では必ず一車線を自転車の専用車線とする、といった判断が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 歩道・自転車道の整備については、毎年着実に整備を進めており、平成14年4月で歩道等が設置された道路の延長は148,924kmとなっています。このうち自転車が走行できる空間が確保された道路の延長は75,527kmとなっております。
 片側二車線以上もしくは三車線以上ある道路において、自転車優先車線あるいは専用の車線とすることにつきましては、実際の自動車や自転車の交通状況等を踏まえて判断されることになります

8)

また自転車利用の促進のためには、自転車通勤者に対する通勤手当の割増や、税制優遇などの政策が必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 交通機関等の利用者だけでなく、自転車通勤者に対する通勤手当についても、通勤距離に応じた非課税制度が設けられているところです。

9)交通安全

交通事故件数・死傷者数は、目標を立てて半減また半減と、零を目指してたゆまず努力していかなくてはならないものと考えますが、交通事故を減らすための具体的手段として貴党はどのような政策をお持ちかお聞かせ下さい。

回答

 交通の安全は,交通需要や交通の円滑性・快適性と密接な関連がありますので、これらの視点に十分配慮するとともに,沿道の土地利用や道路利用の在り方も視野に入れた取組をするほか,防災の観点にも適切な配慮を行うこととします。
 このような観点から,道路交通環境の整備,交通安全思想の普及徹底,安全運転の確保,車両の安全性の確保,道路交通秩序の維持,救助・救急体制の整備,損害賠償の適正化,交通安全に関する科学技術の振興等の各般の交通安全対策を充実し,官民の連携を一層緊密にしつつ,総合的かつ計画的に推進します。

10)

事故時の映像や時速、ハンドルの動きなどを記録するドライブレコーダーは事故の実証的な解析に極めて有効であり、危険な運転を抑止する効果も見込めることから、全ての自動車に搭載を義務付けるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 ドライブレコーダーは、事故時の映像などをデータとして記録できる装置として開発されたものでありますが、ご指摘のような事故防止の効果があることから、このような装置が今後、新たな車両安全対策を講じて行くうえで注目していくべき新技術と理解しています。
 しかしながら、依然として装置の信頼性や映像を公的に利用するための課題など検討すべき点が残っていることから、全ての自動車に装着を義務付けることについて、現時点では時期尚早であると考えます。
 なお、現在、タクシー業界において、運転者教育への活用や事故の責任の明確化等の観点から一部の事業者が導入を開始しており、ドライブレコーダーの有効性等について検証しつつ、今後の活用方策について十分検討してまいりたいと考えています。

11)子供の遊び場
かつて路地や空地は子供の遊び場であり、子供の心身の発育、社会性の育成のための大切な場所でした。それが昨今は、路地は通り抜け道路となり、空地は駐車場と化して、子供達は駆逐されました。TVゲームを止めて外で遊ぼうにも、その場所は見つけ難いのが現状で、近年の子供の基礎体力低下の原因ともなっていると考えられ、戸外で遊ぶための場所を確保することは教育政策上も重要な課題と思われます。路地での自動車の走行を制限し、路地を子供達に返還すること、また空地を子供の遊び場として提供した場合には固定資産税を減免するといった施策が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

〈回答〉
 交通事故死者数に占める歩行者と自転車利用者の割合は4割を超え、歩行中の交通事故死者のうち子供の7割、高齢者の約6割が自宅近くで事故にあっています。
 このため、交通事故の多発している住居系・商業系地区1,000箇所を「あんしん歩行エリア」に指定し、歩行者などの安全通行の確保に向けた施策を道路管理者とともに推進することにより、地区内の交通事故の約2割の抑制を目指します。
 また、子供の遊び場は、重要な空間・土地であり、それを提供していただける施策を進めていきたいと考えます。但し、税制の減免などは、都市農地・林野(環境施策)などとの整合性もあり、現在検討しているところです。

社会民主党からの回答

 20世紀の行き過ぎた「クルマ社会」は、激増する交通事故、慢性化する交通渋滞、大気汚染・騒音等の交通公害といった社会的外部負経済をもたらすとともに、交通弱者の移動の権利を奪ってしまいました。ここに交通分野の規制緩和が追い打ちをかけ、憲法に保障された幸福追求権、居住・移転の自由、生存権に立脚する「移動の権利」が画餅と化しています。21世紀を人間優先の社会とするため、社民党は、誰もが、いつでも、どこからでも、どこへでも、安全、安心、平等、快適に移動できる権利としての、新しい人権「交通権」を保障することを交通政策の基本とし、そのためにも公共交通の充実が必要であると考えます。特に弱い立場にある人たち、高齢者・障害者・子どもの移動の自由を保障することが必要です。
 社民党は、高齢社会に対応する交通システム、限られた資源、地球環境を守る交通が求められており、「クルマ社会」の行き過ぎを転換し、公共交通を基盤に置いた人と地球にやさしい総合交通体系の確立を目指して参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。最後になりましたが、貴会のますますのご発展をお祈り申し上げます。

社民党のサイト

1)

国民の移動する権利を保障し、環境的・社会的に持続可能な交通体系の構築を求める交通基本法が昨年、民主党と社会民主党により共同提出され廃案になりましたが、この法案に対する貴党のお考え、今後の対応をお聞かせ下さい。

回答

 ヨーロッパの都市の多くは公共交通を街づくりの基本に据えており、公共交通の復権は世界的な潮流といえます。規制緩和先進国といわれるイギリスでも、規制緩和後のルール作り、新たな交通政策が現実化しはじめています。
 日本においても、排ガス・騒音といった環境問題や交通事故などの負の問題、高齢化によって免許がありながら運転できない交通弱者の発生、バリアフリー、地域活性化などに果たす公共交通の社会的な意義は今後ますます高まってきます。二一世紀にふさわしい市民の足を守るには、公共交通の社会的な価値、社会的評価の向上を地域から打ち出していく取り組みが大事です。
 安全の問題、環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど、交通問題は市場原理では解決できない問題が山積しています。

 民主党と社民党が共同提案した交通基本法案は、生存権と自由権の両面から移動に関する権利を明確にすることによって、交通条件に恵まれない地域における交通施設や移動制約者に配慮された交通施設の整備の促進、都市部における交通の混雑の緩和など利用者の立場に立った施策を進める基礎を築くとともに、縦割り行政の弊害をなくし、総合的・計画的な交通政策の推進、環境に十分配慮した交通政策の推進を目的とするものです。
 昨年の衆議院国土交通委員会の審議では、社民党の原議員の質問に菅野議員が答えるという形で、従来の交通政策の問題点、地域住民の意向の反映、自治体の当時者性の確保、縦割りの交通整備財源の一本化などが論点となりました。しかし、与党は質疑を一切しないまま突如廃案を要求するという理不尽な対応に出ました。廃案になったとはいえ、新しい交通政策の理念をうたった交通基本法案の意義はこれからますます輝くに違いありません。社民党は選挙政策でも、「フランスの「国内交通基本法」にならい、「交通権憲章」運動を進め、憲法の幸福追求権、居住・移転の自由、生存権に立脚する「移動の権利」としての交通権の保障、交通社会資本の基準、生活交通機関の位置づけ、生活交通に対する補助、総合交通会計制度、交通運輸労働者の労働環境の保護、安全輸送の確保などを盛り込んだ「交通基本法」を制定します」ということを公約としており、今後とも法案の提出・成立を求めて取り組んでいきます。

2)

温暖化対策について、二酸化炭素排出量の削減が目標通りに進まず、あらためて環境税という経済的対策の必要性がクローズアップされてきましたが、環境税導入に対する貴党のお考え、また導入をしない場合には、その代案をお聞かせ下さい。

回答

 地球温暖化対策を実効あるものとするためには、排出量取引や森林の吸収率算定などの柔軟措置(京都メカニズム)に依存するのではなく、工場の排出規制や自動車の排ガス規制など排出源対策の強化を図るべきです。そのためには環境税(炭素税)の導入が最も有効です。環境税とは、二酸化炭素を排出する行為に課税するものであり、それによって企業や消費者(マイカーの運転者等)に、二酸化炭素を排出する行為を回避させることを目的(経済的誘導効果)としています。社民党は現行石油税と同様、蔵出しの段階での課税を考えていますので、企業や消費者は購入時に環境税を負担することになります。

3)

イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めています。地球温暖化、道路建設による自然破壊、地方公共交通機関の衰退、都市中心部の空洞化など、車社会の弊害としての諸問題を考慮すると、日本でも自動車依存社会から脱却するために具体的目標を定めて努力することが必要な段階を迎えていると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 賛成です。社民党は選挙政策に、「交通需要マネジメントを推進し、自動車の都心部乗り入れ規制や台数割当制度、ロードプライシングを導入するなど、中心市街地の自動車の総量規制に踏み出すとともに、パーク・アンド・ライドなど自動車・自転車と生活交通の連携を進めます。不要なマイカーの利用を抑制するため、公共交通を利用しやすくするようにするとともに、カーシェアリングを検討します。違反駐車防止条例の制定を推進します。」ということを公約しています。ロードプライシング(交通渋滞や大気汚染の著しい特定地域に乗り入れる車に通行課徴金を課す制度)を実施し、にぎわい楽しく歩ける街をつくることも提案しており、脱クルマ社会を展望して努力して参ります。

4)

モーダルシフトは、総論としては推進される事となっていますが、トラック輸送の方が環境や安全面での負荷が大きいにもかかわらずコスト面から選択されるという状況が続いています。鉄道貨物が経費の面でも優位に立てるよう、財政や税制上の措置を講じるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 社民党は、選挙政策でも「物流の効率化、環境対策を推進するため、幹線物流における貨物鉄道輸送や内航船舶輸送の強化、各交通機関相互のアクセス向上、共同配送拠点の整備を進め、自動車輸送からの移転(モーダルシフト)を促進します。コンテナ貨物輸送力の増強など貨物鉄道に対する支援措置を強化します」ということを主張しており、「モーダルシフトの推進」に取り組んできました。
 さて、JR貨物は経常赤字が続く一方で、老朽設備の継承によって3000億円を超える更新投資を余儀なくされ、今後も新型機関車への更新に多額の投資が必要になるなど、設備投資で借入金は増大することが予想されています。貨物の経営の圧迫は、「分割・民営化」の矛盾に行き着くと思います。要員も大きく抑制されています。貨物会社の「新中期計画」では、収入確保に向けた具体的な施策は何ら示されておらず、自助努力を命題に「収入が上がらない分は経費の削減で」と、あまりに安易な人減らしと、賃金抑制だけの収支改善が図られようとしています。
 一方、国は「新物流施策大綱」で、モーダルシフト化率を2010年までに50%にする(現在43%)としながらており、民間会社だからと渋っています。しかし、151国会の附帯決議の中に、行政としてもJR貨物の経営動向を踏まえつつ、その改善に資する所要の措置を講ずることとすると附帯決議が付されています。国が21世紀における鉄道貨物輸送の公共性を十分認識し、貨物会社が成り立つような経営構造をきちんと国側が責任をもって果たすべきです。税財政上の支援を含め、積極的に貨物鉄道支援に乗り出すべきではないでしょうか。
 社民党は、コンテナ貨物輸送力増強支援と新幹線並行在来線貨物対策の強化、旅客鉄道と貨物鉄道のダイヤ等の調整の円滑化などの課題に取り組んできました。引き続き貨物輸送の復権・充実に向け全力で取り組んでいきます。
 なお高速道路の無料化は、受益者負担のあり方から見て不公正であるだけでなく、温暖化対策や騒音・大気汚染対策、公共交通の利用促進といった交通政策に逆行するなどの問題があると考えています。

5)

羽田空港は再拡張により航空機の発着量が一・五倍になるとされていますが、温暖化ガスの排出量削減が緊急の課題とされる中、とりわけ温暖化効果の高いとされる航空量を増やすことに為政者の誰も疑念を抱かずにいることは訝しいことと言わねばなりません。これ以上の空港整備は中止し、高速鉄道を整備し、環境への負荷の大きい航空輸送から鉄道への乗換えを進めることが必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 方向性としては賛成です。たしかに国土の均衡ある発展と環境重視に合致した大量高速輸送網整備の観点からは、飛行機より新幹線に優位性があります。しかし、どういう交通モードを選択・重視していくのかについては、新幹線をはじめとする鉄道、高速道路、空港、港湾について、それぞれの財源の重点的・効率的使用や総合交通体系確立の観点から、考えていくことが必要ではないでしょうか。
 なお159通常国会で、「東京国際空港における緊急整備事業の円滑な推進に関する特別措置法案」が審議され、成立しまいましたが、社民党は反対しました。それは、①羽田の国際化の進展によって、「成田は国際、羽田は国内」としてきたこれまでの航空行政の原則の崩壊につながり、千葉県財政や経済にも大きな影響を及ぼしかねないこと、②成田空港建設には、千葉県民が多大な犠牲を払ったという、歴史的な事情があること、③羽田空港の4本目の滑走路(2009年完成予定)に伴う国交省の飛行ルート案については、ルートの大部分が千葉県側に集中していることから、騒音や電波障害などの問題の首都圏の共有化にも反し、千葉県側に大きな負担が押しつけられること。とくに重量級の国際線航空機によって、さらに騒音が増大・拡大することは論を待たないこと、④羽田で国際便が運行されれば、有事等における米軍による成田の軍事利用を容易にしかねないこと、⑤東京湾の船舶の安全上の問題や東京湾の環境問題、漁民の被害が生じることなどの理由からでした。

6)

鉄道整備は新幹線や地下鉄の新規建設に偏り、地方鉄道や路面電車は独立採算を求められるばかりで最低限の安全性の確保さえ難しい状況に追い込まれています。在来線への再投資を進める財政上の枠組みが必要であると思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 賛成です。地方鉄道は、定時性、安全性、大量輸送の優位性から、通勤・通学者及び交通弱者の足として地域にとって不可欠な交通手段であり、さらに、地球環境問題、地域の社会経済活動やまちづくりの観点からも重要な役割を担っており、欠くことのできない社会基盤です。しかし、地方鉄道の現状は、道路整備及びモータリゼーションの進展によって収支採算性は極めて厳しいことに加え、交通運輸分野における需給調整規制の廃止などで市場原理にさらされ、路線の廃止や縮小問題が相次いでいます。国鉄の特定地方交通線から転換した第3セクターも、開業後10年以上が経過しましたが、累積欠損が続いています。また、列車衝突事故の発生など経営や安全管理に関係する事例も発生しています。こうした状況の中、鉄道事業者は、沿線自治体からの各種助成を受けながら、経営の合理化に努め、収支改善と運行維持のために懸命に努力しているにもかかわらず 毎年多額の赤字欠損を計上しているのが実状です。
 地方鉄道は地域住民の足であり、沿線の地域としての連続性を培ってきた重要な社会資本として地域の発展に寄与し、地域性の創出を助けてきた地域の資産とみることができます。社民党は、「公共近距離輸送は生存配慮にかかわるので維持せよ」というドイツの「地域における公共近距離旅客輸送に関する法律」にならい、「公共交通の根幹をなす鉄道を守る」立場に国・自治体の交通政策を転換させるべきだと考えています。具体的には、地域住民の生活路線であり、鉄道ネットワークをなす地方鉄道に対する補助制度を抜本的に見直すとともに、基盤保有と運行を分離する「上下分離」方式の活用を検討します。
 最近では茨城県の日立電鉄の廃線問題が浮上し、社民党は国会議員調査団の派遣や、自治体要請、署名運動などに取り組んでいます。また、「①地方鉄道事業者の経営安定を図るため、経常損失補助の復活など地方鉄道事業者に対する支援措置の充実を検討すること。②地方鉄道の安全性向上のため、安全対策の補助金を充実すること。③第3セクター鉄道会社を構成する自治体または同会社へ助成する自治体に対する財政支援措置を拡充すること。④鉄道施設についても道路や橋と同じ地域の基礎的社会インフラと見なし、線路の整備・維持管理を公共で行う仕組みを確立し、そのための財政支援制度を創設すること。⑤地方鉄道に対する「需給調整規制廃止」の見直しを検討すること」という趣旨の「地方鉄道の維持・確保に関する意見書」の自治体議会採択運動にも取り組んでいます。
 地域における公共交通の整備は、地域振興や雇用、市街地活性に効果があり、鉄道を地域住民の共同の社会資本と位置づけ、駅を拠点とした街づくり、アクセスや利便性の向上、駅周辺整備の推進や「ルーラルレイルウェイツーリズム」など、鉄道を核とした地域振興を進めていきます。

7)

自転車利用の推進は、総論としては賛成されますが、現実には自転車の走行空間の拡大は遅々として進んでいません。片側二車線以上ある道路では必ず一車線を自転車(およびバス)の優先車線とする、片側三車線以上ある道路では必ず一車線を自転車の専用車線とする、といった判断が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 賛成です。自転車が車道から追い払われ、歩道で歩行者を追い払っているのが現状ではないでしょうか。クリーンな乗り物である自転車の活用を進めていくためにも、非常に遅れている自転車道や自転車通行帯、自転車駐輪場の整備を推進するとともに、サイクル・アンド・バスライドや生活に密着した循環型自転車活用制度(レンタサイクル)を広げていきたいと考えています。

8)

また自転車利用の促進のためには、自転車通勤者に対する通勤手当の割増や、税制優遇などの政策が必要と思いますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 自転車よりもエコロジカルな徒歩通勤者との公平性をどう確保するのかもありますが、一つのアイデアとして研究していきます。

9)交通安全

交通事故件数・死傷者数は、目標を立てて半減また半減と、零を目指してたゆまず努力していかなくてはならないものと考えますが、交通事故を減らすための具体的手段として貴党はどのような政策をお持ちかお聞かせ下さい。

回答

 クルマ社会の進展は、急激な交通事故の増加を招き、死傷者の激増をもたらしました。まず歩行者と車が同じ道を通行することが事故の大きな要因の一つですから、歩車道の完全分離を推進するとともに通行区分の明確化を徹底し、またスクールゾーンの増設やコミュニティ道路の充実を図っていきます。交差点における歩行者優先の原則を徹底するとともに、「人にやさしい」視点で歩行者安全策を追求します。踏切の歩道設置や、踏切への点字ブロック設置を進めるなど、人にやさしい踏切にします。自転車事故や歩行者への傷害事故を防止するため、非常に遅れている自転車道の整備や自転車通行帯の充実を推進していきます。車対車の事故防止のためには、道路標識や信号機の改善を図ります。また、交通安全教育のいっそうの推進や、自動車教習の強化など運転者対策も充実させます。交通事故被害者のケアを充実するとともに、事故調書の早期開示を検討します。各省庁の連携を強化するとともに、自治体が独自に交通実態にあった交通安全行政を展開できるようになることを追求します。また、トラック装飾板やカンガルー・バーの禁止など、歩行者の安全面から車両構造の基準を見直します。後ろからきた車のサイドミラーによる歩行者の事故も増えており、サイドミラーのあり方についても見直しすべきだと考えます。

10)

事故時の映像や時速、ハンドルの動きなどを記録するドライブレコーダーは事故の実証的な解析に極めて有効であり、危険な運転を抑止する効果も見込めることから、全ての自動車に搭載を義務付けるべきであると考えますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答

 賛成です。有効性が高いと思います。交通事故の捜査を巡っては、信号の色や飛び出しの状況などが問題となるケースも多く、事故前後の状況を映像として残す車載カメラやドライブレコーダーは、交通法規を守る運転者を法的に保護するほか、事故抑止にも効果があると評価できます。巻き尺と当事者の言い分に頼らざるを得ない現状では事実解明が難しいことから、ドライブレコーダーの導入は、交通事故捜査の点からも有効です。同時に被害者が求める情報の開示にもつながる効果もあります。また、運転手の側からも、きちんと安全運転していたとしても万一事故を起こしたときに、不当な加害者扱いされないようにできるほか、記録されることを意識することで、事故防止にもつながるという効果があります。社民党としてもドライブレコーダーの開発・普及の促進とあわせて義務付けを求めていきます。

11)子供の遊び場
かつて路地や空地は子供の遊び場であり、子供の心身の発育、社会性の育成のための大切な場所でした。それが昨今は、路地は通り抜け道路となり、空地は駐車場と化して、子供達は駆逐されました。TVゲームを止めて外で遊ぼうにも、その場所は見つけ難いのが現状で、近年の子供の基礎体力低下の原因ともなっていると考えられ、戸外で遊ぶための場所を確保することは教育政策上も重要な課題と思われます。路地での自動車の走行を制限し、路地を子供達に返還すること、また空地を子供の遊び場として提供した場合には固定資産税を減免するといった施策が必要と思われますが、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

〈回答〉
 賛成です。都市緑地や里山に対する固定資産税の減免制度を求めてきましたが、少子化の時代において子どもたちのための施策はますます重要であり、子どもの遊び場としての提供も税制上の優遇をすべきです。かつて存在した「はらっぱ」のような子どもたちのフリーな空間をつくることや、小中学校の通学路の緑道化・車乗り入れ禁止も進めていきます。

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