2024年4月20日に開催された講演の内容の続きです。
3. AAA=All Ages and Abilities
アクティブ交通の多様性をあらわすキーワードとして「AAA(トリプルエー)」というものがあります。All ages and abilities、あらゆる年齢・能力の人のことです。
これは北米の各都市の交通局でつくる組織による自転車インフラ設計ガイドのひとつですが、AAAがはっきりと表題に掲げられています。
60% 関心はあるが不安
基本的に自転車利用に関心があるものの、分離型の走行空間がないことが理由でためらっているケースが多い。 自転車に乗るのは好きだが、あくまで低ストレスなルート限定で、安全性の高い走行空間を好む度合いが高い。 このグループの 60% は女性と子ども (とその親) と高齢者で構成されている。 |
6.5% 熱心で自信もある
不安を感じる状況は少ないながらゼロではない、という自転車利用者。しっかりした自転車走行空間が整備されていれば、そちらを好む。このグループの 75% は男性で、また80% は 18歳 ~ 54歳。 |
0.5% 届強で恐れ知らず 自信に満ち、何も恐れず自転車に乗る人。分離型の自転走行空間を必要とせず、それを拒絶することもある。このグループの 85%は男性で、また 90% は 18歳 ~ 40歳。 |
33% 自転車なんて考えられない
どんな条件下でもとにかく自転車になど乗らないという人や、健康上の理由で乗れない人、移動距離が長過ざるといった人。 |
(C) ADFC
この図は、AAAという言葉が定着する以前、ポートランド交通局のロジャー・ゲラー氏が提唱した「自転車利用の4分類」です。アメリカでは長い間、「屈強で恐れ知らず」な人の意見に基づいた自転車政策が進められてきたので、そういう人たちしか自転車に乗れなくなってしまいました。この層はほとんどが男性、それも若者から中年の、フィジカルに恵まれた人たちです。アメリカでは、自転車は彼らがスポーツや趣味で乗るもの、または子どものおもちゃだと思われてきました。
自転車利用を伸ばすために注目すべきは、やはり大多数を占める「関心はあるが不安」な層です。この層の多くは女性や子ども、高齢者で、こうした人たちがメインターゲットであることを端的に表したのがAAAという言葉なんですね。