公開質問

クルマ問題と交通政策に関する政党アンケート ~ 2009年総選挙にあわせ政策を問う ~

投稿日:2009年7月27日 更新日:

 衆議院の解散・総選挙の機会に、主要8政党に宛てて 4章17項目の政策アンケートを実施しました。回答状況とその内容は次のとおりです。あらゆる人の日々の生活に密接に係わる交通分野では、どの政党がどんな政策を持っているのか。皆様の政策選択のご参考にしていただければ幸いです。

発送時点にて、政党助成法の政党要件を満たし次期総選挙に候補者が立つ見込みとなっていた全政党。また、アンケート締切後に結党した みんなの党 には、後日FAXで質問書を送る追加対応を行いました。
2009.08.31: みんなの党 への対応を追記、一部回答の誤字訂正、無回答政党の政策へのリンク追加、および回答へのリンクが分かりやすいよう移動をしました。

回答状況

回答あり:民主党、公明党、日本共産党、社会民主党、国民新党
上記5政党からご回答をいただきました。ありがとうございました。

無回答:自由民主党、改革クラブ、新党日本、みんなの党
各党の政策ご担当者様に質問書を郵送するとともに電話を差し上げてお願いし、ご検討いただきましたが、残念ながら、回答できない、対応できない等のお返事をいただくか、投票日までに回答をいただくことができませんでした。

各党からの回答

回答一覧表(PDFファイル)

民主党からのご回答

ご回答日: 8月 3日(消印、FAX)

1.歩行者・自転車利用者の安全・安心

交通事故死者が減ったと言われる半面、昨年度だけで見ても阪神淡路大震災の犠牲者に相当する被害者・犠牲者を毎年出し続けているような状況で、事故件数も高止まっています。特に昨年度は歩行者・自転車乗車中の交通死者が半数近くにのぼり、先進国では例を見ない異常事態が続いていますが、これは安易なクルマの使用を是認する社会のツケが、クルマに乗らない選択をする歩行者・自転車利用者に転嫁されているという、極めて理不尽な実態があることを表しています。

自動車が歩行者を殺傷する「事故」は後を絶たず、最近報道されただけでも、生活道路において暴走自動車が子供を轢き殺す、歩道で信号待ちをしている人を危険運転のクルマが轢き殺す、歩道に乱入したクルマが歩行者をはね飛ばす、といった凄惨な事件が頻発していますが、繰り返されるこれらの「事故」も、都度反省をし、下記のような対策がきっちり取られていれば防げたものが多いと指摘されています。

1ー1.通学路の安全確保

歩車分離されていない全ての通学路において、速度制限の強化やハンプ等を用いて自動車が速度を出せない構造にすること、交差点を歩車分離信号にすることなどによる安全性向上策が有効と指摘されています。こうした施策をどう評価されますか。

賛成 反対
理由:今後精査して評価をしていきます
1ー2.生活道路の交通規制の在り方見直し

自動車の走行速度が30km/hを超えると、交通事故被害者(歩行者・自転車)の重体・死亡に至るリスクが急激に高まることが知られています。生活者の安全・安心を確保するため、全ての繁華街・住宅街の道路を30km/h以下に制限することが有効と指摘されていますが、この施策をどう評価されますか。

賛成 反対
理由:今後精査して評価をしていきます
1ー3.ドライブレコーダーの普及

自動車交通事故の原因究明と抑止に効果があり、しかも比較的安価(現在実施されている「エコカー」補助金の 1/3 程度)に搭載が可能なドライブレコーダー(事故発生前後の映像・運転操作等を自動的に記録する装置)が、営業車への導入は進んできましたが、自家用車への導入がいっこうに進みません。普及させるための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:今後検討していきます
1ー4.ITS等による安全対策

ITS等の新技術を活用した制限速度・信号遵守システムや、酒酔い運転防止システムが実用段階に入っています。これらの装備の普及・義務化や、道路側の関連インフラ整備などをすすめるための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:今後検討していきます
1ー5.交通事故対策

貴党では、歩行者・自転車利用者が被害者になる交通事故をなくすための具体的な政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

ある ない
具体的に:民主党としては先に法案を提出して、飲酒運転・無免許運転など悪質な交通犯罪への量刑引き上げ法の成立をリードした経緯があります。これらの法律の厳正な執行も含めてあるべき政策を検討していきます。

2.環境・公害・エネルギー問題の改善

京都議定書後の地球温暖化対策を決めるCOP15の開催を控え、また今後の私たちの生活を持続可能なものにするためにも、枯渇に向かう石油に頼らない社会の仕組みづくりが求められています。

交通部門は国内のエネルギー消費量の2割を占め、そのうち自動車が9割を占めています。特に1990年比で5割以上も増えた自家用乗用車いわゆる「マイカー」は、平均わずか1.5人を運ぶために 1t もの塊を動かす必要があるため、そのエネルギー消費量は鉄道の10倍、路線バスの3-4倍にのぼり、いわゆる「エコカー」への切り替えでは莫大な費用がかかる割りに僅かな効果しか見込めないことから、まずはクルマを減らして鉄軌道・バスや自転車の利用を増やすことが必要であると指摘されています。
また、工場排煙への環境対策が進む半面、自動車排ガス対策は進まず、特に自動車走行量が増えたことによる公害が深刻度を増しています。喘息罹患者数が急増し続けており、特に幹線道路沿いの健康被害が著しく顕れるなど、自動車排ガスによる公害がますます深刻になっています。

2ー1.クルマ以外の交通手段への転換促進策

日常生活におけるクルマ依存が、渋滞や環境、健康などへの悪影響を及ぼすことから、たとえばロードプライシング(渋滞課徴金など、あえてマイカー利用を選択する者の負担を引き上げる施策)やモビリティ・マネジメント(情報提供などによりマイカー以外の利用をすすめる施策)など、マイカーから公共交通や自転車、徒歩などへの転換をすすめるための政策が提案されています。このような、過度なクルマ利用を減らすための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:首都高速・阪神高速など渋滞が想定される路線・区間などについては交通需要管理(TDM)の観点から社会実験(5割引、7割引等)を実施して影響を確認しつつ、実施します。総合交通ビジョンの策定に際しては、自動車中心の街づくり政策の転換の視点も、
2ー2.貨物輸送のモーダルシフト

現状では陸上貨物輸送の9割を自動車が占めていますが、中長距離は鉄道などを、末端部は台車や自転車などを活用することで、貨物自動車を減らすモーダルシフトをすすめることが必要です。そのための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:物流分野において、トラックによる輸送との共存を図りつつ、環境負荷の小さい船舶や鉄道輸送へと転換(モーダルシフト)する政策を展開します。荷主が輸送機関を選択する立場にあることを重視し、荷主等にモーダルシフト推進計画の策定と実施状況の報告を義務付けます。
2ー3.クルマの総量を減らすための施策

道路整備を進める理由にはよく「渋滞解消」や「環境対策」が挙げられていますが、需要管理がされてこなかったため、結果として道路整備により便利になった自動車は走行量が増え、1990年から2007年まで自家用乗用車から排出される CO2 が5割増になるなど、自動車が原因となる環境問題や渋滞は悪化し続けてきました。このような問題を解消させるためにはクルマの走行量そのものを減らすための政策が必要と考えられますが、そうした政策を持っていますか。

ある ない
具体的に:以下の三つの視点で総合交通ビジョンを策定し、その実現を目指します。 (1)自動車中心の街づくり政策を転換し、路線バスや軌道系交通(鉄道、路面電車、次世代型路面電車システム(LRT)等)を充実 (2)道路を整備する費用をバス事業者等に補助し、サービスが向上するインセンティブを与えることにより移動困難者の利便性を確保 (3)路線バスや軌道系交通機関などのマス・トランスポーテーションを見直し、環境負荷の低減につながるモード(交通機関)の整備――などに努めます。
2ー4.PM2.5(微小粒子状物質)への環境基準の設定

自動車や工場などから排出され、呼吸器はもとより循環器系疾患の原因にもなると指摘されている微小浮遊粒子状物質 (PM2.5) への環境基準設定の議論が進んでいます。今のところ年平均値で 15μg/m3(米国が採用する、死亡リスクが高まる水準)かそれ以下の環境基準設定が検討されています(中央環境審議会 大気環境部会 答申案)。この環境基準設定に賛成ですか。
また、WHO では同 10μg/m3(健康リスクが高まる水準)をガイドラインとしています。日本の環境基準の思想に照らし、適切だと考えられる水準がありましたらご記入ください。

賛成 反対
適切な基準:自動車NOx・PM法に基づく対策地域を有する大都市圏での二酸化窒素濃度や浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準が依然として未達成のままであることから、道路環境対策(交差点の立体化や踏切の改良等)、流入車対策(ロードプライシング制度の導入等)や排ガス削減対策(低公害車の導入促進等)など、大気環境改善のための諸政策を積極的に推進します。
2-5.自動車諸税を自動車の外部費用課税と位置付けること

自動車関連税(自動車税、重量税、ガソリン・軽油・LPGへの課税)の大部分は、昨年度までは「道路特定財源」と言われ、税収をすべて自動車利用者の便益向上に使う仕組みになっていました。反面、自動車の利用が周囲に及ぼす影響(健康被害や地球温暖化など)については考慮すらされず、たとえば喘息などの公害病を患った人の半数は仕事を失い、苦しい生活を強いられる上に医療費なども負担させられてきました。
このような実情を踏まえ、自動車への課税は外部費用課税であると明確に位置付け、その課税を強化するとともに、公害や交通事故等の被害者への補償、および抜本的な環境対策(公共交通の利用促進など)を行う必要があると考えられますが、これに賛成ですか。

賛成 反対
理由:今後、検討します
2-6.環境・エネルギー対策

貴党では、自動車が原因となる大気汚染・騒音・振動などの環境・エネルギー問題を抜本的に改善するための政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

ある ない
具体的に:今後、検討します

3.公共交通・自転車利用環境の充実

道路上の安全・安心や環境にやさしい生活を実現するためには、クルマに依存しない生活ができる環境整備が欠かせませんが、道路が税金で造られる半面、同じく私たちの生活を支えている鉄軌道や路線バスには厳しい独立採算が求められ、郊外はおろか都市部ですら路線の縮小・廃止が相次いでいます。
また、環境にやさしく、適切に使えば安全性も高い自転車についても、走行空間の未整備や誤った利用(歩道走行や逆走など)が問題になっています。
さらに、エネルギーの大量消費を前提とする自動車利用を減らし公共交通や自転車の利用を促進する政策を実施することで、域外への所得流出を減らし、可処分所得の増加や地域経済の活性化に有効との指摘もあります。

3-1.地方鉄道や路線バスの再生

存続の危機に瀕した地方鉄道や路線バスの再生・活性化が全国的な課題となっており、たとえば鉄軌道では上下分離(軌道や駅などの設備にかかる費用は公共部門が負担し、運行・サービスは民間が提供する)の導入などが、路線バスでは運行費補助の強化などが必要と指摘されています。このように地方鉄道や路線バスの廃止を防ぎ再生させるための具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:バスも含めて、地域の公共交通の維持・再生・活性化の施策を充実させます。
3-2.LRT・BRT・コミュニティ交通の導入促進

公共交通の利用者を増やすために、幹線には快適で便利な LRT(次世代型路面電車)・BRT(バス高速交通)の、末端部にはきめ細かなコミュニティ交通の導入が期待されていますが、法規制や財源などの壁が立ちはだかっています。これらの普及促進のため、既存車道の再配分をはじめとする導入空間や財源の確保、法整備などを含めた具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:次世代型路面電車システム(LRT)などの導入も含めて、地域の公共交通の維持・再生・活性化の施策を充実させます。
3-3.自転車の適切な活用

自転車が本来持つ安全性や利便性を発揮させるためには、自転車の車道走行の徹底や、既存の車道に自転車レーンを確保することなどが求められています。そのための具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:自転車道の適正な整備、自転車の通行ゾーン設置に関する明確な指針づくりに努めます。

4.総合的な交通政策

 私たちの毎日の生活に欠かすことのできない交通において、上記のような様々な問題が噴出していますが、その改善はいっこうに進みません。こうした問題を改善してゆくためには、自動車単体など個別の改善では限界があり、総合的な交通政策が求められています。
 たとえば、早くからクルマ社会の弊害を経験し、近年急速に改善が進む欧州では、道路上での優先順位を

「子供・車椅子など>歩行者>自転車・公共車両(路線バスなど)>貨物自動車>自家用乗用車」

であると確認したからこそ、人にやさしい市街地形成や、LRT・貸し自転車の導入などの分野横断的な施策を進められたのだとも言われています。

4-1.交通権

クルマに乗らない・乗れない人を含めたあらゆる人に、日常生活に必要な移動を保障する観点から、交通権の保障を定めた法律が必要との意見があります。このような法整備をどう評価されますか。

必要 不要
具体的な内容や理由:「交通基本法」を制定し、国民の「移動の権利」を保障し、新時代にふさわしい総合交通体系を確立します。
4-2.「高速値下げ」への評価

今春より実施された「高速道路料金の大幅引き下げ」により、JR旅客各社の鉄道利用者が未曾有の減少を記録した他、地方鉄道や高速バス、フェリーなどにも深刻な悪影響が出ており、特に週末の高速バスは渋滞に巻き込まれて実質機能不全に陥っています。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

良い 悪い
今後の対応:自公政権の割引策は「土日・乗用車・ETC搭載車」に対象を限定するなど不公平な割引策で、しかも期間が2年間限定であり、その後の展望は示していません。高速道路は原則無料化すべきであり、あわせて総合交通体系をしっかり確立すべきです。
4-3.マイカー優遇策(「エコカー」減免税、補助金)への評価

実質的にマイカー利用のみを有利にしている「エコカー」減免税や補助金などの優遇策は本当に「エコ」なのか?という指摘が相次いでいます。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

良い 悪い
今後の対応:環境対応車などの購入を助成すべきと考えます。政府の施策については精査して、評価を行います。

ありがとうございました。

公明党からのご回答

ご回答日: 8月 4日(消印)

1.歩行者・自転車利用者の安全・安心

交通事故死者が減ったと言われる半面、昨年度だけで見ても阪神淡路大震災の犠牲者に相当する被害者・犠牲者を毎年出し続けているような状況で、事故件数も高止まっています。特に昨年度は歩行者・自転車乗車中の交通死者が半数近くにのぼり、先進国では例を見ない異常事態が続いていますが、これは安易なクルマの使用を是認する社会のツケが、クルマに乗らない選択をする歩行者・自転車利用者に転嫁されているという、極めて理不尽な実態があることを表しています。

自動車が歩行者を殺傷する「事故」は後を絶たず、最近報道されただけでも、生活道路において暴走自動車が子供を轢き殺す、歩道で信号待ちをしている人を危険運転のクルマが轢き殺す、歩道に乱入したクルマが歩行者をはね飛ばす、といった凄惨な事件が頻発していますが、繰り返されるこれらの「事故」も、都度反省をし、下記のような対策がきっちり取られていれば防げたものが多いと指摘されています。

1ー1.通学路の安全確保

歩車分離されていない全ての通学路において、速度制限の強化やハンプ等を用いて自動車が速度を出せない構造にすること、交差点を歩車分離信号にすることなどによる安全性向上策が有効と指摘されています。こうした施策をどう評価されますか。

賛成 反対
理由:生活道路や通学路における歩行者の安全対策に有効であり、緊急性を見極めつつ、必要に応じて講じていくべきと考えます。
1ー2.生活道路の交通規制の在り方見直し

自動車の走行速度が30km/hを超えると、交通事故被害者(歩行者・自転車)の重体・死亡に至るリスクが急激に高まることが知られています。生活者の安全・安心を確保するため、全ての繁華街・住宅街の道路を30km/h以下に制限することが有効と指摘されていますが、この施策をどう評価されますか。

賛成 反対
理由:人が密集する繁華街や住宅街における安全・安心の確保に有効であり、安全性・利便性を判断しつつ講じていくべきと考えます。
1ー3.ドライブレコーダーの普及

自動車交通事故の原因究明と抑止に効果があり、しかも比較的安価(現在実施されている「エコカー」補助金の 1/3 程度)に搭載が可能なドライブレコーダー(事故発生前後の映像・運転操作等を自動的に記録する装置)が、営業車への導入は進んできましたが、自家用車への導入がいっこうに進みません。普及させるための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:営業車、自家用車ともにドライブレコーダーのさらなる普及を図るためには、メーカーによって異なる機材の仕様を統一するなどの課題に対して取り組んでいく必要があります。
1ー4.ITS等による安全対策

ITS等の新技術を活用した制限速度・信号遵守システムや、酒酔い運転防止システムが実用段階に入っています。これらの装備の普及・義務化や、道路側の関連インフラ整備などをすすめるための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に: ITSのさらなる活用については、今後、多様なITSサービスを汎用的に実現するプラットフォームとして、次世代の道路「スマートウェイ」を官民一体となって推進します。
1ー5.交通事故対策

貴党では、歩行者・自転車利用者が被害者になる交通事故をなくすための具体的な政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

ある ない
具体的に:既存道路の歩行者専用道路への転換やトランジットモール等の新しい専用道路概念の導入など、生活に密着した人間重視の道路整備を進めていきます。

2.環境・公害・エネルギー問題の改善

京都議定書後の地球温暖化対策を決めるCOP15の開催を控え、また今後の私たちの生活を持続可能なものにするためにも、枯渇に向かう石油に頼らない社会の仕組みづくりが求められています。

交通部門は国内のエネルギー消費量の2割を占め、そのうち自動車が9割を占めています。特に1990年比で5割以上も増えた自家用乗用車いわゆる「マイカー」は、平均わずか1.5人を運ぶために 1t もの塊を動かす必要があるため、そのエネルギー消費量は鉄道の10倍、路線バスの3-4倍にのぼり、いわゆる「エコカー」への切り替えでは莫大な費用がかかる割りに僅かな効果しか見込めないことから、まずはクルマを減らして鉄軌道・バスや自転車の利用を増やすことが必要であると指摘されています。
また、工場排煙への環境対策が進む半面、自動車排ガス対策は進まず、特に自動車走行量が増えたことによる公害が深刻度を増しています。喘息罹患者数が急増し続けており、特に幹線道路沿いの健康被害が著しく顕れるなど、自動車排ガスによる公害がますます深刻になっています。

2ー1.クルマ以外の交通手段への転換促進策

日常生活におけるクルマ依存が、渋滞や環境、健康などへの悪影響を及ぼすことから、たとえばロードプライシング(渋滞課徴金など、あえてマイカー利用を選択する者の負担を引き上げる施策)やモビリティ・マネジメント(情報提供などによりマイカー以外の利用をすすめる施策)など、マイカーから公共交通や自転車、徒歩などへの転換をすすめるための政策が提案されています。このような、過度なクルマ利用を減らすための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:各種交通機関の特性と地域のニーズに的確に対応し、LRTの整備やモーダルシフトの推進など低炭素社会に資する新たな交通総合システムを構築。また、医・職・住・遊など、日常生活の諸機能を集約したコンパクトシティを推進します。
2ー2.貨物輸送のモーダルシフト

現状では陸上貨物輸送の9割を自動車が占めていますが、中長距離は鉄道などを、末端部は台車や自転車などを活用することで、貨物自動車を減らすモーダルシフトをすすめることが必要です。そのための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:
2ー3.クルマの総量を減らすための施策

道路整備を進める理由にはよく「渋滞解消」や「環境対策」が挙げられていますが、需要管理がされてこなかったため、結果として道路整備により便利になった自動車は走行量が増え、1990年から2007年まで自家用乗用車から排出される CO2 が5割増になるなど、自動車が原因となる環境問題や渋滞は悪化し続けてきました。このような問題を解消させるためにはクルマの走行量そのものを減らすための政策が必要と考えられますが、そうした政策を持っていますか。

ある ない
具体的に:上記(2-1)で記した施策を推進するとともに、過疎地域などにおける公共交通機関を整備。あわせて交通安全施策を図りつつ、各地域の事情を勘案し、自主性を尊重しながら地域の取り組みを応援します。
2ー4.PM2.5(微小粒子状物質)への環境基準の設定

自動車や工場などから排出され、呼吸器はもとより循環器系疾患の原因にもなると指摘されている微小浮遊粒子状物質 (PM2.5) への環境基準設定の議論が進んでいます。今のところ年平均値で 15μg/m3(米国が採用する、死亡リスクが高まる水準)かそれ以下の環境基準設定が検討されています(中央環境審議会 大気環境部会 答申案)。この環境基準設定に賛成ですか。
また、WHO では同 10μg/m3(健康リスクが高まる水準)をガイドラインとしています。日本の環境基準の思想に照らし、適切だと考えられる水準がありましたらご記入ください。

賛成 反対
適切な基準:重点的な取り組みと考えますが、現在は具体的な基準は検討しておりません。
2-5.自動車諸税を自動車の外部費用課税と位置付けること

自動車関連税(自動車税、重量税、ガソリン・軽油・LPGへの課税)の大部分は、昨年度までは「道路特定財源」と言われ、税収をすべて自動車利用者の便益向上に使う仕組みになっていました。反面、自動車の利用が周囲に及ぼす影響(健康被害や地球温暖化など)については考慮すらされず、たとえば喘息などの公害病を患った人の半数は仕事を失い、苦しい生活を強いられる上に医療費なども負担させられてきました。
このような実情を踏まえ、自動車への課税は外部費用課税であると明確に位置付け、その課税を強化するとともに、公害や交通事故等の被害者への補償、および抜本的な環境対策(公共交通の利用促進など)を行う必要があると考えられますが、これに賛成ですか。

賛成 反対
理由:自動車関係諸税については、「取得」「保有」「走行」の多段階にわたる税制について、その簡素化を図る必要があると認識しています。ただし、その際、環境対策の観点などから、一律に暫定税率を廃止することには反対です。
2-6.環境・エネルギー対策

貴党では、自動車が原因となる大気汚染・騒音・振動などの環境・エネルギー問題を抜本的に改善するための政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

ある ない
具体的に

3.公共交通・自転車利用環境の充実

道路上の安全・安心や環境にやさしい生活を実現するためには、クルマに依存しない生活ができる環境整備が欠かせませんが、道路が税金で造られる半面、同じく私たちの生活を支えている鉄軌道や路線バスには厳しい独立採算が求められ、郊外はおろか都市部ですら路線の縮小・廃止が相次いでいます。
また、環境にやさしく、適切に使えば安全性も高い自転車についても、走行空間の未整備や誤った利用(歩道走行や逆走など)が問題になっています。
さらに、エネルギーの大量消費を前提とする自動車利用を減らし公共交通や自転車の利用を促進する政策を実施することで、域外への所得流出を減らし、可処分所得の増加や地域経済の活性化に有効との指摘もあります。

3-1.地方鉄道や路線バスの再生

存続の危機に瀕した地方鉄道や路線バスの再生・活性化が全国的な課題となっており、たとえば鉄軌道では上下分離(軌道や駅などの設備にかかる費用は公共部門が負担し、運行・サービスは民間が提供する)の導入などが、路線バスでは運行費補助の強化などが必要と指摘されています。このように地方鉄道や路線バスの廃止を防ぎ再生させるための具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:自治体、鉄道業者が連携して実地する地域の意欲的な取り組みへの支援や地方の赤字バス路線維持のための公共機関に対する公的助成を行います。
3-2.LRT・BRT・コミュニティ交通の導入促進

公共交通の利用者を増やすために、幹線には快適で便利な LRT(次世代型路面電車)・BRT(バス高速交通)の、末端部にはきめ細かなコミュニティ交通の導入が期待されていますが、法規制や財源などの壁が立ちはだかっています。これらの普及促進のため、既存車道の再配分をはじめとする導入空間や財源の確保、法整備などを含めた具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:道路法制上において軌道を積極的かつ明確に位置付けるとともに、技術的な基準の見直し及び事務手続きを効率化します。
3-3.自転車の適切な活用

自転車が本来持つ安全性や利便性を発揮させるためには、自転車の車道走行の徹底や、既存の車道に自転車レーンを確保することなどが求められています。そのための具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:道路空間の再配分やトランジットモール等の新しい専用道路概念を導入します。

4.総合的な交通政策

 私たちの毎日の生活に欠かすことのできない交通において、上記のような様々な問題が噴出していますが、その改善はいっこうに進みません。こうした問題を改善してゆくためには、自動車単体など個別の改善では限界があり、総合的な交通政策が求められています。
 たとえば、早くからクルマ社会の弊害を経験し、近年急速に改善が進む欧州では、道路上での優先順位を

「子供・車椅子など>歩行者>自転車・公共車両(路線バスなど)>貨物自動車>自家用乗用車」

であると確認したからこそ、人にやさしい市街地形成や、LRT・貸し自転車の導入などの分野横断的な施策を進められたのだとも言われています。

4-1.交通権

クルマに乗らない・乗れない人を含めたあらゆる人に、日常生活に必要な移動を保障する観点から、交通権の保障を定めた法律が必要との意見があります。このような法整備をどう評価されますか。

必要 不要
具体的な内容や理由:「道路に対する多様なニーズに応えうる施策を含め、安全で快適な歩行空間や自転車利用環境の整備等の観点から進めていくことが重要と考えます。
4-2.「高速値下げ」への評価

今春より実施された「高速道路料金の大幅引き下げ」により、JR旅客各社の鉄道利用者が未曾有の減少を記録した他、地方鉄道や高速バス、フェリーなどにも深刻な悪影響が出ており、特に週末の高速バスは渋滞に巻き込まれて実質機能不全に陥っています。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

良い 悪い 
今後の対応:生活対策、地域活性化としての現行の割引制度を実施するとともに、フェリー等の運賃の低減などの離島航路対策や地方鉄道の再生、地方の赤字バス路線などの維持のための公的助成を実施します。
4-3.マイカー優遇策(「エコカー」減免税、補助金)への評価

実質的にマイカー利用のみを有利にしている「エコカー」減免税や補助金などの優遇策は本当に「エコ」なのか?という指摘が相次いでいます。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

良い 悪い 
今後の対応:経済対策として行っているエコカーへの減免税や補助は、環境面から見ても十分な効果を生むと考えています。

ありがとうございました。

日本共産党中央委員会からのご回答

ご回答日: 8月 3日(消印)

1.歩行者・自転車利用者の安全・安心

交通事故死者が減ったと言われる半面、昨年度だけで見ても阪神淡路大震災の犠牲者に相当する被害者・犠牲者を毎年出し続けているような状況で、事故件数も高止まっています。特に昨年度は歩行者・自転車乗車中の交通死者が半数近くにのぼり、先進国では例を見ない異常事態が続いていますが、これは安易なクルマの使用を是認する社会のツケが、クルマに乗らない選択をする歩行者・自転車利用者に転嫁されているという、極めて理不尽な実態があることを表しています。

自動車が歩行者を殺傷する「事故」は後を絶たず、最近報道されただけでも、生活道路において暴走自動車が子供を轢き殺す、歩道で信号待ちをしている人を危険運転のクルマが轢き殺す、歩道に乱入したクルマが歩行者をはね飛ばす、といった凄惨な事件が頻発していますが、繰り返されるこれらの「事故」も、都度反省をし、下記のような対策がきっちり取られていれば防げたものが多いと指摘されています。

1ー1.通学路の安全確保

歩車分離されていない全ての通学路において、速度制限の強化やハンプ等を用いて自動車が速度を出せない構造にすること、交差点を歩車分離信号にすることなどによる安全性向上策が有効と指摘されています。こうした施策をどう評価されますか。

賛成 反対
理由:登校時の通学路は、できるだけ自動車の進入を制限すべきですが、下校時や制限のむずかしい道路については、速度そのものを抑制し、車道の幅を狭めたり、イメージハンプなども活用して、車の速度を落とさせるようにすべきです。
1ー2.生活道路の交通規制の在り方見直し

自動車の走行速度が30km/hを超えると、交通事故被害者(歩行者・自転車)の重体・死亡に至るリスクが急激に高まることが知られています。生活者の安全・安心を確保するため、全ての繁華街・住宅街の道路を30km/h以下に制限することが有効と指摘されていますが、この施策をどう評価されますか。

賛成 反対
理由:40km/hキロの場合、ブレーキをかけて止まるまでの距離が、30km/hに比べて6割(8メートル)も長くなります。騒音の抑制を考えても、30km/h以下に抑えるべきです。
1ー3.ドライブレコーダーの普及

自動車交通事故の原因究明と抑止に効果があり、しかも比較的安価(現在実施されている「エコカー」補助金の 1/3 程度)に搭載が可能なドライブレコーダー(事故発生前後の映像・運転操作等を自動的に記録する装置)が、営業車への導入は進んできましたが、自家用車への導入がいっこうに進みません。普及させるための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:ドライブレコーダーの搭載を義務づけるとともに、必要性を考慮すればETCにおとらず、その取り付けに助成を行うべきです。
1ー4.ITS等による安全対策

ITS等の新技術を活用した制限速度・信号遵守システムや、酒酔い運転防止システムが実用段階に入っています。これらの装備の普及・義務化や、道路側の関連インフラ整備などをすすめるための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:個別の技術では有効なものがあり、その実用化のための実証的、実用的な研究・検証を強めます。現在、道路には巨額の予算が投じられていますが、こうした生活道路の安全性向上のための改善に、道路予算の重点を置くよう転換します。
1ー5.交通事故対策

貴党では、歩行者・自転車利用者が被害者になる交通事故をなくすための具体的な政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

ある ない
具体的に:基本は、歩行者・自転車・自動車の通路を分離し、歩道や自転車専用レーンを設置することです。道が狭いところでは自動車の進入を規制し、交差点での歩行者、自転車の安全を優先させたルールを徹底します。電気自動車などが増加している中で、走行音が極めて小さくなり、目や耳の不自由な人をはじめ危険が増しています。注意を促す音響装置の取り付けなどが必要です。

2.環境・公害・エネルギー問題の改善

京都議定書後の地球温暖化対策を決めるCOP15の開催を控え、また今後の私たちの生活を持続可能なものにするためにも、枯渇に向かう石油に頼らない社会の仕組みづくりが求められています。

交通部門は国内のエネルギー消費量の2割を占め、そのうち自動車が9割を占めています。特に1990年比で5割以上も増えた自家用乗用車いわゆる「マイカー」は、平均わずか1.5人を運ぶために 1t もの塊を動かす必要があるため、そのエネルギー消費量は鉄道の10倍、路線バスの3-4倍にのぼり、いわゆる「エコカー」への切り替えでは莫大な費用がかかる割りに僅かな効果しか見込めないことから、まずはクルマを減らして鉄軌道・バスや自転車の利用を増やすことが必要であると指摘されています。
また、工場排煙への環境対策が進む半面、自動車排ガス対策は進まず、特に自動車走行量が増えたことによる公害が深刻度を増しています。喘息罹患者数が急増し続けており、特に幹線道路沿いの健康被害が著しく顕れるなど、自動車排ガスによる公害がますます深刻になっています。

2ー1.クルマ以外の交通手段への転換促進策

日常生活におけるクルマ依存が、渋滞や環境、健康などへの悪影響を及ぼすことから、たとえばロードプライシング(渋滞課徴金など、あえてマイカー利用を選択する者の負担を引き上げる施策)やモビリティ・マネジメント(情報提供などによりマイカー以外の利用をすすめる施策)など、マイカーから公共交通や自転車、徒歩などへの転換をすすめるための政策が提案されています。このような、過度なクルマ利用を減らすための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に:都市計画法を見直し、市街地に自動車を入れない地域、自動車は入れても歩行者なみの速度しかだせない地域を設置。パーク・アンド・ライドやカー・シェアリングで、自動車交通量を削減します。バスロケーション・システムの普及などで公共交通機関の利便を高めます。自転車については、別項でのべました。
2ー2.貨物輸送のモーダルシフト

現状では陸上貨物輸送の9割を自動車が占めていますが、中長距離は鉄道などを、末端部は台車や自転車などを活用することで、貨物自動車を減らすモーダルシフトをすすめることが必要です。そのための具体策を持っていますか。

ある ない
具体的に: ITSを、単に道路交通の情報化にとどまらず、鉄道、航空、船舶など貨物輸送にかかわる交通機関と連携したシステムに発展させ、温室効果ガスの排出状況と削減のための選択ができるシステムへ発展させます。輸送に関する排出量は、輸送会社にとどまらず、荷主である大企業の排出データとして検証し、企業の排出削減目標に反映させます。
2ー3.クルマの総量を減らすための施策

道路整備を進める理由にはよく「渋滞解消」や「環境対策」が挙げられていますが、需要管理がされてこなかったため、結果として道路整備により便利になった自動車は走行量が増え、1990年から2007年まで自家用乗用車から排出される CO2 が5割増になるなど、自動車が原因となる環境問題や渋滞は悪化し続けてきました。このような問題を解消させるためにはクルマの走行量そのものを減らすための政策が必要と考えられますが、そうした政策を持っていますか。

ある ない
具体的に:大幅な削減効果をあげるには、大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での走行規制など、総量規制による汚染対策をすすめます。ロンドンの混雑税のようなロードプライシング制の導入や、パーク・アンド・ライドの導入、自動車シェアリング制度の普及に力を入れます。
2ー4.PM2.5(微小粒子状物質)への環境基準の設定

自動車や工場などから排出され、呼吸器はもとより循環器系疾患の原因にもなると指摘されている微小浮遊粒子状物質 (PM2.5) への環境基準設定の議論が進んでいます。今のところ年平均値で 15μg/m3(米国が採用する、死亡リスクが高まる水準)かそれ以下の環境基準設定が検討されています(中央環境審議会 大気環境部会 答申案)。この環境基準設定に賛成ですか。
また、WHO では同 10μg/m3(健康リスクが高まる水準)をガイドラインとしています。日本の環境基準の思想に照らし、適切だと考えられる水準がありましたらご記入ください。

賛成 反対
適切な基準:ディーゼル車からの排出が多い「PM2.5」について、アメリカやWHO(世界保健機関)の環境基準にてらしても、日本ははるかに高濃度の汚染状況となっています。こうした基準を参考にし、子どもの場合も考慮して、東京高裁の和解条項にもあるように一刻も早く環境基準を設定し、住民の健康被害をなくす対策をとります。
2-5.自動車諸税を自動車の外部費用課税と位置付けること

自動車関連税(自動車税、重量税、ガソリン・軽油・LPGへの課税)の大部分は、昨年度までは「道路特定財源」と言われ、税収をすべて自動車利用者の便益向上に使う仕組みになっていました。反面、自動車の利用が周囲に及ぼす影響(健康被害や地球温暖化など)については考慮すらされず、たとえば喘息などの公害病を患った人の半数は仕事を失い、苦しい生活を強いられる上に医療費なども負担させられてきました。
このような実情を踏まえ、自動車への課税は外部費用課税であると明確に位置付け、その課税を強化するとともに、公害や交通事故等の被害者への補償、および抜本的な環境対策(公共交通の利用促進など)を行う必要があると考えられますが、これに賛成ですか。

賛成 反対
理由:ガソリン税など道路建設促進のための財源として使われてきた燃料税や自動車保有関係税を抜本的・総合的に見直し、自動車による温室効果ガスの排出や大気汚染の抑制、公害被害の救済など社会的コストの内部化という観点で、位置づけ直すべきです。
2-6.環境・エネルギー対策

貴党では、自動車が原因となる大気汚染・騒音・振動などの環境・エネルギー問題を抜本的に改善するための政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

ある ない
具体的に:高速道路などから発生した低周波騒音・振動によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。高速道路床全体の振動を抑える制振装置を設置するとともに、低周波振動の健康への影響について、ただちに調査・研究を行い、環境アセスメントでの影響調査を義務付けます。

3.公共交通・自転車利用環境の充実

道路上の安全・安心や環境にやさしい生活を実現するためには、クルマに依存しない生活ができる環境整備が欠かせませんが、道路が税金で造られる半面、同じく私たちの生活を支えている鉄軌道や路線バスには厳しい独立採算が求められ、郊外はおろか都市部ですら路線の縮小・廃止が相次いでいます。
また、環境にやさしく、適切に使えば安全性も高い自転車についても、走行空間の未整備や誤った利用(歩道走行や逆走など)が問題になっています。
さらに、エネルギーの大量消費を前提とする自動車利用を減らし公共交通や自転車の利用を促進する政策を実施することで、域外への所得流出を減らし、可処分所得の増加や地域経済の活性化に有効との指摘もあります。

3-1.地方鉄道や路線バスの再生

存続の危機に瀕した地方鉄道や路線バスの再生・活性化が全国的な課題となっており、たとえば鉄軌道では上下分離(軌道や駅などの設備にかかる費用は公共部門が負担し、運行・サービスは民間が提供する)の導入などが、路線バスでは運行費補助の強化などが必要と指摘されています。このように地方鉄道や路線バスの廃止を防ぎ再生させるための具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:地方の高齢化がいっそう進む中で、地方鉄道や路線バスの維持・再生は、地域の“足”を守るために、とても重要です。国の責任で運行助成を行うとともに、利便性を高めるために、公共交通機関の緊密な連携や、共通パスの発行など、住民の要求をいかしながら運用の改善に自治体が取り組むことが必要です。
3-2.LRT・BRT・コミュニティ交通の導入促進

公共交通の利用者を増やすために、幹線には快適で便利な LRT(次世代型路面電車)・BRT(バス高速交通)の、末端部にはきめ細かなコミュニティ交通の導入が期待されていますが、法規制や財源などの壁が立ちはだかっています。これらの普及促進のため、既存車道の再配分をはじめとする導入空間や財源の確保、法整備などを含めた具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:市街地の自動車需要を減らし、公共交通に移すためには、LRT・BRT・コミュニティ交通の導入は重要なカギです。LRTにおける富山市の取り組みや、JR北海道のBRTの取り組みなどを踏まえ、促進のための制度を整備し、国の助成を強めます。
3-3.自転車の適切な活用

自転車が本来持つ安全性や利便性を発揮させるためには、自転車の車道走行の徹底や、既存の車道に自転車レーンを確保することなどが求められています。そのための具体策をお持ちですか。

ある ない
具体的に:自転車利用推進計画法を制定し、自転車専用レーンの設定、駐輪施設の整備、自転車通勤への経済的支援、交通ルール上の自動車に対する自転車の優先など、自動車交通を減らして自転車利用を拡大するための制度の整備を進めます。自転車持込を可能にするよう列車や駅施設の改善を図ります。

4.総合的な交通政策

 私たちの毎日の生活に欠かすことのできない交通において、上記のような様々な問題が噴出していますが、その改善はいっこうに進みません。こうした問題を改善してゆくためには、自動車単体など個別の改善では限界があり、総合的な交通政策が求められています。
 たとえば、早くからクルマ社会の弊害を経験し、近年急速に改善が進む欧州では、道路上での優先順位を

「子供・車椅子など>歩行者>自転車・公共車両(路線バスなど)>貨物自動車>自家用乗用車」

であると確認したからこそ、人にやさしい市街地形成や、LRT・貸し自転車の導入などの分野横断的な施策を進められたのだとも言われています。

4-1.交通権

クルマに乗らない・乗れない人を含めたあらゆる人に、日常生活に必要な移動を保障する観点から、交通権の保障を定めた法律が必要との意見があります。このような法整備をどう評価されますか。

必要 不要
具体的な内容や理由:国民が安心して豊かな生活と人生を享受するために、交通権の保障と行使が欠かせません。高齢化の進行、郊外型大型店舗の出店自由化、市街地商店街の衰退などで交通需要は増加する一方、公共交通機関の廃止などで地域の“足”は弱体化しています。交通基本法を制定し、交通権にたった交通・まちづくり政策を実現します。
4-2.「高速値下げ」への評価

今春より実施された「高速道路料金の大幅引き下げ」により、JR旅客各社の鉄道利用者が未曾有の減少を記録した他、地方鉄道や高速バス、フェリーなどにも深刻な悪影響が出ており、特に週末の高速バスは渋滞に巻き込まれて実質機能不全に陥っています。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

良い 悪い
今後の対応:政府が実施し、民主党も政策の目玉としている高速値下げは、公共交通へのモーダルシフトにも反し、温室効果ガスの削減にも逆行しています。巨額の税金を投入して、高速料金を引き下げるという施策は、国民生活の現状と国の財政状況を考えれば、社会保障や教育など予算を使うべき優先順位からみて不適切であり、やめるべきです。
4-3.マイカー優遇策(「エコカー」減免税、補助金)への評価

実質的にマイカー利用のみを有利にしている「エコカー」減免税や補助金などの優遇策は本当に「エコ」なのか?という指摘が相次いでいます。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

良い 悪い
今後の対応:有効な大気汚染の環境基準の達成計画や温室効果ガス削減の計画を政府が策定しないまま、今売られている車種のほとんどを「エコカー」と認定して優遇策をとることには反対です。計画を策定した上で、排気ガス・温室効果ガスの削減で、飛躍的に性能が向上した車種を、限定的に指定して優遇策をとる仕組みに改めます。

ありがとうございました。

社会民主党からのご回答

サンプルなので省略

国民新党からのご回答

サンプルなので省略

質問内容

依頼文、質問書兼回答用紙 (PDF 320KB)

質問書兼回答用紙

1.歩行者・自転車利用者の安全・安心

交通事故死者が減ったと言われる半面、昨年度だけで見ても阪神淡路大震災の犠牲者に相当する被害者・犠牲者を毎年出し続けているような状況で、事故件数も高止まっています。特に昨年度は歩行者・自転車乗車中の交通死者が半数近くにのぼり、先進国では例を見ない異常事態が続いていますが、これは安易なクルマの使用を是認する社会のツケが、クルマに乗らない選択をする歩行者・自転車利用者に転嫁されているという、極めて理不尽な実態があることを表しています。
自動車が歩行者を殺傷する「事故」は後を絶たず、最近報道されただけでも、生活道路において暴走自動車が子供を轢き殺す、歩道で信号待ちをしている人を危険運転のクルマが轢き殺す、歩道に乱入したクルマが歩行者をはね飛ばす、といった凄惨な事件が頻発していますが、繰り返されるこれらの「事故」も、都度反省をし、下記のような対策がきっちり取られていれば防げたものが多いと指摘されています。

1-1.通学路の安全確保

歩車分離されていない全ての通学路において、速度制限の強化やハンプ等を用いて自動車が速度を出せない構造にすること、交差点を歩車分離信号にすることなどによる安全性向上策が有効と指摘されています。こうした施策をどう評価されますか。

□賛成  □反対

理由:

1-2.生活道路の交通規制の在り方見直し

自動車の走行速度が30km/hを超えると、交通事故被害者(歩行者・自転車)の重体・死亡に至るリスクが急激に高まることが知られています。生活者の安全・安心を確保するため、全ての繁華街・住宅街の道路を30km/h以下に制限することが有効と指摘されていますが、この施策をどう評価されますか。

□賛成  □反対

理由:

1-3.ドライブレコーダーの普及

自動車交通事故の原因究明と抑止に効果があり、しかも比較的安価(現在実施されている「エコカー」補助金の 1/3 程度)に搭載が可能なドライブレコーダー(事故発生前後の映像・運転操作等を自動的に記録する装置)が、営業車への導入は進んできましたが、自家用車への導入がいっこうに進みません。普及させるための具体策を持っていますか。

□ある  □ない

具体的に:

1-4.ITS等による安全対策

ITS等の新技術を活用した制限速度・信号遵守システムや、酒酔い運転防止システムが実用段階に入っています。これらの装備の普及・義務化や、道路側の関連インフラ整備などをすすめるための具体策を持っていますか。

□ある  □ない

具体的に:

1-5.交通事故対策

貴党では、歩行者・自転車利用者が被害者になる交通事故をなくすための具体的な政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

□ある  □ない

具体的に:

2.環境・公害・エネルギー問題の改善

京都議定書後の地球温暖化対策を決めるCOP15の開催を控え、また今後の私たちの生活を持続可能なものにするためにも、枯渇に向かう石油に頼らない社会の仕組みづくりが求められています。
交通部門は国内のエネルギー消費量の2割を占め、そのうち自動車が9割を占めています。特に1990年比で5割以上も増えた自家用乗用車いわゆる「マイカー」は、平均わずか1.5人を運ぶために 1t もの塊を動かす必要があるため、そのエネルギー消費量は鉄道の10倍、路線バスの3-4倍にのぼり、いわゆる「エコカー」への切り替えでは莫大な費用がかかる割りに僅かな効果しか見込めないことから、まずはクルマを減らして鉄軌道・バスや自転車の利用を増やすことが必要であると指摘されています。
また、工場排煙への環境対策が進む半面、自動車排ガス対策は進まず、特に自動車走行量が増えたことによる公害が深刻度を増しています。喘息罹患者数が急増し続けており、特に幹線道路沿いの健康被害が著しく顕れるなど、自動車排ガスによる公害がますます深刻になっています。

2-1.クルマ以外の交通手段への転換促進策

日常生活におけるクルマ依存が、渋滞や環境、健康などへの悪影響を及ぼすことから、たとえばロードプライシング(渋滞課徴金など、あえてマイカー利用を選択する者の負担を引き上げる施策)やモビリティ・マネジメント(情報提供などによりマイカー以外の利用をすすめる施策)など、マイカーから公共交通や自転車、徒歩などへの転換をすすめるための政策が提案されています。このような、過度なクルマ利用を減らすための具体策を持っていますか。

□ある  □ない

具体的に:

2-2.貨物輸送のモーダルシフト

現状では陸上貨物輸送の9割を自動車が占めていますが、中長距離は鉄道などを、末端部は台車や自転車などを活用することで、貨物自動車を減らすモーダルシフトをすすめることが必要です。そのための具体策を持っていますか。

□ある  □ない

具体的に:

2-3.クルマの総量を減らすための施策

道路整備を進める理由にはよく「渋滞解消」や「環境対策」が挙げられていますが、需要管理がされてこなかったため、結果として道路整備により便利になった自動車は走行量が増え、1990年から2007年まで自家用乗用車から排出される CO2 が5割増になるなど、自動車が原因となる環境問題や渋滞は悪化し続けてきました。このような問題を解消させるためにはクルマの走行量そのものを減らすための政策が必要と考えられますが、そうした政策を持っていますか。

□ある  □ない

具体的に:

2-4.PM2.5(微小粒子状物質)への環境基準の設定

自動車や工場などから排出され、呼吸器はもとより循環器系疾患の原因にもなると指摘されている微小浮遊粒子状物質 (PM2.5) への環境基準設定の議論が進んでいます。今のところ年平均値で 15μg/m3(米国が採用する、死亡リスクが高まる水準)かそれ以下の環境基準設定が検討されています(中央環境審議会 大気環境部会 答申案)。この環境基準設定に賛成ですか。
また、WHO では同 10μg/m3(健康リスクが高まる水準)をガイドラインとしています。日本の環境基準の思想に照らし、適切だと考えられる水準がありましたらご記入ください。

□賛成  □反対

適切な基準:

2-5.自動車諸税を自動車の外部費用課税と位置付けること

自動車関連税(自動車税、重量税、ガソリン・軽油・LPGへの課税)の大部分は、昨年度までは「道路特定財源」と言われ、税収をすべて自動車利用者の便益向上に使う仕組みになっていました。反面、自動車の利用が周囲に及ぼす影響(健康被害や地球温暖化など)については考慮すらされず、たとえば喘息などの公害病を患った人の半数は仕事を失い、苦しい生活を強いられる上に医療費なども負担させられてきました。
このような実情を踏まえ、自動車への課税は外部費用課税であると明確に位置付け、その課税を強化するとともに、公害や交通事故等の被害者への補償、および抜本的な環境対策(公共交通の利用促進など)を行う必要があると考えられますが、これに賛成ですか。

□賛成  □反対

理由:

2-6.環境・エネルギー対策

貴党では、自動車が原因となる大気汚染・騒音・振動などの環境・エネルギー問題を抜本的に改善するための政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

□ある  □ない

具体的に:

3.公共交通・自転車利用環境の充実

道路上の安全・安心や環境にやさしい生活を実現するためには、クルマに依存しない生活ができる環境整備が欠かせませんが、道路が税金で造られる半面、同じく私たちの生活を支えている鉄軌道や路線バスには厳しい独立採算が求められ、郊外はおろか都市部ですら路線の縮小・廃止が相次いでいます。
また、環境にやさしく、適切に使えば安全性も高い自転車についても、走行空間の未整備や誤った利用(歩道走行や逆走など)が問題になっています。
さらに、エネルギーの大量消費を前提とする自動車利用を減らし公共交通や自転車の利用を促進する政策を実施することで、域外への所得流出を減らし、可処分所得の増加や地域経済の活性化に有効との指摘もあります。

3-1.地方鉄道や路線バスの再生

存続の危機に瀕した地方鉄道や路線バスの再生・活性化が全国的な課題となっており、たとえば鉄軌道では上下分離(軌道や駅などの設備にかかる費用は公共部門が負担し、運行・サービスは民間が提供する)の導入などが、路線バスでは運行費補助の強化などが必要と指摘されています。このように地方鉄道や路線バスの廃止を防ぎ再生させるための具体策をお持ちですか。

□ある  □ない

具体的に:

3-2.LRT・BRT・コミュニティ交通の導入促進

公共交通の利用者を増やすために、幹線には快適で便利な LRT(次世代型路面電車)・BRT(バス高速交通)の、末端部にはきめ細かなコミュニティ交通の導入が期待されていますが、法規制や財源などの壁が立ちはだかっています。これらの普及促進のため、既存車道の再配分をはじめとする導入空間や財源の確保、法整備などを含めた具体策をお持ちですか。

□ある  □ない

具体的に:

3-3.自転車の適切な活用

自転車が本来持つ安全性や利便性を発揮させるためには、自転車の車道走行の徹底や、既存の車道に自転車レーンを確保することなどが求められています。そのための具体策をお持ちですか。

□ある  □ない

具体的に:

4.総合的な交通政策

私たちの毎日の生活に欠かすことのできない交通において、上記のような様々な問題が噴出していますが、その改善はいっこうに進みません。こうした問題を改善してゆくためには、自動車単体など個別の改善では限界があり、総合的な交通政策が求められています。
たとえば、早くからクルマ社会の弊害を経験し、近年急速に改善が進む欧州では、道路上での優先順位を

「子供・車椅子など>歩行者>自転車・公共車両(路線バスなど)>貨物自動車>自家用乗用車」

であると確認したからこそ、人にやさしい市街地形成や、LRT・貸し自転車の導入などの分野横断的な施策を進められたのだとも言われています。

4-1.交通権

クルマに乗らない・乗れない人を含めたあらゆる人に、日常生活に必要な移動を保障する観点から、交通権の保障を定めた法律が必要との意見があります。このような法整備をどう評価されますか。

□必要  □不要

具体的な内容や理由:

4-2.「高速値下げ」への評価

今春より実施された「高速道路料金の大幅引き下げ」により、JR旅客各社の鉄道利用者が未曾有の減少を記録した他、地方鉄道や高速バス、フェリーなどにも深刻な悪影響が出ており、特に週末の高速バスは渋滞に巻き込まれて実質機能不全に陥っています。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

□良い  □悪い

今後の対応:

4-3.マイカー優遇策(「エコカー」減免税、補助金)への評価

実質的にマイカー利用のみを有利にしている「エコカー」減免税や補助金などの優遇策は本当に「エコ」なのか?という指摘が相次いでいます。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

□良い  □悪い

今後の対応:

ありがとうございました。

クルマ社会を問い直す会 代表 杉田 正明

〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19 銀鈴会館506 生活思想社内
[URL] http://toinaosu.org/  [FAX] 03-5261-5931  (担当:井坂)

※本質問書へのご回答は 8月 4日(火)で一旦締め切り、その時点での集計結果を報道機関向けに発表させていただきます。また、その後にいただいたご回答は随時ホームページで追加報告をさせていただきます。

※本質問書およびいただいたご回答(ご回答の有無、時期とその内容)は、多くの皆さんの政策判断にお役立ていただけるよう、当会ホームページ http://toinaosu.org/ や報道発表などを通じて公開させていただきます。

※自由回答欄が不足する場合は、適宜、別紙などをご用意いただければ幸いです。

質問内容の解説

前回同様、二択で回答できる質問を設けるとともに、関連する自由回答欄を設け、各党の政策ご担当者様に自由に所見を書いていただく形にしました。

質問書は 7月27日に速達便で発送し、締切日を 8月 4日、ご回答期間を約1週間としました。回収方法は郵送(返信用封筒同封)、FAX、電子メールのいずれかにより、文書での回答をお願いしました。

また、その後に結党した みんなの党 には、8月20日にFAXで送付し、ご検討いただきましたが、回答は得られませんでした。

質問内容は、2005年9月のアンケートでの質問とそのご回答を当会会合で詳細に検討し、2005年時点から進展のあった政策、なかった政策に分け、進展していない政策を中心に詳細な質問をするとともに、近年懸案になっている歩行者・自転車利用者の事故被害増加、自動車税制、公共交通の維持・活性化、PM2.5 環境基準設定、地球温暖化対策などの最新事情を取り込みました。

担当者所感

総論

まずは、各政党の政策ご担当者様には、総選挙を控えたご多忙の折りにもかかわらず丁寧なご対応をいただき、ありがとうございました。今回の総選挙は「政権選択選挙」との指摘も挙がり、選挙前にマニフェスト(政権公約)を掲げることも定着してきました(関連リンクを参照)。こうした中、各党が掲げる政策に注目が集まっていると感じています。

有権者から見れば、政策本位の選挙になって選挙への関心が高まる半面、多岐に渡る公約を有権者一人一人が精査することは大変な場合もあるかとは思いますが、その中でクルマ社会を問い直す会では、日頃より取り組んでいる道路交通・地域交通分野で注目したい政策分野を選び、各党の政策ご担当者の皆さんに政策展望をお聞きしました。様々な争点のある中とは思いますが、毎日の生活に欠かせない交通をより安全・快適で人と環境にやさしいものにしてくれる政党はどこか、そんな視点からも各党の政策を比較検討していただけたらと思います。

ところで、今回の質問の主題である、自動車の安易な利用が私たちの生活に及ぼしている影響や問題点は多岐に渡りますが、その中でも交通事故・交通犯罪、環境問題(公害、地球温暖化、およびエネルギー問題を含む)、公共交通や自転車など代替交通手段の利用促進、および現在提案・実施されている政策への評価の 4部構成とし、17項目に絞り込むとともに、より具体的なご回答をいただけるよう、各質問を設けたいきさつなどの解説を添えました。

まず単回答を見ると、今回ご回答いただいた全政党が賛成・具体策を持っていると回答した(単回答欄に○が付いている)項目は、2-1「クルマ以外の交通手段への転換促進策」と、3「公共交通・自転車利用環境の充実」の全項目でした。また、4-1「交通権」についても全政党が何らかの形で法制化が必要と考えておられるようです。

このような全体像を踏まえ、以下で具体的に見てゆきたいと思います。

1.歩行者・自転車利用者の安全・安心

日本では欧米諸国に比べて歩行者・自転車利用者が被害者になる交通死者の割合が極めて高い(2007年度で48.2%、『クルマ社会を問い直す』56号29ページを参照)という異常事態がより顕著になったことを受け、あえて歩行者・自転車利用者の安全確保に絞った質問を行いました。

当会の提案に対し、各党からは概ね前向きなご評価をいただきました。当会が掲げる「クルマ優先でなく人優先の社会へ」という目標とその必要性が、多くの皆さんに理解されていると感じます。 しかしその半面、世論の関心が低いということなのか、または争点になりにくいためなのか、今回の総選挙に際し各党が発表している政策・公約を見ても、歩行者・自転車利用者の安全を念頭に置いた政策はなかなか見られません。

今回のアンケート結果で、各党の共通する部分と、違う部分が、見えてきたように感じます。もちろん共通する部分では迅速な実現に向け各党にご努力いただくとともに、今後検討・評価をしますとのご回答もいただいていますので、次の国政選挙では政策の柱のひとつに加えていただくことで、交通の安全・安心への取り組みを進めていただければと期待するところです。

2.環境・公害・エネルギー問題の改善

地球温暖化は世界に共通する課題となっており、今回ご回答いただいた全ての政党が温暖化対策を必要と考え、何らかの形で政策に掲げておられます。また、その一環でクルマ対策が必要と考えておられる点も共通しています。

具体的には、鉄道やバスなどの公共交通機関の利用促進、貨物ではモーダルシフト(自動車から鉄道、船舶への移行)が必要と考えておられる点が各党に共通しており、この部分では各党で連携しての実現に向けた取り組みを期待したいところです。

半面、自動車関連税制の扱い、とりわけ自動車の外部費用に対する考え方など、各党で差が見られました。こうした点は当会でも扱ってゆきますし、皆さんに検討を深めていただきたい分野です。

3.公共交通・自転車利用環境の充実

各党とも公共交通の必要を認識され、特に地方部において縮小・廃止が相次ぐ公共交通の維持・再生に向けた具体的な政策が示されました。

また、既存公共交通を補完・充実させる具体策として、LRT(次世代型路面電車、軽快電車)やコミュニティ交通に関心が高く、特にLRTについては多くの党が支持されています。日本ではここ数十年、欧米諸国に比べて路線の新設・延伸が非常に少ない現状ですが、各党に取り組んでいただければLRTの活用が進むのではと期待されます。

自転車に関しては、日本は欧米諸国に比べて利用者に支持されている(分担率14%)割りに、走行空間の不足などが問題になっています。こうした事情を踏まえ、自転車道の整備や道路空間の再配分を含めた必要性を認識されている政党が多いようです。これも私たちの生活の安全・快適に直結する課題だけに、既にお持ちの政策を実現していただくとともに、指針づくりなどに積極的に取り組まれることを期待します。

4.総合的な交通政策

この中で全ての党が一致したのは「交通権」の確立・法制化が必要という部分です。国内では交通権学会さんが提唱される「交通権憲章」や、民主党・社民党の「交通基本法」などが提案されていますし、また今回の自由回答でもご説明いただいているように、欧州諸国を中心に生存権などから派生する権利として浸透しています。 日本でも、憲法が保障する生存権の一環として、また国が総合的な地域交通政策を持つ必要があるとの観点からも、総合交通政策に関する議論が待たれるところです。

また、今年より実施されている政府の「高速道路料金の大幅引き下げ」により鉄道、路線バス、フェリーなどの公共交通機関に深刻な影響が出ていること、さらに先頃実施された「エコカー」減免税に関する疑問点を問うてみました。ここでは各党の意見が大きく分かれ、たとえば「高速値下げ」では、強化(無料化)、公共交通への補助実施、取りやめと方針が大きく割れました。これらの政策については当会も精査し意見書を提出するなど取り組んできましたが、今後も引き続き動向を注視し、取り組んで行くべき課題だと感じます。

まとめ

このように見てゆくと、各論では様々な議論があるものの、私たちの目指す「クルマ優先でなく人優先の社会へ」という目標とその必要性が、多くの皆さんに理解されていると感じられます。 あとは、ここでお示しいただいた様々な具体策が、選挙後にどのように実現されるか。ご検討いただいている具体策がどうなるか。今後の課題です。

こうした状況で、私たちには何ができるか。もちろん様々な問題への関心を高めてゆくことも必要でしょうし、各党にご提案いただいた政策のうち良いと思ったものを応援し、逆に問題だと感じたものは検証してゆく。そんな努力の積み重ねも、私たちに求められているように感じます。

選挙期間は、政策の議論を進める絶好の機会でもあると思います。政策本位の選挙をいっそう進展させるためにも、私たちはもちろん投票へ行くことも必要ですし、政党・候補者の皆さんに政策提案を求め、あるいは提案してゆくことも、求められているように感じました。

(文責:政党アンケート担当 井坂)

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