2024年4月20日に開催された講演の内容の続きです。
4. オランダ~トップランナーが示す自転車のまちのレシピ
AAAなユーザーを想定して環境整備を進めてきた国の中でトップランナーといえばやはりオランダです。オランダの自転車走行環境は大きく分けて2つの柱からなります。
(C) Melissa & Chris Bruntlett
まずは自転車道。オランダでは自転車で並走できることがとても大事にされています。移動は人間の社会的行動のひとつであり、歩くときや電車に乗るときと同じく、自転車でも隣の人とおしゃべりできることが大切だと考えられているんですね。自転車道というインフラを抽象化すると「ひとつの道を構造物で区切って自動車の脅威を遠ざける」ものといえます。
(C) Melissa & Chris Bruntlett
柱のもうひとつは自動車の流入を抑えた時速 30キロ制限の生活道路で、自転車ネットワークの半分以上を担っています。こちらも抽象化すると「自動車用と生身の人のための道路ネットワークを分ける」となります。自転車利用者が主役になれる道は「Fietsstraat(=自転車通り)」に指定することで、自転車道よりも広い、ネットワークの基幹ルートとなります。
5. 世界の都市の交通手段構成を並べてみた~クルマに頼らず、かつ幸福な構成は?
▲図3 内外諸都市における代表交通手段ごとの構成比 (車依存度順)。 国内の都市は自転車の分担率の高さ、車の分担率の低さ、自転車まちづくりにおける知名度などからピックアップした (データ出典 :国土交通省、Transport for London、NYC DOT、BMDV、City of Copenhagen、Gemeente Amsterdam、Mairie de Paris資料) |
世界各地の都市の交通分担率を、クルマ依存度の高い順で並べてみました。東京23区、大阪はものすごく依存度が低いです。ただ東京は移動の46.8%を公共交通が担わされています。都心部の満員電車での移動を幸福と呼ぶのはちょっと難しいでしょう。
大阪はよく自転車事故件数がワーストなどと言われますが、利用者数が多ければこれは当たり前のことです。利用率を分母にしないと本当に危険かどうかはわからないのですが、警察やマスメディアはそのような分析はまずしないので、市民グループは正しい比較ができるようにしておきたいところです。