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長野県上田市の「ゼロカーボン×交通まちづくり」(1)

投稿日:2024年6月18日 更新日:

井坂洋士

公共交通ルボ電車をかたどったアイコンです

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去る2024年3月16・17日、長野県上田市で「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会 in 上田」が開催された。市民団体が主催する交通分野の研究発表大会で、今回で11回目を数える[1]

毎回、各地域の市民団体や大学が主催しており、今回はNPO法人「上田市民エネルギー」などが主催団体に入り、上田市も共催している。17日午後に開催された市民フォーラム「上田リバース会議」では、長野県知事の阿部守一氏、上田市長の土屋陽一氏、上田電鉄の國枝聡氏と、 NPO法人上田市民エネルギー理事長の藤川まゆみ氏が登壇し、上田市が実施する「ゼロカーボン×交通まちづくり」の取り組みが紹介されていた。これは環境省の「脱炭素先行地域」に採択された事業で、いわば自治体の環境対策の先行事例になることを期待された取り組みだ。

上田市ではどのような取り組みをするのだろうか。上田市の公共交通の現状と併せて見てゆきたい。掲載写真は特記無い限り筆者撮影。

上田市の公共交通

上田駅の写真です

交通結節点となっている上田駅(お城口)
地域のシンボル「六文銭」を模した装飾が目を引く

上田市は人口約15万人で、長野県では長野市(約36万人)・松本市(約24万人)に次いで3番目に人口が多い。
上田城址や市役所から歩いて10分ほどの中心市街地の一角にある上田駅は、長野駅から新幹線で12分・在来線で45分と程近く、県都・長野との往来は便利だ。
中心市街地は戦国武将・真田氏が開いた城下町で、上田城址は保存・一部復原されて観光地として賑わっている。
真田氏の家紋「六文銭」(六連銭)は今も上田のシンボルになっており、街中の随所で見ることができる。

上田城址を中心とする城下町が上田市中心部だが、近年は千曲川を挟んで対岸の上田電鉄別所線沿線も宅地化されており、別所線の上田〜寺下間には低層住宅地が広がる。
1997年に北陸新幹線(当時は「長野行新幹線」と呼ばれていた)が開業し、上田駅には「あさま」(東京〜長野)と「はくたか」(東京〜金沢・敦賀)が毎時1〜3本停車する。東京駅まで200km弱をおよそ1時間40分で結んでおり、東京方面との行き来も便利だ。

長野と小諸・軽井沢を結ぶ在来線の「しなの鉄道」はかつてのJR信越本線で、新幹線開業に伴いJRから分離され、いわゆる第三セクター鉄道になったが、列車は日中でも毎時1〜2本あって、朝5時台から夜23時まで走っている。長野駅まで45分ほどかかる在来線も、途中乗降を含めて乗客が多い。途中の篠ノ井駅で特急「しなの」に乗り継いで松本・名古屋方面へ行くこともできる。
そしてもうひとつ、上田駅と別所温泉を結ぶローカル鉄道の上田電鉄別所線がある(後述)。路線バスは主に千曲バスと上田バスの2社が運行している。

【脚注・出典】

1. これまでに宇都宮(2005)、京都(2007)、横浜(2008)、東京(2009)、岡山(2010)、新潟(2013)、宇都宮(2014)、福井(2016)、前橋(2019)、滋 賀(2021)で開催された。⇒交通まちづくりの広場 https://www.yasashii-transport.net/

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