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TicketQR
実際に路線バスに乗っている人ならわかるだろうが、運賃支払い時の小銭の扱いや両替などが煩わしく、乗降にも時間がかかってしまう。首都圏などの大都市ではかつては磁気式プリペイドカードが採用され、近頃はPASMOなどの交通系ICカードが導入されてスムースな乗降に貢献しているが、これらは導入・維持コストがハードルとなり、地方の中小バス会社ではいまだ現金でしか乗れないところも多い。
ここ数年はJR東日本が開発したSuicaベースの「地域連携ICカード」[4]を導入する地域が増えているが、上田市では、隣接する坂城町の「和晃(WAKO)」という電子機器会社が開発した「TicketQR」という公共交通キャッシュレスシステムを市内全域(しなの鉄道、JRバス関東と高速バスを除く)で導入した[5]。
ICカードを使わずに乗客のスマートフォンを使い、残高(バリュー)をICカードではなく運営会社がオンラインで管理するセンターサーバ方式を採用することで、導入コストを抑えた。
千曲バス車内に搭載されている「TicketQR」読取機(左・中)とスマートフォンアプリ画面(右)
写真では参考用に整理券を取っているが、整理券も小銭も不要のスムースなキャッシュレス決済を実現している
ここ数年で普及したスマートフォンのPayアプリに似ているが、他社Payアプリとの違いは、路線バスなどの公共交通で採用されている三角運賃表(乗車距離・区間に応じて運賃が決まる仕組み)に対応できるよう、GPSで位置情報を取得して乗降場所を特定できるようになっている。バスや電車の運賃箱にQRコード読取機が搭載されているのが特徴的だ。
他社QRコード決済を採用している例(日光市営バス)乗客は乗車時に整理券を取り、降車時に運賃表を見て手入力し、乗務員も金額を確認する必要がある
他社QR決済を採用している場所では均一運賃を採用するか、整理券を取り運賃表を見て運賃額を手入力する手間がかかっているが、「TicketQR」では整理券も不要で、乗降をスムースにし、乗客や運転手の負担が軽減される。
スマートフォンアプリは近隣で「TicketQR」を導入している佐久市や松本市でも共通で使え る(割引付きのプリペイド残高は会社・地域別)。
また、スマートフォンを持たない人でも利用できるよう、QRコードを印刷した紙のプリペイドカード(リチャージ不可の使い切りタイプ)も発行されている。
さらに、プリペイド残高が無くても登録したクレジットカードによる即時決済で乗車できる、プリペイド残高に特典を付ける(例えば2,000円チャージすると2,200円分使える)ことができる、回数券や定期券にも対応できる、公共交通以外でも使える(市営の温泉施設「あいそめの湯」の1回券や回数券もTicketQRで販売している)といった特徴も兼ね備えている。
【脚注・出典】
4. 「地域連携ICカード」を最初に採用した宇都宮市の例は本誌107号(2022年3月号)「建設工事が進む芳賀・宇都宮LRT」を参照されたい
5. 上田市内の路線バス・上田電鉄・別所線がキャッシュレスで利用できます!(上田市)https://www.city.ueda.nagano.jp/soshiki/kotu/36632.html