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福岡市の歩車分離信号群を視察して (1)

投稿日:2024年9月16日 更新日:

長谷智喜(命と安全を守る歩車分離信号普及全国連絡会会長)

歩行者用信号のアイコンです  歩車分離信号ルポ

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はじめに

日本は、歩行者や自転車の交通死亡事故がG7の中でワースト2位と交通弱者の犠牲者の割合が極めて高い国です。
実際、死亡事故のニュースでよく目にするのは、横断中の歩行者事故です。
それらの事故では、飲酒や暴走、信号無視などによる車側からの飛び込み事故。また交差点では横断者を巻き込む右左折事故が後をたちません。
子どもたちを守る事故防止対策の取り組みは、交通ルール教育や手上げ運動などの自助努力、自転車乗車時は被害軽減のためヘルメットの着用などが求められています。しかし、交通弱者の死亡の減少には大きな進展がみられません。その理由は、事故防止対策が、事故そのものを減らす十分な効果のない対処対策だからです。死亡事故の原因の多くは、ドライバーのヒューマンエラーによって車が飛び込んでくることによります。実際、信号交差点では、生身の歩行者が、自らの命を守るために青信号を横断していても右左折車に見落とされ亡くなる事故があとを絶ちません。
このような観点から、信号交差点では、人と車を分けて流す信号運用への改善を痛感し、歩車分離信号の普及活動を続けてまいりました。

福岡視察の目的

小学生だった息子を青信号横断中に左折ダンプによって奪われた私たち夫婦は、2024年5月、福岡市の歩車分離式信号群(以下歩車分離信号)を視察してまいりました。このような視察は、 2002年、ロンドンの信号交差点視察や2023年、札幌の歩車分離信号密集群視察につづき3回目です。今回の視察は、10年前に福岡市を訪れたところ、市内の中州から天神にかけて歩車分離信号が多く設置されているのを目にしたことがきっかけです。私はいつか、再度しっかり視察し、福岡県警の取り組みやこの素晴らしい歩車分離信号密集群を多くの方にお伝えし普及の一助にしたいと考えておりました。
この視察後の懇談では、NPO法人いのちのミュージアムの会員である、大庭茂彌さんに福岡県警本部との調整にご尽力頂きました。おかげさまで福岡県警本部では、担当官から大変有意義なお話を伺うことがでました。

福岡市の歩車分離信号

2023年3月末現在、全国の歩車分離信号設置数は、10,184基(普及率は4.9%)です。(警察庁交通局統計より)
今回視察する福岡県の歩車分離信号普及率は
4%です。昨年の都道府県別の普及率ランキングでは15位となります。(全国連絡会調べ)
2024年3月末現在の福岡県には、昨年から3基増え397基の歩車分離信号があり、そのうち福岡市には、177基が設置されています。
福岡市だけを見ると8.2%と高い普及率になっています。
そこには、スクランブル式が24基、歩行者専用現示式(斜め横断は禁止)が111基、右折車だけと分離するなどの信号が42基設置されています。
このように完全な分離信号の比率が76%と高いのが特徴です。
ちなみに、10年前に調査した東京都の一部の市では、26基の歩車分離信号があるものの、ほとんどが右折分離式で完全分離の歩車分離信号は、わずか1基しかない市もありました。福岡市の歩車分離信号の質の高さがうかがえます。

これら福岡市の歩車分離信号は、博多駅から中州、天神の明治通り周辺にかけ広範囲に設置され密集群を形成しています。
このレポートでは、福岡市の歩車分離信号密集群がどのようにして出来たのか、人や車の流した方や実態、渋滞や苦情等の実情はどうなのか等、福岡県警察本部との懇談内容を交えご報告させていただきます。

福岡市内の歩車分離信号の場所を示す地図です

図1 福岡市の歩車分離信号群

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