会報より 記事セレクト

大阪・堺市の路面公共交通プロジェクト見聞記

投稿日:2009年4月23日 更新日:

大阪・堺市の路面公共交通プロジェクト見聞記
藤村健一郎(都電網研究会・非会員)

はじめに

 私たち都電網研究会では、去る2008年の11月、大阪の堺市にトラムをはじめとする路面公共交通と、それを取り巻く「交通まちづくり」について、2日間に渡り視察・ヒアリングに行って参りました。
 堺市ではトラム路線新設のプロジェクトが目下進行中で、都市部におけるクルマ社会からの転換施策としてのトラム導入と道路空間の再配分が世界的な潮流となっているなか、日本国内では、富山市に次いで二番目の事例となるのではないかと言われています。 また、堺市では旧くからの市街地(環濠内)を南北方向に貫く純民営の路面電車「阪堺(はんかい)電気軌道」、通称阪堺電車が走っており、東京の路面電車、都電荒川線とはいくつかの共通点があります。
 まず、現在は古いシステムの路面電車だけれども、路線延伸といわゆるLRT化によるシステムのグレードアップが望まれ、計画が進められていること、自動車との混合交通となる区間が短く、専用軌道区間が長いこと、路線の両端が大量輸送機関と直接繋がっていないため、起終点のターミナル性が弱いこと、路線が下町的な雰囲気の地域を結んでいること、堺市と荒川区はともに平坦な地形で「自転車のまち」でもあること、などです。
 そこで、東京において、都電などの路面公共交通を活かしたまちづくりの発展を願う立場からの、研究のひとつのモデルケースとして、私たちは堺市に注目したのです。

「東西鉄軌道」と阪堺電車

 堺市は大阪市のすぐ南隣に位置し、古代の仁徳天皇陵など古墳群や中世の貿易都市・自治都市の名で知られていますが、明治時代には市制を施行、産業都市として再出発し、現在は臨海部の工業地帯と内陸部のニュータウンを擁する政令指定都市となっています。
 共交通については、堺市では2つの課題が持ち上がっていました。「東西鉄軌道」の建設と、先述の阪堺電車の活性化です。
 市中心部では、南北方向に4社5線(南海本線、阪堺電車、南海高野線、JR阪和線、地下鉄 御堂筋 線)の鉄軌道が平行して通っていますが、東西方向では軌道系公共交通は何もありません<地図1>。このため、市の東西方向の人の行き来が不便で、各線の主要駅に都市核が分散し、堺市独自の都市圏が形成されているとは言い難い状況にあります。

<地図1> 堺市の鉄軌道図(堺市建築都市局鉄軌道推進室ウェブサイトより)

 具体的には、西の臨海部から東の内陸部に向かって南海本線堺駅、阪堺電軌大小路(おおしょうじ)電停、南 海高野線堺東(さかいひがし)駅、JR阪和線堺市駅の4駅があり、これらは ほぼ 直線で結べますが 距離 はあります。これらの駅周辺 は都市化の過程 が異なることもあって連続性はなく、まるで別のまちのような印象を受けます。
 そこで、長年の課題として、まちの東西方向に鉄軌道の新設構想が行政にあり、過去には地下鉄や新交通システムを通す案もあったのですが、まちの郊外 化の 影響 もあって都心部への集客が弱まり(人口は都心に回帰しているが、商業は依然として厳しい)、都心活性化も課題となるなかで、まちとしての拠点性を高めることを目的として、1999年からトラム敷設も検討に入るようになりました。
 ただ、東西方向の都心活性化策としては、これまでも取り組みはあったとのことです。話は前後しますが、1984年から、堺市では歩行者優先の道として、メインストリートである大 小路筋(おおしょうじすじ)の歩道の 拡幅 と電線の地中化、大小路歩道橋の架け替えなど土木工事(大小路シンボルロード整備事業)が行われました。しかし、現在も都心部に人と賑わいを取り戻すまでには至っていないのが実情です。
 また、大小路筋では現在、南海バスが「堺シャトル(バス)」としてこの道を通って堺駅~堺東駅間を結び、収支は黒字だそうです。この路線がほぼそのまま、東西鉄軌道の先行敷設区間になるのですが、需要予測としてはシャトルバスが1日に5000人ほど乗っていて、イニシャルコストまで含めて賄っているので、トラムも黒字運営できるのではないか、とのことでした。
 計画全体については、2008年11月の訪問時点では、公式には同年4月に公表された「東西鉄軌道(堺浜:さかいはま~堺東駅間)基本計画骨子案」の内 容以上のものはなかったのですが、当面は、シ ャトルバスの走っている堺駅~堺東駅間1.7kmのトラム新設と阪堺電車7.9kmの改良を先行するけれども、堺浜(臨海部)までのトラム延伸5.2kmについても一体化して計画しているとのことです。
 軌道の敷設位置については、大小路筋では道路の一方通行化を伴う歩道寄せ または 片寄せなど、将来のいわゆるトランジットモール化を想定。また堺 駅~堺浜延伸では、幹線道路を跨ぐため一部高架化も考えられています。トラムと他の交通機関との結節も重要ですが、これはバスターミナル整備ともリンクし、できるだけ乗り換えの距離を詰めるべく、現場ではかなり検討しているということでした。
 他方で、既存のトラム路線である阪堺電車は経営の悪化から、 乗客数が減少している堺市内路線、我孫子 道(あ びこみち) ~浜寺駅前間の 廃線案を含めた 協議 を2003年に堺市に申し入れました。阪堺電車は同年時点でピーク時(1965 年)の1/7 まで 乗降人 員が落ち込んでいました。阪堺電車沿線にあった市立堺病院の移転、 他社線との競争力(スピード、運賃、快適性)低下、モータリゼーションの進展が原因と言われています。
 それに対し「公 有民営」事業スキームの実施による経営環境の改善を行うことを堺市が提案、官と民が パートナーシップを組んで路面電車事業を行うかたちでの存続 が決まりました。また、応援組織として、「堺のチンチン電車を愛する会」が堺市都市整備公社を事務局として設立され、イベント電車運行などの活動が行われるようになりました。
 その後、幾多の検討を経て、阪堺電車と東西鉄軌道が相互乗り入れする構想も固まりました。ここで、異なった2つのプロジェクトが一元化されたことになります<地図2>。余談ながら、阪堺電車と東西鉄軌道の規格を合わせるため、一時噂されたゴムタイヤ・一本レール式のトラム「トランスロール」の導入は見送られています。
 当面の費用は、東西鉄軌道新設(先行敷設区間)85億円、阪堺電車の改良60億円と発表されており、事業スキームは東西鉄軌道で公設民営、阪堺電車堺市内区間で先述の通り公有民営が 想定さ れています。東西鉄軌道の先行敷設区間 開業は2011年春を目 指しているとのことです。

<地図2> 東西鉄軌道と阪堺電車(堺市建築都市局鉄軌道推進室ウェブサイトより)

自転車交通

 堺は冒頭でも少し触れた通り「自転車のまち」でもあり、平坦な地形なので地域の人々は5km程度の距離は自転車で出かけることが多いそうです。この点も、阪堺電車の利用の少なさの要因として指摘できそうです。ただ、地域住民の高齢化が進むと、路面公共交通の果たす役割は大きくなってくることでしょう。
 余談ながら、堺は日本で初めて自転車を生産したまちなのだそうです。「ものの始まりなんでも堺」と言って、他にも鉄砲、線 香、金魚など堺が発祥とされるものは数多くあるそうですが、なかでも鉄砲の製造技術は、のちの自転車製造に継承されたということでした。自転車部品(と釣り具)で世界的に有名かつ大きなシェアを誇る「シマノ」の本社も堺に置かれています。

自動車交通

 自動車交通については、やはり南北方向の幹線道路、 高速道路の通過交通は激しいもののまちの中心部で渋滞が起こることはなく、混雑対策よりむしろ地域振興の観点で、都 心の交通体系を見直そう、ということになったようです。大小路は堺のメインストリートですが、両端が鉄道駅で行き止まりになっていて、また、すぐ近くに平行して「フェニックス通り」という大通りもあるので、道幅の割にクルマの通行量が少ない状況です。歩道幅が6~9mもあり、自動車の車線は現状でも6車線とれるところを2車線に狭めています。
 そのような意味 で、大 小路はもともと自動車交通が規制されていると考え てトラムの計画が 組まれているそうですが、他にも道幅の割に通行量が少ないところが戦災復興道路などでいくつかあると聞きます。そうしたなかでは、例え堺~堺東間1.7kmの距離だけでも、トラムを通す意味はあるのではないか。この部分は「LRT」の理想型に近いこともできるのではないか。阪堺電車やバス網も含め全体を考えると将来の可能性はある。さらなる自動車交通の制限も加えて考え ていける。今の人口 をまちづくりの起爆剤にする意味でもやる意義はある・・・市役所ではそう考えられているとのことです。

オンデマンドバス試乗

 視察1日目はちょうど東京大学の開発した オンデマンドバスシステムの実証実験最 終日で、これに試乗することができました。 実験はトラムの計画と直接繋がってないとのことでしたが、路線は環濠内地区および周辺地区と堺駅、堺市 役所を面的にカバーしており、奇しくも東西鉄軌道と阪堺電車の駅勢圏を補完するようなかたちになっていました。
 コミュニ ティバスによく使われるタイプのミ ニバ スの ほか、 早稲田 大学の開発した非接触給電タ イプの 小型ノ ンステップミニバ ス(電気バス)も 使って2 台体制で 運行していました。電気バスは、トラムほどではないですが、通常のバスより静かで乗り心地は良く、内 燃機関独特のにおいもしないので、今後の普及が期待されました。<写真1>

<写真1>実証実験に使われた電気バス

 オンデマンドバスの 乗車方 法については、登録 ・予約制ですがこの実験ではドア・トゥ・ドアの運行にはなっておらず、定められたバス停から乗降しなければなりません。関 係者の方によると運賃無料にもかかわらず乗客集めに苦心しているとのことでした。
 今回は市 役所 の担当の方が事前にモ ニター 登録 ・予約をして下さっていたので、当方で実際に乗車手続きや停留所を探したりはしませんでした。ただ、いただいたパンフレットを見る限り、通 常のバス以上に、 来街者にとっては使いこなすのが難しいシステムという印象でした。環濠内地区は低層の人家が稠密しており、コミュニティバスとタクシーの中間的乗り物という性格上、地域 住民が使いこなせればとりあえずの成功なのかなとも思いました。

地元団体との懇談

 また同日、堺市 役所の方のコーディネイトで、阪堺電車大小路電停にほど近い「アスティ山之口商店街」に設けてある「さかいLRT研究交流センター」にて大阪産業大学の塚本直幸教授をはじめ、スタッフの方にお話しを伺うことができました。 同センターはいわゆるLRTの啓発や研究などを目的とした、大阪産業大学と堺市の共同事業であり、運営は大阪産業大学が担っています。
 ここでは、東京の「池袋の路面電車とまちづくりの会」のメンバー(筆者もメンバーのひとり)より、同会の活動指針について助言を求める旨の質問を預かっておりましたので、そのお話しもできました。池袋からの質問は、「 同じ自治体内で、トラム整備をしても直接メリットを受けない地域の人々にどうプロジェクトを理解してもらうか」というものです。これに対しては、堺も同じ悩みを持っているようで、郊外の地域住民で東西鉄軌道新設の反対運動もあると聞きます。
 回答としては、特効薬的なものはなく、「都市核のきっちりしていない都市で、全体的にうまく発展している例はない。都市核にもう一度公共投資をすることで、近接地域への副次的効果がもたらされることを丁寧 に説明していくしかない」ということをおっしゃっていました。堺の反対運動についても、「シンポジウムなどで説明を繰り返すうちに、単なる反対か
ら『事業についてもっと説明をせよ』という運動に変わってきた」といいます。池袋の場合もやはり市民活動は粘り強く続けていくしかないな、と感じました。
 夕方も堺市役所の方のコーディネイトで、阪堺電車宿院(しゅくいん)電停そばの「うどんすき」の 店で「日本路面電車同好会関西支部」の方 々(「堺の チンチン電車を愛する会」の会員でもあるとのこと)と会食、阪堺電車の歴史や堺市をはじめ大阪の交通政策、これからの路面公共交通はどうあるべきか、など 幅広いお話しを伺うことができ、楽しいひとときとなりました。

まち歩き

 視察2日目は堺市内で阪堺電車沿線の 魅力を探るべく、旧環濠内地区の主に北 側~中心部を歩いてみました。環濠とは都市の周囲にめぐらせた堀のことで、都市を外敵から守るほか、排水濠としても利用され、中世の自治都市・堺をかたち作っていた象徴的な施設と言えます。
 この地区を南北に走っている道路が「大道筋(だいどうすじ)」。幅員50mの広さです。紀州街道、熊野街道の一部にもあたり、歩道も広く、道路中央を阪堺電車が走っています。第2次大戦中に空襲でまちが焼かれ、戦後に戦災復興道路としてこの広さになりましたが、ここも車道の広さのわりに交通量は多くありません。<写真2>

<写真2>大道筋

 今回は、この大道筋の始まる北 側の綾ノ 町電 停よりひとつ先の高須神 社電 停で阪堺電車を降り、阪堺電車・紀州街道沿いに南下していくルートをとりました。
 高須神社電停を降りてまず思ったのは、空襲に遭ったにしては、意外に伝統的なまち並みが残っているな、ということでした。もっとも、復興道路である大道筋がここまで延びていないということは、この辺りは焼け残った地区であり、大通りを通す空間もなかったのかもしれません。「旧鉄砲鍛冶屋敷」など、ここから綾ノ町電停までかつてからの町工場や商家が点在しており、家々の意匠も繊細で華美、全盛期が偲ばれました。そのころ、堺の 人々は「堺の建て倒れ」といわれるほど建物にお金をつぎこんだそうです。<写真3>

<写真3>伝統的なまち並み

 大道筋の始まる綾ノ町では、古い町屋を改修した観光の休憩所兼展示室を見つけました。ここでは、無料で堺の和菓子とお茶をごちそうになりました。堺製の火縄銃も展示されており、実際に手に取って、係員の方に取り扱い方など教えていただきました。
 綾ノ町からは南海の路線バスを利用しようとしましたが、バスの本数が少なく断念、大道筋の東側の路地を歩いて通りました。国の重要文化財に指定されている「山口家住宅」がちょうど補修工事中でした。案内板を見ると、この住宅は堺市で購入したばかり、今後は観光交流拠点として公開・活用されるそうです。このあたりは寺社も多く、わずかながら伝統的なまち並みの残る区域です。
 2つ下った妙国寺前 電停からまた阪堺電車に乗り、東西鉄軌道と接続する大 小路の交 差点を通り過ぎてすぐ、かつて堺でも最も繁華だった宿院に着きます。宿院電停で下車、近くのレトロムードの洋食 レストランにて昼食 としました。阪堺電車は10分毎に電車が来るので現 状でもまち歩き には結 構便利 だと 思います。宿院は現代 風の鉄 筋コ ンクリートの建物が多いものの、千利休屋敷跡、与謝野晶子生家跡といった堺にゆかりのある文人のモニュメントが集中している区域です。
 ここからは大道筋を再び北上、沿道のザビエル公園や「堺 刃物伝統産業会館(堺包丁が有名)」なども訪ねながら再び阪堺電車に乗車、終点の浜寺駅前電停で下車後、至近の南海浜寺公園駅で一旦解散としました。ちなみにこの浜寺公園駅は、東京 駅の赤レンガ駅舎を設計した、辰野金吾の設計による木造平屋建てのおしゃれな洋風駅舎です。この駅舎自体が国の登録有形文化財に登録されており、観光資源ともなっています。
 今は人通りが多いとは言えませんが、阪堺電車堺市内区間でも綾ノ町、大 小路、 宿院、浜寺駅前 といった場所では、かつての人の賑わいを取り戻す素地が大いにあるように感じました。

プロジェクトの課題

 プロジェクトの課題については、堺市役所の担当の方に伺ったところ、まず東西鉄軌道構想、阪堺電車の活性化に対する市民のリアクションが 薄いということを挙げ ておられました。特に阪堺電車の存廃問題は以前から噂され、2003年にはついに阪堺電車堺市内路線の廃線案が出ましたが、いずれのときも一 般市民にはほとんどリアクションがなかったそうです。
 これについては、市民向けにシンポジウムを開催したり、先述の「堺の チンチン電車を愛する会」の活動、「さかいLRT研究交流センター」での活動などを行ってきたが、 今後、市 主催の説明会など、さらに市民合意を得る努力をしていきたいとのことです。(その後新聞では、新設トラム沿線住民への初の説明会が2009年2月に開催され、市民 約300人が参加したと報道がありました。)
 次いで、トランジットモールや車線減少などの施策に対し、交通 管理者(警察)の理解が得られるかどうかも課題になります。目下、話し合いを進めてはいるが・・・と、こちらは見通しがまだ立っていない様子でした。
 バス網との連動も 課題 です。阪堺電車とバスの 乗り放題チ ケットが510 円で発 売されていて、阪堺電車の一日乗車券が600円なのでかなりお得なはずですが、認知度が低く利用が少ないそうです。
 また、大小路シンボルロード整備事業は、事業の遂行はされましたが、現在も都心部に人と賑わいを取り戻すには至っていません。単に歩行者空間を拡げ、電 信柱を撤去し、バスを頻繁に走らせただけでは集客効果として弱かった、ということのようです。「交通まちづくり」の 話しでよく言われるように、ハード単体の整備ではなく、もっとソフト面も含めた、 集客の「仕掛けづくり」がカギとなるでしょう。
 もっとも、「都心部の集客」というテーマについては市役所の役割を越える部分の、民間・市民の努力も必要です。市 役所の方も、堺のプロジェクトについて「自分たちが言うのもなんだが、市役所のなかだけでは良いものはできない、市民のバックアップが欲しい」とおっしゃっていました。

今後の展開

 資金調達や市民合意の点で、今後の展開を左右しそうなのは、まず挙げられるのは臨海部の埋め立て地・堺浜の再開発です。
 堺浜では、新日本製鐵の堺製鉄所が事業計画変更で閉鎖され、 遊休地となっていましたが200 6年には大型商業施設「堺浜シー サイ ドステージ」がオープンし、隣接してサッカー・ナショナルトレーニングセンターも建設予定です。また、最近ではトランスロール・タイヤ トラムの実験線も設置されていました(現在撤去済)。 埋め立て地の突端は 広域防災拠点となります。
 なかでも、最も大きなプロジェクトはシャープの液晶パネル工場、 太陽電池工場の建設です。この分野で世界最大級の工場となり、関連の企業含め全体の投資額が1兆円と報道されており、堺市の税収も相当のものが見込まれています。この新工場は2010年春に稼動予定、従業員の通勤輸送はトラムが通る前提で計画されているそうです。
 この臨海部でクルマが増え過ぎないよう、便利な公共交通としてトラム敷設が計画され、将来 的には 広域防災拠点までトラムを延ばすべく、計画案の地 図に線が 引いてあるのですが、昨今の金融危機の影響は懸念されるところです。
 また、2003年に堺市公共交通懇話会より発表された構想にあった、東西鉄軌道の堺東駅以東の区間についても、将来の延伸の可能性は捨てたわけでは全くないそうです。
 当初、東西鉄軌道は現在地上階にある堺東駅を高架で跨ぐ構想で進めていたそうです。ただ、トラムは市街地活性化も考えると平面にすべきで、南 海高野線の方を高架化または地下化すべきという専門家の意見が強いけれども、莫大な費用がかかり難しい。それで、今回の計画案ではとりあえず堺東駅までで止めてある、とのことです。
 もう一つは、フィーダー(基幹交通であるトラムの枝線としての交通機関)の整備です。これについては既存バス路線の再編が構想されています。ソフト面でも、現在、高齢者の「おでかけ応援バス」という、カードの提示でバスを1乗車100円で利用できる制度があるのですが、利用者は増えていてこの取り組みが好評だそうです。
 堺市訪問1ヶ月後の2008年12月には、堺市より「東西鉄軌道(堺浜~堺東駅間)基本計画案」が公 表されました。電停位置など計画案が具体性を増して示され、 先の「 ~基本計画骨子案」から大 きく前進です。プロジェクトについての市民説明がより進むとともに、交通管理 者など関 係機関も交えた法定協議 会も設立されることでしょう。これからがプロジェクトの本当のスタートと言えるでしょう。

最後に

 現地では全体 的に堺市の石塚昌志 技監、堺市 建築 都市 局鉄軌道 推進室の上岡弘 幸主査にご案内いただき、トラムと交通まちづくりについては「さかいLRT研究交流センター」にて大阪産業大学の塚本直 幸教授 に、また堺市庁舎で前出 の上岡主査にご説 明いただきました。オンデマンドバスについては早稲田大学の紙屋雄史准教授、東京大 学の稗方和夫助教をはじめ、スタッフの皆様にご説明いただきました。そして、楽しいお話しをお聞かせ下さった日本路面電車同好会関西支部の工藤寛之様、黒田和彦様、野木義弘様。この場をお借りして、ご対応下さった皆様のご厚意に感謝を申し上げます。

参考:

(会報『クルマ社会を問い直す』 第55号(2009年4月))

-会報より 記事セレクト

Copyright© クルマ社会を問い直す会 , 2022 All Rights Reserved Powered by STINGER.