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クルマ利用者に本来負担すべき費用をきちんと負担してもらう制度を作りましょう

投稿日:2010年6月23日 更新日:

提案
クルマ利用者に本来負担すべき費用をきちんと負担してもらう制度を作りましょう
杉田正明

クルマに乗るには費用がかかります、費用は必ず誰かが負担しています

  • クルマに乗るには、レンタカーは別にして、利用者はクルマを購入しなくてはなりません。また車検を受け、保険に入り、取得時の税を払わねばなりませんし、走行するためには税金込みで燃料を購入しなくてはなりません。
  • これら利用者が自身で払う費用とは別に、走行環境・インフラの整備のための費用が掛かります。道路、トンネル、橋、信号、交通標識、遮音壁、歩者分離帯、ガードレール、歩道橋、歩行者横断トンネル等々を整備し維持しなくてはならず、費用が掛かります。
  • さらに交通を取り締まるための警察活動が必要ですし、事故処理のための救急活動なども必要ですし、渋滞情報を提供するなどの活動も必要で、こうした公共サービスのためにも費用が掛かります。
  • これら費用のうち、自分自身が身銭を切って負担するものは内部費用といいます。自分自身が身銭を切って負担しないで、他の者が負担するものは外部費用といいます。
  • 負担に際しては直接負担するのはなく、間接的に負担する、すなわち有料道路料金を支払うとかクルマの保有と利用に連動する税を納めて、その料金や税が公社公団や政府等によって充当されることによって間接的に負担する形もあります。これら間接的であってもクルマ利用者が負担している部分は内部費用です。クルマ利用者が(料金やクルマの保有と利用に連動する税を通して)負担していない部分が外部費用です。
  • こうした外部費用はどうまかなわれているのでしょう。
  • インフラ関係と交通公共サービス関係の外部費用は、クルマの保有と利用に連動する税以外の財源が投入されて整備あるいは供給されているでしょうから、ほとんどは一般財源が投入されているということでしょう。

道路整備は旧道路特定財源だけでまかなわれてきたのではなく、一般財源が投入されてきました

  • 有料道路、高速道路以外の一般の道路の建設には税金等が使われています。平成20年度まではこの税金等は一般財源としての税等と道路特定財源としての税の両方から充当されました。平成21年度からは道路特定財源としての税は一般財源に変更された(税の充当目的が道路整備に特定されなくなった)ため、現在は一般財源としての税等が充当されています。
  • 国土交通省道路局監修の資料(道路ポケットブック)では、道路投資の財源が国費・地方費・財投等と分けて示され、さらに国費・地方費については特定財源と一般財源に分けて示されています。これによると平成12年度から平成20年度までの(財投等を除く)国費・地方費による道路投資のうち一般財源の占める割合は平均34.4%でした。国費・地方費から一部公社・公団へ流れている部分もあるので、一般道路の整備に一般財源が34.4%投入されたとは厳密には言えないのですが、ほぼこの数字に近い割合で投入されたことは確かです。

特に事情がある場合を除いて、費用は直接の受益者が負担するのが私たちの社会の原則であるはずです

  • 自動車利用者は少なくとも車道の整備にかかる費用は負担すべきでしょう。歩行者や自転車の安全を守るためにかかる関連整備費用も、自動車が安全を脅かしているのですから自動車利用者が負担すべきでしょう。
  • 私たちの社会は物やサービスを使う・利用する・消費する場合、物やサービスを提供する側に料金を払うのが基本です。提供を受ける物やサービスの質と量に応じて払うのが基本です。
  • 道路の利用者はその利用の質量に応じて払うのが本来のあり方でしょう。
    しかし道路利用については、その質量をきちんと把握することがきわめて困難です。最新の技術を使えばさほど難しくなくできるのかもしれませんが、少なくともこれまでは、たとえば一般の道路に料金所をたくさん設けて利用量に応じて料金を収受することには膨大な経費がかかり事実上不可能でした。数少ない“関所”を設けて、そこを通過する者のみから通行料を取ることは可能でしたが、より一般的な道路利用からその利用に応じた負担を求めることは事実上不可能でした。
  • 一般の道路が無料で提供されている理由はなによりここにあります。
  • しかし我が国では自動車利用者に対しては道路整備財源を調達するため、課税をしてきました。燃料消費に応じて課税する、あるいは重量に応じて課税するという形をとってきました。
    これは道路利用の受益者に対して近似的に利用の質量に応じた負担を求めるものでした。たくさんの燃料を消費して長い距離、道路を利用する(走行する)ほどより多くの税を払う、重量の重い貨物を運び道路をより損傷する車ほどより多くの税を払うというシステムを採用してきました。
  • 歩行者や自転車利用者も道路を利用します。
    しかしこれらの利用については近似的方法も考えにくく一般財源から充当しています。歩行者や自転車利用者が利用している占用空間面積×移動距離は、自動車の占用空間面積×移動距離を大きく下回るだろうと推測され、また道路に対する重量負荷も自動車に比べて大きく下回り、こうした扱いでも問題ないでしょう。
  • また、歩行や自転車走行はすべての人々の生活の必需的基本ニーズでありこれを満たすことはナショナルミニマムとして必要だと考えられてきたこともあるでしょう。
  • クルマ利用者は自動車関連の諸税(旧道路特定財源)を超えて道路整備(建設・維持)に投入されている一般財源分を本来きっちり負担すべきでした。

クルマは補償することなしに他者に多くの迷惑・被害をかけており、この迷惑・被害も負担であるという意味で費用です

  • クルマを走らせるのに誰にも迷惑をかけずに走るならば問題ありません。しかしクルマの利用は通常いろんな形で他の人に迷惑・被害を及ぼしています。いろいろなマイナスの影響を与えています。いろいろな負担を補償することなしに他者に強いています。
  • 代表的なものをあげると次の通りです。
    1. 交通事故による死傷被害
    2. 排気ガスによる喘息など呼吸器疾患被害
    3. 沿道への騒音被害
    4. CO2排出による温暖化→気候変動→それによる被害
    5. 道路の混雑・渋滞を発生させることによる損失
    6. 道路建設による緑・自然・生態系の破壊
    7. 道路建設による居住基盤の破壊
  • これら他の人に補償なしに強いている負担、それは直接にはお金の形をとっていない場合がほとんどですが、それも費用という言葉で捉えることができます。こういう費用も内部費用に対して外部費用と呼びます。内部ですなわち自分で負担せずに、外部にすなわち他人に負担させている費用という意味です。
  • ただし、先に挙げたマイナス影響の中には、たとえば損害保険に入っており、保険金の支払いという形で補償をしている部分もあり、それらは外部費用ではなく内部費用です。

クルマの利用者は補償なしに強いている他者への迷惑・被害・負担を補償すべきです

  • 私たちは外部費用を他の人に強いている場合、それに対して補償するのが当然のあり方ではないでしょうか。迷惑・被害のかけっぱなし、あるいは負担のかけっぱなしというのは論を待たず当然是正されるべきことではないでしょうか。
  • ①~⑦のような外部費用に対しては各種規制を導入して発生を抑制することが必要です。それはそれで徹底して行われるべきです。このことはまた別の場で述べます。
  • しかし、規制 をかけても外部費用が一定程度発生 する・ 残ることが通常です。すべて100%の規制をかけると言うことは通常できないからです。
  • となると規制は規制として進めるとしても残って発生している外部費用について発生原因者に対して補償金の供出を強いるべきです。これを外部費用課税という形で行うことを提案します。
  • 先に列挙したマイナス影響を金額に換算してその額をクルマ利用者に課税すべきです。

クルマ利用者が負担していない外部費用をクルマ利用者が負担する制度を作りましょう

  • 以上述べてきたことをまとめると、外部費用をクルマ利用者に負担させるべきである、その外部費用は大きくは2つの部分から構成される、ということになります。一つは始めに見た道路や関連施設の整備費、そして自動車のための交通公共サービス供給費用のうち、料金や自動車関連諸税でまかなっていないと見なせる部分です。二つは上記に列挙したマイナス影響、即ち①から⑦の影響(で、クルマ利用者が補償していない部分)です。ただしほかにも取り上げるべきマイナス影響があれば加えるべきです。この2つを合算してクルマ利用者に課税すべきです。
  • 外部費用課税は、i受益者が、利用しているサービスの供給に掛かっている費用を正当に負担すること、およびii加害者が、他者に与えている迷惑・被害を正当に補償することを目的とします。
  • 従って徴収される税の使い道は自ずから特定されます。特定財源にしなければなりません。
  • 自動車関連諸税も再度特定財源に戻すべきです。もちろん無駄な道路建設を排除するための道路計画決定の仕組みも同時に整えることが必要です。
  • 外部費用課税の導入は、クルマ利用の費用を増大させます。この導入によってクルマの利用量は一定程度減少することが予想されます。

クルマの外部費用は乗用車の場合走行1kmあたり13円とか29円とかの試算結果が公表されています

  • 外部費用が実際どのくらいになるか、を見てみましょう。「日 本に おける自動車交通の外部費用の概算」兒山真也・岸本充 生(運輸 政策研究2001Summer)と「道路特定財源制度の経済分析」主査 ・金本良嗣(2007.8)に示された推計結果は次表の通りです。
    走行距離当たり自動車の外部費用推計 円/km
    乗用車 中位推計金本推計では「乗用車(ガソリン車)」と記載 大型トラック 中位推計金本推計では「普通貨物車(ディーゼル車)」と記載
    兒山・岸本推計 金本推計 兒山・岸本推計 金本推計
    大気汚染 1.8 1.1 59.1 10.9
    気候変動 2.2 2.0 7.8 5.8
    騒音 3.6 35.6
    事故 7.1 2.5 7.9 2.8
    混雑 7.3 7.0 14.6 14.0
    原油依存 0.5 1.3
    道路損傷 0.1 3.1
    インフラ費用過小負担 7.0 7.0
    合計 29.0 13.2 132.0 37.9
  • 金本推計には騒音のマイナス影響が計上されていません。また同推計は、自動車の歩行者と自転車に対する交通事故のみ取り上げ、自動車の自動車に対する事故を計上していません。これは大きな弱点と思います。
  • 二つの推計事例とも、道路建設による緑・自然・生態系の破壊や、慣れ親しんだ生活環境・コミュニティの破壊を含む道路建設による居住基盤の破壊について推計していません。改善すべき課題です。
  • 兒山・岸本推計で、外部費用の大きくは2つの構成部分のうち第一の部分に当たるのは、「インフラ費用過小負担」の項目です。
  • ガソリン1リットルで乗用車が9.4km走行でき、軽油1リットルで大型トラックが3.67km走行できると想定すると、兒山・岸本推計にもとづけば、ガソリン1リットル当たり乗用車は273円、軽油1リットル当たり大型トラックは484円のマイナス影響 を出していることになります。この程度が、仮にかっての道路特定財源制度が存在するとした場合に、外部費用課税として上乗せ課税すべき目安となります。

自動車課税の枠組みについて、次のような案が考えられます(試案)

  • 細かい部分は別にして課税の大枠のイメージを次のように描くことができます。
  • 自動車のための道路および関連施設、関連公共サービスの整備供給計画を、国、 都道府県、市町村ごとに、それぞれが管轄する国道、都道府県道、 市町村道について議会の承認を得て立てます。その際、同時にその費用を全額調達するために必要となる自動車関連諸税の税率を見積もり、税 率と併せて議会の承認を得ることとします。自動車関連諸税は国道のために国が課す部分、都道府県道のために都道府県が課す部分、市町村道のために市町村が課す部分の3つから構成することにし、税率は3つの合計とします。これにより各市町村ごとに税率は異なることになります。クルマ利用者は、所属する市町村ごとに異なる税率で税を納めることになります。徴収した税は国と都道府県、市町村にそれぞれに配分します。
  • 国、都道府県、市町村は配分された税の範囲内でのみ、自動車関連の道路および関連施設、関連公共サービスを整備供給するものとします。この税で償還することを前提に地方債を組むことは認めますが、一般財源を投入することは認めないことにします。
  • こうした仕組みによって、先に見た外部費用を構成する2つの部分のうち、第一の部分について外部費用の内部費用化が実現するはずです。
  • また、それぞれのレベルの議会において、費用負担が自動車利用者の負担に直結することを踏まえて道路等の必要性が議論されることになり、無駄な道路の計画が減っていくこ
    とが期待されます。
  • 次に外部費用課税の第二の部分については次のようにすることが考えられます。
  • 国道がもたらしているマイナスの影響と、都道府県道+市町村道がもたらしているマイナス影響について把握し、それぞれ分離して金額換算します。都道府県道と市町村道については1本化して都道府県が計算するものとします。次いで金額換算された額に等しい額を税として徴収するために必要な税率をそれぞれ見積もります。
  • その際課税する対象は現時点では燃料が考えられますが、この先クルマの動力源が電気などに大きくシフトしていくことを想定すると、燃料ではなく使用エネルギー形態別走行距離にすべきでしょう。一定期間ごとに走行距離を把握する制度が必要になります。
  • 国道がもたらしているマイナス影響を補償するための税率と都道府県道+市町村道がもたらしているマイナス影響を補償するための税率とを合算した率を税率とします。クルマ利用者は所属する都道府県ごとに異なる税率で税を納めることになります。徴収された税は国と都道府県に配分します。
  • 国と都道府県は、マイ ナス影響の項目ごとに補償対象者に補償することにします。項目によっては補償対象者を特定しがたい場合があるでしょう。その場合は、代替策としてマイナス影響を減らすための施策を実施することとし、そのための財源として徴収された税を使うものとします。
  • こうした仕組みによって、先に見た外部費用を構成する2つの部分のうち、第二の部分について外部費用の内部費用化が実現するはずです。
  • 税率は、道路等の整備計画とマイナス影響の実態に合わせて、1~3年毎に見直していくものとします。

(会報『クルマ社会を問い直す』 第60号(2010年6月))

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